2001年1月31日   八星と二人で山暮し体験


 


わたしたちの住む山には、唯一の隣人家族keiko&thomas familyがいるが、今は彼ら
もメキシコはカリブの家にいってしまい春まで帰ってこない。わたしはここしばらく
、ukiah辺りに自分のスペースを借りることを考えていたのだが、数日前、突然、け
いこちゃんの山の家を一時的に借りてみることに思い当たった。わたしたち家族は大
人ふたりにこども二人。この4人が24時間体制で丸い木の家の一間で過ごすことの
無理を感じはじめたのだ。そのことになんとなく気がついたのは、わたしがひとりで
も音楽活動するようになった去年から。さらに数週間前から、アメリカでもひとりで
動くようになってその感じははっきりしてきた。
 
和生から離れて自分の発想で1日を動き始めると今までと違った流れが内部に動き出
す。眠っていた自分らしさが目をさますという感じだ。ということは、常に相手の見
える距離の中で生活し子育てし音楽をしてきたわたしは、知らない内に和生の枠内で
動くように自分をコントロールしてきたということだろう。和生にしてもそうかもし
れない。わたしは和生が出かけると1日中でも許される限り歌っている。音にデリケ
ートな和生を悩ませる心配もなく心おきなく歌うのだ。自分のスペースが欲しいのだ
とこのところようやく気がついた。

28日、わたしと八星は仮の引っ越しした。とりあえず、2月の末に日本へいくまで
の間、無理のない範囲で自分のペースで山暮らしを体験してみようと思っている(週
に2〜3日でも)。和生とわたしは、世の中の夫婦ではふつうのことではあろうが、
しばしば喧嘩する。わたしは、わたしたちにくり返されているパターンにほとほと嫌
気がさしてきた。(もちろん和生もそうだろうが)なにも同じことのくり返しの中に
いることはないと思う。状況を変えることによって、各々がもっと各々らしくありそ
の上で溶けあえたらいいな、とようやく腰をあげたかんじ。

けいこちゃんの家は、わたしたちの家と変わらず薪ストーブに消し炭を陶器にいれて
こたつにしている。でも、ストーブまわりに置いてあるものと、その並べ方から察す
ると火のおこしかたや消し炭の扱いは違うらしい。戸惑どったわたしは部屋をあたた
めるのに随分手間取った。また、長期の旅行のため水のホースが凍結し割れないよう
に水のパイプをはずしてあった。泉から家まで続く水のパイプを見てみたが、どう繋
いでいいのかわたしにはわからなかった。水は泉から毎日汲むことにした。キャンプ
生活のようだ。泉からどのようにして水をひくのか、そしてその時々の水場の世話の
しかたを機会をとらえて習わなくっちゃと初めて思った。もし、誰も教えてくれなか
ったら必要に迫られて自分でやれるようにはなるだろう。また、けいこちゃんの家は
建て増ししたりしたためか(自分たちで素敵なスペースを2カ所に部屋を増やしてい
て常々感心していたのだ)隙間風がかなり入りストーブを燃やしてもなかなか暖まら
ない。和生は長年北海道にくらした智恵で隙間だけはしっかりふさいでくれて少ない
薪で家が暖まるようにしていたのだと今さらながら気がついた。使った薪以上に薪を
とらなくっちゃ、さて、どうやってチェンソーを使うのだろう。やはり、これも収得
しなくちゃならないな。和生がやってくれるというが、なんでも自分でできるように
なりたい。

6歳になる八星は”なんでママと二人で暮らさなくちゃならないの?”とわたしに言
う。歩いて7〜8分と近いので昼間はあまちと一緒に自由に行き来して遊んだのだが
。こどもたちに無理させたくなかったからわたしも変化を恐れていた。でも、今は自
然な流れに沿っている、その時期にきているという感覚がある。八星にもわかりやす
いようにわたしの考えていることを話した。

きょうは、ラウンドハウスに来ている。和生とあまちが町にいっている間にお風呂を
焚いて、八星と一緒に入った。お風呂に浸かりながら”変化を選ぶ”という話をした
。いつも知ってる道は安心だけど、好きな場所も嫌いな場所もいつも変わることなく
そこを通らなくてはならない。知らない道は迷うかもしれないけど今まで見たことも
ないものを見つけられるかもしれない。今、ママは新しい道を歩いてるんだよ。とい
う話。”もっと、いろいろ話して”と八星。それで、3月から始まる日本でのコンサ
ートツアーの話をする。”ママは今、織物がやりたくってね、織物やれるところにい
っぱい泊まるからね。”とか思いつくままに考えてることを話すと八星は興味深そう
に聞いている。”ママの小さい頃の話もして。”と八星が言い始めた頃、さすがにの
ぼせそうになってきたので二人であがった。この数日、わたしと八星はいつになく、
よく話をした。遊びに来たあまちと3人で車に乗って雪のまだ残る斜面をさがしてそ
り遊びにも出かけ気持ちが良かった。

夜になってから和生とあまちは帰ってきた。八星は嬉しそうだ。きょうはラウンドハ
ウスに泊まることにした。和生の考えていることは正確にはわからないがなんとなく
察することはできる。内心の大切なことをありのままに分かち合う習慣がなかったの
かな、とわたしは思う。わたしの悩みを聞くのは嫌そうだし、相談に乗ってくれるこ
とはあまりない。(彼なりにはつき合ってくれているのだろうが)でもわたしが、て
こでも動かぬ固い意志で決めたことに関しては最終的には協力してくれる。とりあえ
ず、わたしがひとりの人間として自分の道を生きようと務め始めていることだけは理
解してくれているように思う。