ポンの近況

桂川救援運動とアナナイ詩

11 桂川裁判「控訴棄却」の戦果 05.4〜5


 桂川裁判の勝訴を祈願して、関西勝手連が呼びかけた3月11日のヘンプパレードは、残念ながら雨で流れたものの、午後4時の大阪高裁は傍聴席に入りきれない人々であふれ、この裁判に対する関心の高さを示した。
 一審では発言の機会もなく「懲役5年罰金150万円」という大麻事犯では最重刑の判決を受けた桂川直文被告だが、控訴審では三度の供述公判で、大麻の真実と大麻取締法の違憲性をとことん語った。そのラディカルな大麻発言は眠れる判事たちの目を開くものと期待されたが、控訴棄却の判決は彼らが聞く耳を持たないことを証明した。
 敗訴したとはいえ、控訴審から私たちが得た戦果は限りなく大きい。それは過去の大麻裁判では決して得られなかった収穫であり、今後の運動に大きな力となるであろう。戦果の一つは桂川被告が満員の法廷で、真実と道理をとことん主張することによって、ホワイトハウスの出先機関と化したわが国の官僚システムの恐るべき堕落と腐敗を徹底的に暴いたことである。特に大麻取締法のように、敗戦後のドサクサ紛れにアメリカ占領軍から一方的に押し付けられた法律は、日本側の事情がどうであれ「アメリカがダメと言ったらダメ、ゼッタイ」なのだ。だから判事たちは聞く耳を持たず過去の判例に従うだけの思考停止状態に陥っているのである。
 同じ出先機関でも厚生労働省麻薬課ともなると、さすがに現場の役人たちは押収した大麻を吸って、それがタバコや酒より害がないことを知っている、ということを桂川被告は法廷でばらした。彼らにすれば、どうせアメリカには逆らえないのだから、研究も調査も無意味となる。そのため厚生労働省には大麻に関するデーターがまったくないことが、「カンナビスト」による情報公開請求によって明らかになった。
 そこで検察庁は大麻有害説の根拠として、厚生労働省の「麻薬覚せい剤乱用防止センター」のHP「ダメ、ゼッタイ」のような、何の根拠も裏づけもない、非科学的で非合理的な脅迫キャンペーンをもとに、年間2000人にも及ぶ大麻事犯を生産しているのだ。
 このようにアメリカ占領軍から大麻取締法を押し付けられ、「大麻は麻薬だ」と洗脳されてきた属国の官僚システムは、不可避的に嘘にうそを重ね、そのうそが官僚たちを堕落させ、奴隷根性を助長し、その無責任と自己欺瞞がこの国を食いつぶし、今や滅亡寸前にあることが良く理解できた。
 もう一つの戦果は「麻の復権をめざす会」の解体以来、長らく分裂を続けてきた大麻解放運動が、これを機会に再構築されると同時に、旧ヒッピー世代とネット世代との世代間ギャップを埋めるきっかけともなる勝手連という、救援運動のスタイルを生み出したことだ。一審の救援を担当した「カンナビスト」が、組織化された市民運動の団体なのに対して、控訴審の救援を引き継いだ勝手連は組織ではなく、したがって命令体系も、自主規制もないため、多様なガンジャ吸いたち(中には大麻を吸わないナチュラルハイやOBもいる)が、自分のやり方で参加することを可能にした。もともとガンジャ吸いは自己主張が強く、命令に従ったり、規則を守ったりするのが苦手なので、基本的には一人一派なのである。
 かくて多様なガンジャ吸いたちが月平均1回の公判と、それに伴う集会や「ボンボンサーカス」のようなイベントに参加することによって公然(合法)運動と非公然(非合法)活動のネットワークを形成してきたのであり、この“顔”でつながったネットワークが新たなる大麻解放戦線となるだろう。
 控訴審終了後、関西勝手連はその役を終えて発展的解消となった。しかし勝手連は今後とも状況の必要に応じて、メンバーを変え、役どころを変えて、あちこちに出没するだろう。おっちょこちょいを代表に立てたりして。
 環境汚染、森林破壊、地球温暖化、資源枯渇などの差し迫った問題が、石油に変わる持続可能な植物資源として、産業用ヘンプがヨーロッパ連合やカナダ、オーストラリアなどの先進諸国でブームとなり、大麻の個人使用を非犯罪化し、医療用大麻を合法化するなど、大麻解放は時代の趨勢になりつつある。
 これに対してブッシュ・アメリカ帝国は、70年代に大麻の個人使用を非犯罪化したカリフォルニアなど11の州法を、70年も昔の連邦法(国法)によってつぶしにかかっている。この反動政策に日本は追従しており、桂川事件とは小泉の「属国の証」かもしれない。
 一方、国連の麻薬単一条約に批准していない中国には大麻規制がなく、中国の麻製品は世界市場を独占してきた。大麻を吸う文化のない中国ではあるが、インターネットのマリファナ情報は若者たちに届いているはずだ。08年の北京オリンピックには天から大麻が降って、「ええじゃないか」の大混乱のころ、桂川君が仮出所するはずだ。そこで帰還を祝って「桂川さんと北京オリンピックへ大麻を吸いに行く全国勝手連」というのはどうかな?

                           全国勝手連代表 ポン 山田塊也


上の文章は「アナナイ通信」の号外(5月1日発行)と、創刊号(2006.3発行)にも掲載します。桂川君は「きちんと上告したい」ということなので、金井塚弁護士を選任しました。勝手連としては、桂川君と文通や接見のできるように創刊号を製作したいと思っています。編集長は創刊準備号と同じく安雲野勝手連のクマ(窪田明彦)です。桂川君へのメッセージと運動についての意見など原稿を募集します。応募者にはアナナイ様のオフダを差し上げます。送り先は、
 390−0222 松本市入山辺局留 アナナイ通信社

さて、法廷闘争が終わって運動が転換期を迎えたのを機に、このHP「ポンの近況桂川救援運動をアナナイ詩」というタイトルを終了し、引き続いて「麻声民語」というコラムを掲載する事にしました。ご期待を!
 尚、桂川事件と大麻情報のデーターバンクとして、今までどおりホームページ「桂川救援全国勝手連」にご注目ください。                   


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