ますみ● どんと(多くの人から愛され続けている伝説のミュージシャン。ボ・ガンボスやローザルクセンブルクというバンドでもおなじみ)が、2000年1月27日に永遠の世界に旅立ってから、もう5年になるんですね。
さちほ○ あの年は自分にとって人生最大の危機というか、闇の真ただ中でした。最愛の人との別れは、筆舌に尽くしがたい体験。1年くらいは立ち直れない状態で、魂のありかや死について、とことんまで探求せずにいられない日々でした。それまでも精神世界に興味があって本を読んだりしてたけど、もう単なる興味とかでなく、切実な本気な話になってしまった。どんとの魂はいまどんな状態にあるのか知りたくて、チャネラーや沖縄のユタを尋ねたり、チベットの死者の書を読み込んだり、毎日お経をあげたり、あらゆることを必死で・・。そうして私の中でパラダイムシフトが起こり、「魂が永遠である」ということを確信するようになりました。それからは新しい現実、偶然ではありえない出会い、小説でも描けないような出来事の連続です。
● 女神?に導かれてるとしか思えないような・・。
さちほ○ どんとが突然倒れたのも、ハワイ島のボルケーノで、火山の女神ペレに捧 げる古典フラに立ち会った直後でした。そのペレをはじめ、チベット仏教のターラ菩
薩や観音様たちの確実な導きがあって、今回の女神のまつりにもつながっていくんで す。
どんととハワイへ行く直前に、ずっと大好きだった70年代のベストセラー本「地球 の上に生きる」に再会し、なつかしく読んでいたら、翌年の一周忌、どんとに捧げる
CDをレコーディングしたスタジオで、その著者のアリシア・ベイ・ローレルさんの CDを見つけました。彼女もハワイ島に移住して音楽活動をはじめたことを知り、嬉し
くなって、お互いのCDを交換、一緒に演奏したり、ソウルシスターみたいに仲良しに なりました。さらに翌年、私のバンド「アマナ」のハワイツアーを全部オーガナイズ
してくれたり、小田まゆみさんの家に連れて行ってくれたのも彼女です。そこで偶 然、ハワイ島の姉妹である火山島、伊豆大島で同じ「アマナ」を名のって活動してい
る小池マナさんと運命的出会い。その日から、私たちの女神をめぐる旅が始まったの。ちょうどチベット歴の大晦日で、ウッドバレーというチベット仏教のお寺の、ターラをおまつりしているお堂で一晩中、音楽と舞いでニューイヤーをお祝いしました。それがターラとの出会いのはじまり。
● 「観音菩薩の慈悲の涙より生まれたターラは、生きとし生けるもののため、愛・豊かさ・笑い・知恵・癒し・慈悲の怒りなど、21の姿で現れる」といわれます。女神のまつりでは、さちほさんの歌のリードで、その21の相を皆が祈りの舞いとして奉納しましたが、その一体感と力強さに圧倒される思いでした。
さちほ○ 歌はチベット語のターラ礼賛経(梅野泉さん訳)をもとに書かせてもらったものですが、自分では何も考えることなく、すらすらと歌がおりてくる、不思議な体験でした。それから間もなく、観音様をおまつりしている赤穂の普門寺で、藤本恵祐先生という尼僧さんのご縁で「観音おひらきの祭り」をやったときも、「観音様の慈悲の種、手からこぼれて流れ出す・・」というような歌がおりてきてびっくり。私はそれまでロックバンド(*1)のベーシストで演奏専門、歌うことなんて考えていなかったのに、自分でも驚いちゃうような声があるとき自然にでてきて。そうして出来たのが『観音楽(かんのんらく)』や『ターラ(アマタマ)』のCDです。
● 「音魂瞑想」もそういう経験を通してうまれてきたんですね。
さちほ○ 私はひとりでただ座って瞑想するのが苦手で、すぐに何か考えちゃったり、集中できないの。でも音があると、集中して雑念が浮かんでこない。“ライア”
はシュタイナーの教育の中で開発された、体の奥まで入って細かく細胞を振動させる瞑想的な音色をもつ楽器です。このライアを奏で、宇宙にまんべんなく響いている原初の響きに同調することを、新月や満月のときを中心にずっと長いこと続けていたら、自分の中に眠ってた創造力が開花してゆくのがわかった。メロディもどんどんわいてくるし、言葉やマントラも考えないで自然にでてくる。自分にそれが起きたってことは、誰にも起こることのはず。それで最初は実験的に、瞑想的な音の中でみんなが過ごす演奏会という形でスタートし、やがて瞑想会として、みんなでAUMを唱和しながらエネルギーの浄化と調和をする今のスタイルができたんです。
● 私の知り合いで、「音魂瞑想」に出たあと、歌手?やダンサー?になってしまった人がいます。
さちほ○ 自分の人生をクリエイトする力がわいてくるみたい。私もこの瞑想のおかげで、ここ2年くらいは行こうと思えば好きなところにいけるし、描いたイメージがあればそれがまもなく現実になるように、ますますなってきてる。『どんと院』もそう。最初はビジョンで描いていただけだったのが、今はもう建物として現実化してある。人生って全部自分の創造物でしょう。そのクリエィティビティの源に「思いを向ける」ということが、とても重要。私の場合は観音様だったり、ターラ菩薩だったり、何でもいいんだけど。呼ぶだけで、確実に近づいてくれるのが現実としてわかる。意識の焦点を高いところにおいてたら、「百利あって一害なし」、いいことばっかりだよね。前向きな考えしか出なくなるし。ストレスがないから、体調もよくて、病院もいらないから無駄がなく、自分の使命を生きるようになる。
● さちほさんの使命って・・?
さちほ○ 特別なことじゃなく、音を出して楽しんで、真実のことを受け入れるだけ。今どんとの物語を執筆中なんだけど、「肉体の終わりが本当の終わりじゃない」っていうことを、体験を通して伝えたいと思っています。私たちは何回もライフタイムを重ねて、どんどん進化してゆく魂。それがはっきりとわかれば、迷うことがないでしょう。あの時どんとが倒れて、暗闇のどん底にいたとき、ババジ(*2)の「最悪でも、肉体を離れるだけ」というメッセージが私の中にスパッと入ってきた。そうなんだ、そんなにじたばたすることないって気づいて。それで取り乱さずにどんとを
送り出すことが出来た。別れるのは本当に悲しく辛いことだけど、誰もがいつかは経 験すること。でも魂はなくなるわけじゃないから、絶望的になったり恐怖感を持つこともない。自殺するのもばかばかしいってわかってくる。今回のライフタイムで学ぶべきことがあってこっちに生まれてきてるのに、クリアできなくて自殺しても、それはただのリセットだから、先延ばしにするだけなんだよね。どんとが亡くなったとき、二人の息子たちがゴマちゃん(どんとのこと)と同じ所に行きたい!って言った。私だってそうしたい、もうレインボーフォールに身投げしちゃおうなんて気持ちも起こった。だけど、これは自分たちがクリアしなけりゃいけない課題だから、ここでそうしてしまったら、また次に同じことをやらなきゃいけなくなる。もう1日でも2日でもこんなに悲しい思いをしたんだから損だよ!って。子どもたちとも徹底的にそのことを話したの。
● 実はどんと自身が歌の中で、魂についてのメッセージを歌ってきているんですよね。
さちほ○ 特にソロになって沖縄に移住してからは、そういう歌ばっかり。「インデ ィアンのいうとおり、魂は滅びない。昔も今も同じなんだよ(アルバム“ゴマの世
界”より)」とか。何度も聴いて、私自身すごく救われた。本人が言ってるんだから間違いないでしょう(笑)って。
● さて、今年で6回忌となるどんとの、毎年の命日の前後に開かれる“ソウルオブ・どんと”や“どんと・ソングスディ”などのイベントは相変わらず盛況。どんとの魂はますますみんなの中に生きはじめて、すごいですね。
さちほ○ みんながすごく楽しんで、どんとにありがとう!っていう思いを向けてるから、向こうで更にエネルギーアップして、プレゼントを贈り返してきてくれる。悦びの増幅、悦びの大循環だね。誰でもそうなれるんじゃないかな。そうやって交流できる。そうすれば残された人も寂しくないし。それがあるべき姿だなって思うよ。
● 今年の女神のまつりは、さちほさんの地元沖縄でという話も出てますが、楽しみにしてます。ありがとう!
【注】
*1)女性だけのバンド「ZELDA」のリーダーとして80〜90年代に16年間活動。
*2)インドの聖者。シヴァ神の化身といわれる。