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海上で出会う島人(アイランダー)スピリット

 瀬戸内海の西の門を守り、上関原発計画に26年間反対し続ける、気骨の島、祝島は早朝から晴れやかな空気に包まれていた。ハワイからミクロネシアを経て北上してきた伝統航海カヌー、ホクレア(祝星)号がやってくるのだ。コンパスもエンジンも積まず、星、太陽、風、鳥、波だけをたよりに海を越えてきたホクレアを迎えるため、1200年の歴史をもつ神舞の儀式に使われる伝統木造船、櫂伝馬が海に出た。神舞は4年に一度、大分の伊美別宮社が祝島を祝福する儀式で、櫂伝馬は神様を出迎え、見送る船だ。海上で櫂伝馬、地元漁船、カヤッカーらが待ち受ける中、ホクレアは伴走船カマヘレと西の海から姿をあらわした。

 櫂伝馬の舳先と船尾で青年が舞い始める。船は威勢の良いかけ声とともに、ゆっくりとホクレアに向かってゆく。海上で出会った二艘の船は、ぴったりと寄り添い、クルーと漕ぎ手たちが思い思いに言葉と握手を交わす。はからずも、九州からリレーで運ばれてきた広島原爆の残り火の分灯が、櫂伝馬からホクレアに届けられた。祝島より航海安全祈願がこめられた「鬼の棒」が船長に渡されると、クルーたちはパワフルなハカで祝島の思いに応えた。大海原を自然のしるしだけで旅してきた、ハワイアンのスピリットと、瀬戸内の海を守り続ける島のスピリットが響き合う瞬間。宇宙に浮かぶ島、地球の島民(アイランダー)としての決心と共感。どれほど経ったのだろう。次の寄港地を目指すホクレアを、海の男たちが原発予定地・田ノ浦沖合まで見送っていった。神秘的な出会いだった。

 いくつものメッセージと意味をもつホクレアの航海で起きた、この海上の出会いが、どんなメッセージとなって日本列島(ヤポネシア)に広がってゆくのか、未知なるものへ期待をこめたい。

写真キャプション:櫂伝馬にハカでこたえるホクレア・クルー

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