2003年
5月20日 長野 高遠町 山室



新しい歌が昨日、やってきた。歌は掃除してる時、勝手に心が歌いだしていて、今、その歌詩を整理しているところ。
♪わたし一人じゃ作れない みんなのおうちを作りましょ。わたし一人じゃ帰れない みんなのふるさと育てましょ♪
自分でも気づかなかったが、熱心に掃除しているには願いがこめられていた。そして、昨日は友人が助っとに来てくれて、自分で自分のやろうとしていることを友人と分かち合い働けて嬉しかったのだ。

このところ忙しくて、ギターを手にとる時間もとれず、子どもたちを寝かす時間となり、そっと起きだして深夜まで仕事を続けている。山室に帰ってきてから雑多な仕事がたくさんあるなかで、一番大きな仕事は築100年の大きな古い家の大掃除。6日、ツアーから帰ってきて家にたどり着く前に電器屋へ寄り、購入した新品の掃除機が昨日すごい音を出して吸わなくなった。ハードワークさせすぎて、壊れたかなと思って修理に持って行ったら、なんのことはないホースに大きなごみが詰まっていただけ。自分でもおかしかった。

2週間ですでに15回くら掃除機のごみ袋をとりかえた。屋根裏に入って懐中電灯であたりを照らした時、恐ろしい気分になった。闇の中、苔のように柱からたれさがった100年のほこり。特攻隊のような気分で掃除機で、そのほこりと格闘したが、少しはきれいになっただろうか?屋根裏は、また改めて気を入れなおして取りかかるつもり。ひとりじゃ無理かも? 誰か勇気と愛のある方、お手伝いくださいね。
 今、取りかかっているのが10部屋の畳をあげて、かびのはえている床や畳を拭き、畳の間や下のほこりを一掃すること。ひとりでは畳は重すぎて外へ運べず干すこともできず、風を通しているだけだが。ひと部屋、ふと思い立ってはじめたら、やめられなくなった。床の間に詰まっているほこりまでピンセットでかきだして掃除したらひと部屋に1日かかったが、気分は、すっきり。あんがい、わたしってお宅なのか?

古い家は、なんとなく重たい感じがする、とツアーの間、離れた我が家を遠い目で観ていた。なにが重いのか?物理的には見えないところに溜まっているこうしたホコリの累積が重さの一員を担っているのかも。また、その家に引き継がれている長年の暮らしの傾向性も見えない影響力を持っているかもしれない。
 山室の世帯は14世帯とほんとに小さな山村の部落。すでに70才を越えた老人がほとんどで、住んでいる住民はおそらく産まれた時から知っている間柄だろう。5月ともなると、みなこまめに畑に出てしなやかな手つきで仕事をしているが、ほとんどの日常を人間関係の限られた、この部落の中で過ごすのだろう。出かけることも来客も多いわたしの暮らしは、理解を越えているかもしれないが、みんな親切で畑のことはすっかりみなさんの知恵をたよりに進めているし、鍬の柄が外れてしまったりすると、どこから見ているのか、頼む前に気がついて使える鍬を持って畑まで来てくれる。

3月に越してきたばかりのこの家の大家さんは時々、早朝、電話をくださって、必要なものをとりに来られる。先日は床下にしまってあるという芽がでたジャガイモと箪笥をとりに来られた。当たり前のように、靴箱から自分の長靴を取りだし履きかえ、おしいれからビニールひもをとりだして採集したフキを結ぶ。靴箱と押しいれは、たまたま、まだ掃除していなかったので大家さんのものがそのままあったわけだが、おいたままになっている大家さんのものは意外とたくさんあり、段ボールなどに入れて次々と片付け、一部屋にまとめ始めているのでちょっとドッキリした。田舎の人は貸しても、いつまでも自分の家だと思っているからと友人から聞いていたその意味がわかったような。

 30分ほどの町場に新しい家を建てくらしをはじめられている大家さんとは、なかなか会う機会もないので、わたしはあれこれとお手伝いしながら家のことを質問し、必要な会話をした。その中で7月6日、この家のお開きコンサートを予定しているので是非いらしてください、というお話もした。山室のみなさんには前回の組みのよりあいで 既にアナウンスし、楽しみにしていただいている。掃除の苦手なわたしが、根気よく掃除を続けていられる動機としては、5月31日に企画している「水、想い、癒し」の集いに遠方から参加される方の宿として自宅を提供するので気持ちいい場所にしたいという想いと、これから定例でコンサートを自宅でやっていこう、自分の家から開いていきたいと考えていたからだ。

2日前、早朝、大家さんから「吉本さん個人に貸しているのだからコンサートしてくれちゃ困る、と息子が言うんでね。」という電話をいただいた。コンサートのなにが気に入らないのか判然としない。いつもおばあちゃんを介して息子さんの決定を聞かされてるので、一方通行なコミュニケーションになっている。しばらく、その言葉の意味を考えながら掃除をしていたら心が沈んでいった。心にあるビジョンは明確で、消えるものではない。まだ会ったこともない大家さんの息子さんに会いに行こう、と今朝、思い立って連絡してみたが多忙のため当分無理とおばあちゃんに言われた。

改めて、自分の心に宿っている願いに触れてみた。人はさまざまにいろいろな心配事を抱え、いろいろな視野から判断をする。とりあえず、流れのいい場所を探すこととし、今朝、隣に住む新住民のたかこさんに事情を話し、「お寺か公民館ではどうかな?」と相談した。すると思いがけず「わたしの家でやったら?」と。

7月5日、山室の集会所で14世帯のみなさんを招いてごあいさつコンサート。6日は、燐人のたかこさんの自宅で一般むけコンサート。たかこさんの現在とりくんでいる”あったかとう”の共催で。

よかった、自然に流れてゆく道をゆっくり歩いていこう。

7月6日(日)午後3時半開場、4時開演 場所 高遠町山室 岩谷たかこ宅 あったかコンサート 参加費 前売り予約1300円 当日1500円(お茶&クッキー付き)出演 吉本有里(歌&バイオリン)下村誠(ギター&歌)DEN伊藤(ベース)
なお、この後はコンサートメンバーで自宅でレコーディングを予定してるので、お泊りのお世話は難しいかも。ご了承くださいね。