教育現場における動物実験代替法の導入について

なかのまきこ卒業論文要旨

要旨

近年、欧米を中心に、教育における動物実験についての正当性に関する議論が活発に繰り広げられてきた。その結果、小・中・高等学校でおこなわれる解剖実習(dissection)から、大学の専門教育における動物実験や手技訓練を含む実習に至るまで、様々なステージで、動物を犠牲にしない代替法(Alternatives to the use of animals)の採用と普及が図られているのが現状である。
一般に、教育における代替法に関しては、コンピュータ、モデル、視聴覚機材等を用いたものが主流と考えられているが、その他にも獣医学教育では、外科学実習における 1)倫理的死体(cadavers from ethical source)の使用 2)clinical practice (実際に臨床獣医師のもとでの研修) 3)Human society program (地域のアニマル・シェルターとの共同プログラムでの犬・猫の不妊手術の実施)等も広義の代替法(alte rnative実習)として認められている。
alternative実習の施行としては、学部の必修科目から動物の犠牲を伴う実験やトレーニングを完全に排除した例(オランダ・フィンランドの大学のすべての医学部、イギリスの全獣医大学など)もあるが、最も多い例としては、生徒個人が動物の犠牲を伴う実習に直面した場合、代替法を要望し選択していくものである。アメリカの獣医大学27校の内、正式なalternative programを設けている学校は、98年4月の段階で20校にのぼる。
教育現場に代替法を導入することについて、また教育目的のより良い代替法の研究開発に向けて、積極的に取り組んでいる組織・機関も数多い。動物保護団体、学生や教育者・研究者などのネットワーク、学術機関や基金などが、学生・教師を対象にした啓蒙活動、法整備を目的としたロビー活動、代替法の研究開発のための助成活動などをおこなっている。
欧米では、教育における代替法の導入は、この10年の間に急速に浸透し定着してきている。これは、学生或いは教育者の「現場における要望の反映」といえるのではないか。また、各国における動物保護法の整備や、アニマルライツ運動・思想の台頭等も影響していると考えられる。日本においても、この国際的な動きがより広く知られ理解されて、現状が変わっていくことを大いに期待したい。

論文制作にあたって

本稿を制作するにあたっては、多くの専門家の方々をはじめこのテーマに関わりのある方々と可能な限り直接お会いし、取材をさせて頂くよう努めた。
特に、1995年10月、イギリスのBridportで開催されたEuro NICHE第八回大会に参加して以来、Euro NICHEのco-ordinaterであるNick Jukes氏、及びthe Humane Society of the U.Sで教育に関わる動物実験問題を担当するDr.Jonathan Balcmbeの両氏とは4年間にわたり友好を深めつつ情報交換等を行ってきた。
96年3月には、カリフォルニア州立大学の獣医学教授であり、Associatio n of Veterinarians for Animal Rightsの会長であるDr.Nedim C.Buyukmihciを訪問し、以来今日まで情報提供や御助言を頂いてきた。
また、98年8月、99年8月のイギリス滞在の際には、様々なAnimal Rightsのデモやアクションの現場に出向き、数度にわたり取材を行った。
本稿にご協力くださった沢山の方々に、深く感謝の意を表したい。( *なお、参考文献については29ページ〜に記載した)

教育における動物使用

 教育における動物使用については、大きく以下のように分類される。

1. 小・中・高等学校における「理科」「生物」の授業でのdissection(解剖実習)・動物実験(「生物」の中でも生理学分野)
2. 基礎科学分野におけるanimal experiments(解剖学・生理学・薬理学・毒性学・生化学・微生物学など)
3. 臨床系におけるトレーニング、技術習得のためのanimal use.(医学部・獣医学部・AHT・技術者養成 etc)

小学校〜undergraduate(大学)までの動物使用を指す。
(大学院については、「学習」よりも「研究」要素が強いので含まれない)

教育における代替法(alternatives to animal use)にはどのようなものがあるか?

 教育現場における動物実験代替法とは、「生きている健康な動物を傷付けたり殺したりしないで学習する方法」のことであり、"全く動物を使用しない方法"と"倫理的に納得のいく範囲で動物(生体または死体)を使用する方法"の二つに大別される。

     A 動物を使用しない主な方法
      1.コンピュータ・シミュレーション
      2.モデル・マネキン・シミュレーター
      3.視聴覚機材(ビデオ・フィルムなど)
    B 動物(生体または死体)を使用する主な方法
      4.死体の使用
      5.clinical practice(臨床実習)
      6.Humane Society Program

1.コンピュータ・シミュレーション
  
 科学技術の発展や研究に携わる人々の努力により、特にコンピュータ・プログラムは、ここ数年で飛躍的に進歩している。コンピュータさえ学内に設備してあれば、他に特別な装置は必要がないため、簡便であり、学生が自分のペースで学習することが可能である。特に、生理学・薬理学・毒性学・解剖学などの基礎科学分野においては、次々と新しいソフトが開発され、話題を呼んでいる。

 例1."Sim Nerv(Georg Thieme Verlag Stuttgart)"
1994年に開発され、現在世界各国の大学の生理学実習で用いられ高い評価を得ている。カエルの座骨神経を使用した生理学の実験のシミュレーションができるソフトウェア。使用者が実験の設定・環境を変えて様々な実験を効果的に行うことができる。例えば、糸で、神経の好きな部分を結わえて電極で刺激を与え、数値を測り、さらに糸を外して元の状態の神経の反応を見る、など。実験に必要な道具・装置を全て備えた実験室がプログラム内に用意されている。同じ研究チームにより"Sim Muscle" "Sim Vessel"なども開発されている。

 例2."Microlabs(Kuck Medizin-Electronic GmbH)"
1970年代から研究開発されてきた薬理学実験のシミュレーション・プログラム。マウス・ラット・ウサギの様々な行動(正常状態・薬物投与後など)を見ることができる。また、動物種・性別・年齢・体重などを設定し、薬物を投与し(投与量・薬物種も自分で決定できる)、1分後、2分後...と時間の経過に沿って観察することができる。

2.モデル・マネキン・シミュレーター
 
 主に手技訓練、技術取得などの目的で開発されたものが多い。また、解剖学などで生物体内の 臓器や骨格などの立体的構造を確認するために開発された模型なども含まれる。

 例1. KOKEN-RAT,KOKEN-RABBIT
1990〜92年度(3カ年)、文部省科学研究費の交付を受け、慶應大学医学部の前島一椒教授をはじめ医科大学の研究者などのチームと、医学教育用の生体(ヒト)モデル等を製造している「高研(株)」が共同で開発した教育用シミュレーター。KOKEN-RATは、雄ラット・9週齢・体長21cm、シリコンと軟質塩化ビニールを材質とし、保定・経口投与・尾静脈投与と採血・気管内挿管の訓練が可能である。
KOKEN-RABBITは、雌NZWラビット・2400g、ラットと同様の素材の他表皮にボアが用いられ、生体と近い感触が得られるよう工夫されている。(右写真)保定・経口投与・耳介静脈への投与と採血・気管内挿管・採尿(雌導尿実習)の訓練が可能である。

 これらのシミュレーターは海外で高く評価され、米国実験動物学会や欧州実験動物学会連合などで発表された際も大きな反響があったと聞く。1000体ずつが生産されたが、この内ラット7割、ラビット5割が欧米に輸出されている。

獣医大学における、動物のハンドリングやケアを教える実習コースで実際に導入されていて、生徒間でも評判がよい(スウェーデン他)。また、アメリカのAHT養成学校68校でも、KOKEN-RATをトレーニング・プログラムに取り入れることに合意している(1998)。

 例2. 外科手術実習用代替臓器モデル教材(米国リアリスティクス社)
アメリカの獣医大学において、外科実習の教材として広く用いられてきた教育用代替臓器モデル。脾臓・腎臓・肝臓・腸管などがある。実際に切開・縫合の訓練を行うことができる。

3.視聴覚機材(ビデオ・フィルム等
 
 実習における代替法で最も古くから存在する(*「Frog Anatomy」/Michigan Mdia,University of Michiganは1959年に制作されている)。学習の知識を深め確認するに適当な手段であり、また、アニメーションなどを入れてより分かりやすく説明してあるものが多い。実習の方法としては受動的である印象が強いが、小・中・高校の解剖実習や、動物のリアルな動態を視覚で確認する必要のある代替法として非常に有効である。

 ポーツマス大学のテレビジョン・センターが制作している解剖実習の代替ビデオシリーズで、サメ・カエル・ハト・ラットの4種の動物の解剖及び生体内の機構(血液循環や神経機構など)について、鮮明な映像とコンピュータ・グラフィック、3-Dアニメーションを駆使し詳しく説明してある。

4.死体の使用

 解剖学や獣医外科学における実習などでは、動物の死体の使用を代替法として認めているところが多い。広くは、屠畜場からの廃棄されるべき死体の一部や、アニマル・シェルターなどで頭数管理により安楽死させられた犬・猫の死体などもこれに含まれている。
 しかし、近年、この死体の由来が問題とされることが多く、代替プログラムで用いられる死体は"倫理的であること"が条件となっている学校も多い。倫理的死体(dead animals from a humane and ethical source)とは、「医学的理由によりやむを得ず安楽死させられた死体」「病気や事故などが直接の死因である動物の死体」などを指す。アメリカの獣医大学では、カリフォルニア州大、オハイオ州大、テネシー大、タフツ大、ワシントン州大、ウイスコンシン大の6校が倫理的死体を学生に提供することに努力している。各大学は、地域のアニマル・シェルター、動物愛護協会、動物病院、業者などと協力して、倫理的に納得のいく死体を入手するが、学生側が持ち込む倫理的死体も歓迎する。これらの死体は、防腐処置を施されラテックスが注入されて、実習時まで保管されることになる。
 オスロ大学(ノルウェー)の獣医学生Siri Martinsenの例を挙げると、解剖実習で死体を調達するにあたって、factory farming(工場制畜産)からの大動物の死体の使用を拒否し、自ら小規模な農家をあたって病死した羊や馬などを入手している。(1997)
 このように、現在は、代替プログラムで使用される死体に関しては、死んだ動物なら全て許容されるわけではなくなってきている。

5.crinical practice

獣医外科実習における代替プログラムにおいて、死体やモデルを使ってトレーニングした学生は、実際の動物病院での研修を積むケースが多い。また、イギリスの獣医大学では、「徒弟制度(apprentice system)」という形で外科実習を行っている。従来のプログラムでも、このcrinical practiceは全学生が必修という形を取っている大学が多い。

6.Humane Society Program

 現在殆どのアメリカの獣医大学が、実習の一項目として採択している制度である。これは、地域のアニマル・シェルター(動物虐待防止協会など)との共同プログラムで、シェルターに収容されている犬・猫に、外科医スタッフの監督の元で不妊手術や去勢手術を行うものである。これらの犬・猫は、術後回復した後シェルター(提供者)に返却され、里親譲渡を待つことになる。

何故代替法を使用するのか?

      代替法が普及した理由          代替法を選択する理由

         1.学生の要望             a.倫理的理由
         2.教育者側の選択           b.有効性
         3.社会的背景             c.経済性
         4.科学技術の発展

 教育現場において、代替法が取り入れられ普及したことについて、最も大きな原動力となってきたのは「学生の要望」である。「動物を傷付けたり殺したりする学習方法が、自らの倫理的信条に反する」という理由で、世界各地で、動物を犠牲にする実習を拒否し、代替法を要望し選択する学生が増加している。それに対し、教育者側(学校側)は、学生の意思を尊重し、或いは教官自らの倫理的理由から、カリキュラムに積極的に代替法を導入するようになってきている。また、代替法が学習上非常に優れていることを指摘する教育者も多い。
 さらに、70年代以降、国際的に高まってきた動物実験反対運動やAnimal Rights movement等の影響も大きいと思われる。実際に、教育者の監督不行届や学生の好奇心等から、動物の苦痛を無視した実験が横行した時代があり、しばしば教育現場での動物使用の実態が問題視されてきた。また、80年代以降は、法的にも代替法の開発や導入を奨励するようになり、それに呼応して、教育目的の代替法開発研究が著しく進展してきている。コンピュータの世界的な普及やそれに伴う技術の向上は、さらに代替法学習のクオリティを高めているものと思われる。

代替法が教育現場において選択・導入される理由の主なものとして、以下の3項目が挙げられる。 
  
    a.倫理的理由
   b.有効性
   c.経済性

最も大きな理由は「倫理的理由(conscientious objection)」である。
 教育における動物使用は、学習するための手段であり過程であって、目的ではない。特に将来臨床に携わるものにとっては(医師・獣医師等)学習途中で殺す生命と将来救うべき生命とは一体どこが違うのかというジレンマが生じてくる。例えば、生命の尊厳という観点からみれば、実習で犠牲になる犬と将来自分が診療する患者の犬との間には、何の差もないのである。
 また、生きている健康な動物を、教育のためという名目で傷付けたりその生命を絶ったりする事に対する抵抗感は、多かれ少なかれ殆どの学生が持つといって過言ではない。殺傷に対する嫌悪感は、人間にはある種普遍的なものである。そして個人の生命観・倫理観はそれぞれの体験によって異なっており、強制(矯正)されるものではない。
 「如何なる現行の教育システムを持ってしても、強制・服従・伝統によって生徒の感受性を傷付けるべきではなく、またそういった生徒に対し、彼ら自身の信念に反した行動に従事するよう強い
るべきでもない」と獣医師であり動物行動学者であるMichal W.Fox博士は語る。
 教育者の立場として、倫理的観点から、積極的に代替法を実習に取り入れる教官も存在する。カリフォルニア州立大学の獣医学部教授であるDr.Nedim C.Buyukmihciや、エストニア農科大学の生理学教授Dr.Evald Reintam等は、生命倫理や動物の権利といった観点で、学生に代替法を推している。

 また、代替法使用が有益な学習方法であるという理由で、実習に代替法を導入する教育者の声が多く聞かれる。
 ドイツのマルブルグ大学で生理学の実習を指導するDr.Hans Albert Brawnは、従来カエルを使用して行っていた神経生理学の実習を、Sim Nervというソフトウェアで完全に置き換えた結果、本物のカエルの神経を使うよりも非常に高い学習効果がみられたことを報告している(1998)。オランダのアムステルダム大学で薬理学の実習を担当するDr.Henk van Wilgenburgは、Microlabsというシミュレーション・プログラムを導入し、短時間で生徒達が様々なトレーニングを自主的に行い、滞り無く学習できるようになったことを語る(1998)。
 
基礎科学分野での代替法学習(コンピュータ、視聴覚機材を使用)の利点として

   1.自分のペースで学習が可能である(一人で作業ができる)
   2.何度も繰り返して学習ができる
   3.多くの情報を正確に得ることができる
   4.(他の教材との組み合わせにより)総合的な学習ができる
   5.本来の目的に集中できる
   6.時間が短縮される
    
    等が挙げられる。

 医術トレーニング等では、モデル、シミュレーター、動物の死体等も多く使用されるようになってきている。Dr.Daniel Smeak等は、血管結紮に関しては、簡易モデルで練習した学生の方が実際により高度な技術を取得していることを発表している(1991)。また、Dr.Larry Carpenter, Dr.Karl White等は、死体で外科実習を行った学生と生体で実習を行った学生との間に、技術的に差は認められないことを統計学的に立証している(1991、1992)。(*もっとも通常アメリカの獣医大学では、死体を使ったラボを選択する学生は、臨床研修も行うようにカリキュラムが制定されていることが多い。)

アメリカの獣医大学において広く普及している Humane Society Programについては、以下のような利点が挙げられる。

    1)麻酔覚醒後のケアを行うことができる。
    2)手術後の回復経過をみることができる。
    3)動物を「生かす」ための手術であるため、慎重かつ真剣になる。
    4)不妊手術を施すことで動物の里親が見つかりやすくなる。
    5)犬・猫の頭数過剰問題(ペットの社会問題)を学生に知らせる良い機会となり得る

 さらに、「経済性」について考えると、コンピュータやシミュレーター、視聴覚機材等は繰り返して使えること、耐久性に富む等の利点があり、結果的にコストの削減にも繋がることを関係者は指摘している。死体についても、原則として無料提供のためコストはかからない。

alternative実習の施行

1.全面的に代替法に切り替える
 学部の必修カリキュラムから完全に動物の犠牲をなくす
  一部の実習科目において、完全に動物の犠牲をなくす
2.学生個人が代替実習を要求・選択する
3.代替コースを設ける

 では、どのようにして、実習の中に代替法が導入されるのだろうか。
 まず、学校側のカリキュラムとして、学部の必修科目から動物の犠牲を伴う実験やトレーニングを完全に排除した例がある。ペンシルバニア大学の獣医学部では、93年の時点で、全生徒が実験動物を犠牲にしないカリキュラムが施行されている。全ての必修科目において、完全な代替法への 置き換えが可能となり、外科実習でもHumane Society Programが充実し、健康な犬を術後安楽死させるような実習は「選択科目」となっている。アメリカの医科大学(126校)でも50%以上の学校が完全にカリキュラムから動物実験を外している。フィンランドの全ての医学部においても、強制される動物実験はなくなり、動物使用数はほぼゼロorゼロという報告が出されている。オランダの医学部教育でも、現在、動物は全く使用されていない。イギリスの全ての獣医大学においても、この数年で必修の動物実験(動物を傷つけたり殺したりする)は削除された。ユトレヒト大学(オランダ)の獣医学部でも、動物の犠牲を伴う実習は皆無となっている。このように、入学から卒業までの間に(在学中)全学生が動物を全く犠牲にせず代替法で実習することが可能となっている大学が存在するのである。
 また、科目によって、全面的に代替法を取り入れている大学の例は後を絶たない。Tuskegee大学のDr.Albert W. Dadeによると、獣医学教育における「薬理学」「毒性学」の実習は、完全に代替法で置き換えられ、さらに、「生理学」は使用動物に生命の危険がない程度の実験にとどめられている(1997)。またPrince Edward Island大学の獣医学部においても、「生理学」「薬理学」のラボはケース・スタディのゼミやコンピュータを使用したものに替えられ、必修の外科学実習も動物を殺さないプログラムを採択している(1997)。Tufts大学の獣医学部の外科実習でも同様、動物の健康を損ねたり生命を絶つような手術を行っていない(1995)。
 次に、最も例が多いと思われるのは、生徒個人が動物の犠牲を伴う実習に直面した場合、代替法(代替プログラム)を要望し選択していくものである。この場合、学部教育において動物使用は存在するが、代替法を選択することによって、一匹の動物も殺傷せずに単位を取得し卒業することが可能である。
 アメリカの獣医大学27校の内、正式な Alternative Programを設けている学校は、98年4月の段階で20校にのぼる。これは全体の約74%に当たる。他の7校では、正規の Alternative Programは設けられていないが、それぞれの実習科目において担当教官との話し合いで代替法を選択していくことは可能である。特に外科学分野においては、教育者側が生徒の意思を尊重し、かつ教育の質を落とさないような代替プログラムを検討し続けた結果、倫理的・技術的にも満足できる内容となっている。

 ワシントン州立大学の獣医学部では、外科実習において代替プログラムを選択する生徒は、レポート用紙1枚にその理由を述べることが義務づけられている。しかし、代替プログラムを選択したことで成績評価に何らかの影響があるわけではない。そのことを成績証明書に記載されることはないし、勿論ペナルティが課せられることもない。
 ヨーロッパにおいては、学生が個人の意思で動物を殺す実習を拒否し、代替法を選択することが、法律上可能な国が多い(特にEU加盟国)。ただし、代替法を選択することが容易か否かは国や学校の事情によっても異なるため、一概に言うことはできない。

 例えば、オランダにおいて、学生が動物実験を拒否する場合は、以下のような手順を要する。
1.まず学生はその実習の担当教官に動物実験を拒否する意思を伝える。
2.同時に、審査委員会(Examination Committee)に手紙を書く。
*審査委員会はオランダの全大学の全学部に設置されていて、教育プログラムを検閲する等の重要な役割を持つ。
3.審査委員会は学生の動物実験に対する異議を認めるか否かを決議する。幾つかのケースでは審査 委員会は学生に口頭試問を要求することがある。
4.殆どの場合、学生は大学側から代替法の選択を認可される。(代替法の供給を受ける。)

 オーストラリアでも、98年11月、Murdoch大学獣医学部において、学生個人の倫理的理由による代替法使用が全科目で認可されることが決定した。これは、当時獣医学部の2年生だったAndrew Knightという学生が、実習で動物を犠牲にすることに反対の意向を示し、新聞上等で話題になり論議を呼んだことが発端となっている。
このように、欧米や豪州では個人の思想や信条などを尊重する傾向にあることから、「動物実験を拒否する」ことについても、「学生個人の権利」として認められることが多い。

 さらに「代替コース」を設けている大学が存在する。
 ワシントン州立大学獣医学部では、毎年7月に、外科の代替実習コースを実施している。これは3週間の特訓コースで、ワシントン州大の学生だけでなく他大学の獣医学生も参加することが可能である。第1週目は外科学の基礎、第2週目は動物の死体を使ってのトレーニング、そして第3週目は前述したHumane Society Programによる実際の手術(不妊去勢手術)等を行う。指導に当たるのはワシントン州大の獣医外科学の教授陣であり、コースの定員数も20名弱に限定しているため、集中して優れた教育を受けられるという利点がある。

初等・中等教育における解剖実習(dissection)をめぐる動

 小・中・高等学校における「理科」「生物」等の授業で行われる解剖実習(dissection)については、魚類・両生類(特にカエル)の使用が主となっている。この解剖実習をめぐっての論議に関しては、アメリカでの事例が興味深い。 アメリカにおいて、小・中・高等学校のカリキュラムの中に解剖実習が導入されるようになったのは1960年代のことである。以来、「カエルの解剖(frog dissection)」は脊椎動物の解剖を学習する方法として、全米に広まり浸透していった。
 1969年度の1年間の統計だけで、900万匹のカエルが解剖実習の目的で供給・使用されている。さらに、70年代に入ると、高校生による科学発表会「Science Fair」が盛んになり、生徒達は賞を競って様々な動物実験を行うようになった。マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ等がその主な使用動物であったが、教師による適切な指導や監督を欠く場合も多く、動物たちに苦痛や死をもたらす研究発表が数多く見られた。
 1980年、当時BSCS(Biological Sciences Curriculum Study)の理事であったWiliam V.Mayerは、会議上で高校のカリキュラムにおける動物使用について強力な支持を示している。それは、生きた動物を教材として使用し、解剖を行うことは、高校の生物の授業には欠かせない貴重な機会である、というものであった。
 しかし、1981年、NABT(the National Association of Biology Teachers)と、NSTA(the National Science Teachers Association)は、高校の生物の授業において動物を殺傷することに反対するガイドラインを採択した。「哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類に対し、健康を損ねるような実験や苦痛や死をもたらす実験は、行うべきではない。生徒は脊椎動物を実験に使用するに当たって、苦痛や死を排除するように心がけるべきである。」また、人道的な生物研究、特に生きている動物を観察することにより「生命への畏敬(respect for life)」を学ぶことを奨励した。このガイドラインは、強制ではないにしろ、全米の生物の教師およびそのカリキュラムに対し影響力があったことは見逃せない。
 1986年、AVAR(the Association of Veterinarians for Animal Rights)は、「小・中学校と関連教育活動で使用される動物に関する方針声明」を理事会で採択している。「教育活動は全ての生物に対し敬意を持って臨むべきであるとAVARでは考えている。その意味で、我々は、小学校や中学校の生徒達が動物を使って実習や実験を行い、動物に病気や怪我を負わせたり、ストレスや苦痛を与えたり、また、機能を喪失させたり変化させてしまうことに断固として反対する。(部分抜粋)」と明記している。
 1987年には、カリフォルニア州において、Jenifer Grahamという15歳の生徒が学校の授業におけるカエルの解剖を拒否し、生物の科目で"D"の評点を受けたことで、学校が彼女の権利を侵害したとして訴訟をおこした。HSUSをはじめ複数の動物保護団体がGrahamの主張を支援し、このことは、マスメディアを通して全米中の話題となり大きな論議を呼んだ。さらに、この訴訟が引き金となり、1989年カリフォルニア州は、学生が解剖実習を拒否し代替法を使って学習する権利を、法的に認めることを決定した。以後97年までの間に、フロリダ・ペンシルバニア・ニューヨークの各州においても、動物実験を拒否する学生の権利を法的に擁護するようになり、現在他の州でも同様の法律制定が検討されている。
 90年代に入ってから、解剖実習の不必要性、或いは動物実験を小・中・高校生に強制することに反対する見解を唱える専門家や教育者が多く出現している。Suzanne C.Terrant獣医学博士は、「教育の現場で生物を容易に利用し殺すことは、生命体への残虐行為や暴力に関する潜在的な問題に対し、子供達の感覚を麻痺させてしまう」と指摘し、生理学者であるBarbara Orlans博士(ジョージタウン大学)は、「解剖実習はもはや時代遅れである」と言い代替法の使用を強く推進している。
 また、教材として使用されるカエルの大多数が野生由来であるため、自然生態系へ与えるダメージを危惧する声も聞かれる。National Research Councilによれば、1956年から1971年の間にカエル(bull frog)の自然生息数は50%の減少を見せ、国内での供給が間に合わないため、メキシコやカナダから輸入しているとの報告がある。
 現在、アメリカでは、毎年200万匹以上の動物が解剖実習の目的のために殺されている(AAVS推計)とされるが、平均して15〜16%の生徒が動物実験を拒否する意向を示し代替法の使用を選択することも明らかになってきている。
 動物保護団体の取り組みも真剣である。Animal Legal Defense Fundは、"DISSECTION IS YOUR DECISION"というコピーを掲げ、解剖実習に直面した生徒や教師などからの相談に応じるホットライン(フリーダイアル)を設けたところ、既に10万件を超す相談があったという。HSUSやNAVSなどの保護団体も同様の電話相談口を設置し、生徒らにどのように代替実習を選択するかなどのアドバイスを行うとともに、代替法の情報提供や、代替法に必要な教材の無料貸し出しをおこなっている。
 解剖実習に関する分野は、教育における動物使用の中でも、いち早く問題とされたこともあり、対応する代替教材も様々な種類が開発されてきている。現在、解剖実習に適応する代替機材はCD-ROM、プラスチックモデル、視聴覚機材などが主だが、既に300種類を超えるとされる。 なお、ドイツ、イギリス、スウェーデン、デンマーク、アルゼンチン、台湾などでは、小中学校における動物実験 (解剖実習)を国の法律で禁止している。

団体・組織・機関などによる代替法促進に向けての取り組み

 教育現場に代替法を導入することについて、また教育目的のより良い代替法の研究開発に向けて、積極的に取り組んでいる組織や機関については、以下の5つに分類されると考えられる。
(*企業などの研究所はここでは含まれない。)

  1.一般の動物保護関連団体
 2.関心のある学生・教育者・研究者などのネットワーク
  3.専門家による組織(Animal Rights)
  4.学術的機関・センター
 5.代替法の研究開発のための基金

 また、その活動内容としては、
  a.学生・教師を対象とする啓蒙活動
  b.ロビー活動(代替法導入を可能とする法整備など)
  c.調査活動(教育機関における実験動物使用数・実習における動物実験の内容・代替法使用の浸透度などの調査)
  d.助成活動(代替法の研究開発のための金銭面における援助)
 が挙げられる。

1.一般の動物保護関連団体

 教育分野における代替法の導入については、理念として、殆どの動物保護団体・動物実験反対組織・Animal Rights グループなどが賛成している。特にこのテーマに非常に熱心に取り組んでいる団体も見られる。
 例えば、 The Humane Society of the United States(HSUS)は、会員数250万人以上を有するアメリカで最も大きい動物保護団体の一つであるが、教育に関わる動物実験問題を担当する専任スタッフが存在する(現在はDr.Jonathan Balcombeが担当)。HSUSでは、学生へのアドバイス("How to refuse the animal experiments and dissection"など)を行ったり、適切な代替法を紹介したりする他、無料で代替法に必要な教材を貸し出しする"ローン・プログラム"を行っている(スライド、ビデオ・テープ、3-Dモデル、CD-ROMなど100アイテムを蔵す)。また、啓蒙活動以外にも、実態調査などに熱心である。
 The American Anti-Vivisection Society(AAVS)や People for the Ethical Treatment of Animals(PETA)なども、特に学校での解剖実習(dissection)に反対し、一般向けにリーフレット、小冊子、グッズ(T-シャツやステッカー)などを制作し、啓蒙に努めている。
 オランダで最も大きな動物実験反対組織である Vereniging Peoefdiervrij は、1997年から、教師や学生に代替法の存在を知らせるキャンペーンを行っている。(大学などの教育機関を訪問し代替法のデモンストレーションを行うなど)
 イタリアの動物実験反対組織である the Italian League Against Vivisection (LAV)は、30以上の国内団体の賛同を得て、学部レベルでの動物実験の全面的廃止を訴えるロビー活動を展開中である。
動物実験反対の気風が非常に強いスイスでは、The Swiss League Against Vivisection が1997年、15の大学や病院に向けて、外科におけるトレーニング・シミュレーターの提供や、代替法促進のための資金援助を行った。また、同団体は、多くの学校に解剖実習の代替法であるコンピュータ・ソフト(Compufrogなど)を寄贈している。

2.関心のある学生・教育者・研究者のネットワーク

 1988年に設立された European Network of Individuals and Campaigns for Humane Education (Euro NICHE)は、現在この分野において最も勢いのある国際的な非営利ネットワークである。ヨーロッパ20ヶ国以上、さらにアメリカ、オーストラリア、アジア、南米などの学生、教育者、研究者、動物保護活動家などがこのネットワークに参加している。
 Euro NICHE は、教育における代替法の導入促進について、啓蒙活動や情報提供、アドバイス、教材の貸し出しなどを行う他、常に最新の動向を把握している。さらに、年1回催される大会では、様々な立場の講師陣によるレクチャー、ワークショップ、研究者による代替法のデモンストレーションなどを軸としながら、各国からの参加者が立場を越えて直接話し合い交流を深めることができる。
 1997年、Euro NICHE は、400種以上の代替法を項目別に紹介した本『from Guinea Pig to Computer Mouse』を出版、この本は既に20ヶ国語で翻訳され、99年さらに新しい情報を掲載した改訂版を出す予定になっている。1998年に完成した、代替法促進のための啓蒙ビデオ・テープ『Alternatives in Education』も、現在15ヶ国語に訳されて42ヶ国に配布されている。
 Euro NICHE が10年足らずの間に大きく発展した理由としては、教育における動物使用に直面している当事者達が直接参加していること、目的が明確であり限局されているため支持・連携しやすいことが挙げられる。

 国によって学生や研究者が独自の組織を設立して、Euro NICHE に参加している例もある。
 イタリアの Movimento Universitario Europeo Obiettori Sperimentatione Animale
(MOUSE)は、Florence大学を拠点とし、国内の動物実験反対組織などと協力しあって活動を進 めている。
ドイツの Bundesverband Studentischer Arbeitsgruppen gegen tiermissbrauch im Studium (SATIS)は、大学での動物実験に反対する学生グループだが、数ヶ所の大学に支部を持ち、1988年の設立以来常に150人前後のメンバーを有する。SATIS は、ドイツ国内の大学における動物使用状況や実習カリキュラムの調査を5年間かけて行い、その報告書を1996年に出版している。

3.専門家による組織

 Association of Veterinarians for Animal Rights (AVAR)は、1981年、カリフォルニア州大の獣医学教授である Dr.Nedim C.Buyukmihci と Dr.Neil C.Wolff によって設立された、獣医師としての専門的・科学的立場から社会的な動物問題に取り組む団体である。AVARは、動物の福祉というより Animal Rights を提唱しており、社会における様々な分野の動物使用・利用・搾取(工場制家畜、毛皮、競馬、動物実験、ペット産業、動物園など)に対し、鋭く的確な意見や声明を発表している。拠点のアメリカだけでなく世界各国の獣医師が参加する国際的な団体として活 動中である。
 AVARは、獣医学教育における代替法導入を強く推進しており、代替プログラムに関する情報収集・提供や、代替法の研究開発の奨励などに精力的に取り組んでいる。AVARでは、獣医学教育における代替法の紹介などを纏めた小冊子を発行している他、数千に及ぶ教育分野における代替法を網羅したデータ・ベースを提供している。
 また、Physicians Committee for Responsible Medicine (PCRM)は、preventive medicineやvegetarian diets の普及の他、動物を犠牲にしない医学研究(教育)の啓蒙活動も行っている。医学生に向けて代替法の紹介や情報提供を行った小冊子を発行している他、動物を犠牲にしない医学教育に関するビデオ・テープの制作・監修も行っている。

4.学術的機関・センター

 The Netherlands Centre Alternatives to animal use (NCA/オランダ動物使用代替センター)は、1994年ユトレヒト大学に拠点を置き、国と大学の予算で研究・活動を開始した。主に代替法の研究推進と教育啓蒙活動を中心としている。NCAは、1994年、教育目的の代替法を扱うワークグループ ALTONを創設した。1995年、ALTONは、教育分野での動物実験代替法についてのシンポジウムを開催し、さらに1998年には"Alternatives to the use of animals in higher education"というタイトルでECVAM(ヨーロッパ代替法認可センター/1993年にECにより設立)ワークショップを行っている。
 A Norwegian Inventory Of Alternatives (NORINA)は、ノルウェー獣医科大学の実験動物 課を拠点とし、教育分野での代替法(3500種以上)に関する情報提供及び100以上の代替法開発・供給に携わる企業・研究者のリストを、インターネットを通じて無料公開している。
 UC Center for Animal Alternatives は、カリフォルニア州大の獣医学部に設置され、インターネットやニュースレターを通して、教育における代替法の研究・使用状況などの情報を提供している。

5.代替法の研究開発のための基金

 ヨーロッパ各国やアメリカでは、代替法研究を推進するための基金が多く設立されている。こういった基金は、動物保護団体や一般市民からも広く支持され、実際の代替法の研究開発に大きな役割を果たしている。(FRAME/医学動物実験代替基金・イギリス,FECRB/ヨーロッパ代替法共同研究基金・フランス,ARDF/動物実験代替法研究開発基金・アメリカなど)
 THe Swedish Fund for Research without Animal Experiments(スイス)や The Dr.Hadwen
Trust for Humane Research(イギリス)、FRAMEなどは、教育における代替法導入に関する啓蒙活動に出資している。
 フィンランドの Juliana von Wendt's Fund(JvWF)は、基金としての役割の他、国内の動物保護団体である Animalia-FPA と共同して学生キャンペーンやロビー活動を盛んに行っている。1984、87、94年、JvWF と Animalia-FPA は教育省に対し、大学における動物使用数削減及び学生が動物実験を拒否する権利に関して要求とアピールを行ってきた。また既に80年代に、ヘルシンキ大学医学部の薬理学実習において学生が動物実験に抗議したことに対し、その代替法としての視聴覚機材を大学に寄付するなどの活動を行っている。1994年には JvWF と AnimaliaFPA はフィンランドの大学における動物使用に関するレポートを制作し、教育省や農業省、動物実験委員会、学生団体、大学教授などに送付し注目を集めた。

法規との関連性

 代替法導入について効力のある法律
  1.実験動物の福祉・倫理に関する法律          
      動物保護
   (動物保護の立場から代替法への置き換えを奨励するもの)
 2.個人の権利(動物実験を拒否する権利)を擁護し保証する法律
   (個人の思想・信条の自由を認め、尊重するもの)  
      人権擁護

 代替法を教育現場に導入するにあたって、或いは個人が動物実験を拒否し代替法を選択する際に効力を発揮する法律は、大きく2つに分類される。即ち、動物実験に規制を与えるような「実験動物関連法規」と、個人が動物実験を拒否する権利を認める「実験に関わる法規」である。
 前者について検討すると、まず、西ヨーロッパ諸国(EU加盟国)では、動物実験を規制する法律がEU規模で定められており、実験動物の取り扱いについては法的拘束力が大きい。
 EU(欧州連合)法においては、1986年11月、実験動物の福祉を目的とした「指令」が決議されている(86/609/EEC)。この「指令」の中で、"満足できる代替法がある場合には、動物実験を行わないこと" "加盟国は、動物実験代替法の開発と立証のための研究をすること" という条項がある。
 また、COE(欧州評議会)の動物福祉協定においては、1986年3月、「実験その他の科学的目的に使用される脊椎動物の保護のための欧州協定」(ETS123)が決定されている。(*この協定は、各国において、署名・批准の後に国内法として適用・執行される。)この協定においても、"代替法が存在する場合は、動物を実験に使用するべきではない" ことを述べており、さらに、"教育分野における動物実験は、将来その生徒が職業上動物実験を行うであろうと予測される場合に限り、許可される" とある。このETS123の条項が、EU加盟国において代替法を選択する生徒や教育者にはよく引き合いに出される。
 この他西ヨーロッパ各国では、国レベルでの「動物保護法」が存在し、動物実験そのものに厳しい規制や監査制度があるため、全体的に他分野においても代替法の促進について意識が高く進展が見られるものと考えられる。

 人権を擁護する法律の中で画期的なものとしては、イタリアで1993年4月に国法として採択された "動物実験の良心的拒否に関する法" である。"医師・研究者・看護婦(師)・技術者・学生を含めた全ての国民が、自らの思想・信条に基付いて動物実験への参加を拒否できる" と明記したこの法律は、イタリア国内で動物実験を拒否し代替法を選択する学生などにとって大きな力になっている。この法律では、動物実験を行っている大学・機関において、"動物実験を拒否する権利を保証する法律の存在を知らせることの義務" も唱えている。
アメリカでは、州によって、小・中・高校の生徒が動物実験・解剖実習に参加しない権利を法的に擁護している例が見られる。(表2参照) 但し、州によってその詳細には差異が見られる。

 特に問題となるのは、対象動物をどのように定義しているかという点である。例えば、カリフォルニア州では、「全ての動物(無脊椎動物を含む)」を対象にしているが、ペンシルバニア州では「脊椎動物」に限定している。ニューヨーク州、フロリダ州においては明確にしていないが、哺乳類と鳥類のみが対象と考えられるケースが多く、この場合、小・中・高校における解剖実習で最も多く使用される "カエル" は両生類なので含まれないことになってしまう。また、「代替法がその実習(授業)に適応するかどうかを判断する自由を教師に与えている」(カリフォルニア州・ニューヨーク州)、「生徒が動物実験を拒否する際、両親や保護者の承諾が必要」(カリフォルニア州・ニューヨーク州・フロリダ州)、「同権利は私立学校には適用されない」(カリフォルニア州・ ニューヨーク州・フロリダ州)など、今後検討すべき点も多い。
 オランダ科学条令(The Dutch Act on Scientific Education)では、各校における審査委員会(the examination committee)が生徒の倫理的意義を認める場合、教師は生徒に代替法を提供すべきであると決めている。

 このような、教育における動物の使用に影響する法律、また適切な代替法の使用や、動物実験を拒否する学生の倫理的信条を保証する法律の制定は、教育現場における代替法の導入をスムーズにするものとして、非常に有効である。一方、動物実験に規制を与えるような法律が皆無と行った国も存在しており、このような国での代替法の導入は困難となっている。教育分野だけでなく、広く科学的分野での代替法の使用と許可を考慮した場合においても、このような法律の制定・整備は重要な意義を持つと思われる。

動物実験反対運動との関連性

 動物実験反対運動の台頭と代替法の浸透度には相関性がある、すなわち比例しているとみて良い。
 動物実験に異議を唱える人々・組織・団体の主張・思想的立場や生命観など、および運動方式については多岐に渡っており、一括して考えるのは難しい。しかし現在は、"動物愛護・福祉の観点による運動"と、"Animal Rights(Animal Liberation)の思想・哲学に基づく運動"の二つの流れが主である。

1.動物愛護・動物福祉の立場について

 「動物愛護」という言葉は、日本に特有の言葉ではないかと考えられる。「愛護」という言葉には"大切にしてかわいがり守ること"という意味があるが(角川新国語辞典による)、これはある種曖昧であり、明確な思想的裏付けは存在しない。これまで認識されてきた「動物愛護」を検証すると、"動物愛好家"による感情的な("かわいい" "かわいそう"といった類の)一連の活動や考え方といったニュアンスが強い。また、藤原英司氏が著書『雪国のライオン』(1986、集英社)で指摘しているように、「動物愛護という言葉には、ある絶対的優位に立つものが相対的弱者に対しあわれみをたれる式の感覚があるように思われる。(P138より抜粋)」
 日本においては「動物愛護週間」が公的に設けられ、また「愛護」を名乗る団体やグループも多く存在するが、対象とする動物は犬・猫等のコンパニオン・アニマルであることが多く、家畜動物や野生動物にはコメントしない場合が殆どである。そのため、犬・猫等を対象としている愛護団体は、家畜動物やマウス・ラット等の齧歯類の科学研究使用にはSympathy を示さない例が、実際過去にはあったため、「実験に犬は使えなくてもブタなら使っても批判されない」という認識を一部の研究者が持ったことも事実である。(*しかしこのような話は現在は殆ど聞かれない。)
 一方「動物福祉(Animal Welfare)」は、海外では、その対象が家畜動物や動物園動物、実験動物にまで拡大されることが多い。また「動物保護(Animal Protection)」は、野生動物を対象にした場合にも使われる。「福祉」「保護」という言葉は、「愛護」よりも倫理的でロジカルな印象を受ける。
 これらの運動は、「動物は人間が保護・管理すべきである」という考えのもとに展開している。したがって、動物実験そのものに反対すると言うよりは、実験動物の苦痛の除去やストレスの軽減、飼養環境の改善等を中心に要求することが多い。また、コンパニオン・アニマルやサル・霊長類などの実験使用に対し敏感である等の特徴が挙げられる。

2.「Animal Rights」「Animal Liberation」の思想・哲学について
   
 これに対し、70年代から急速に高まってきた Animal Rights movement(Animal Liberation movementを含む)は、従来の動物愛護・福祉運動とは基本的に質を異にするものである。Animal Rights movementは、「動物は本来それぞれが固有の生命の尊厳と生存する権利を有する」という理念のもとに運動を展開している。この運動で結果的に大きな役割を担ったのは、ピーター・シンガー(モナシュ大学哲学教授・生命倫理学者)やトム・リーガン(ノースカロライナ州立大学哲学教授)等の哲学者であるという点は注目に値する。ピーター・シンガーの「Animal Liberation(動物の解放)」という著書は、1975年に出版されて以来世界的に注目を集め、Animal Rights movementのバイブルとさえいわれていた時期がある。シンガーは「全ての感覚ある動物に対し、人間は平等に配慮すべきである」と説き、リーガンは動物の自意識という点に着目し、動物の利用という概念に疑問を投げかけている。シンガーやリーガンの思想の細部に関しては Animal Rights 活動家や生命倫理に掘wgわる人々からも反論があるが、その「大義」が多くの人々に受け入れられたのは事実である。
 60年代から活発であった人種差別・性差別等に反対する"反差別運動"や"反暴力運動"、そしてエコロジー運動や Vegetarian movement などとリンクしながら、Animal Rights movement は次第に一般市民の間で広く支持されるようになった。
 80年代に入り、Animal Rights movement は、より勢いを増し様々な方法で展開していった。運動方式も、一般市民への啓蒙活動や、研究所・企業などに対するデモ、実験所や家畜工場などから直接動物を連れ出す非合法のダイレクト・アクションに至るまで、個人・団体によってもそのやり方は様々である。賛同する人々の職業・年齢層なども幅広い。そして賛同者の殆どがベジタリアンや vegan(完全菜食主義者)である。
 現在も、Animal Rights movement は衰退を見せることはないし、むしろディープ・エコロジーやニューエイジなどの思想を取り入れて、思想枠も賛同枠も広がりを見せている感がある。

 動物愛護、Animal Rights を問わず、動物実験に異議を唱える団体は、概ね代替法の促進については、特に教育現場における代替法の導入に関しては、好意的である。また、Animal Rights の一連のアクションは、動物に対する倫理について世論を高めることに成功し、法の制定や代替法の開発・研究推進の動きに役割を果たしているところが大きい。
 ただし、教育における代替法の導入促進に関わる動きは、現場に携わる教育者・学生・研究者などが自主的に改革を打ち出していくという点で、一般の動物実験反対とは一線を画すると言って良いだろう。すなわち「外圧(動物実験反対団体などからの批判)」ではなく、内部の、いわば当事者達の「意思」そのものが改革力として作用しているからである。

日本における動向

 日本では、教育目的で使用される実験動物数は、国内の実験に供される動物数のうち8%にのぼり、これはヨーロッパに比較すると、相当高い割合を占めていることになる。(EUでは、科学分野での動物使用数のうち、教育目的とされるのは約1%という報告が出ている。)
 日本における大学教育では、学校あるいは教官の意向によって、実習に用いる動物の数の削減(reduction)、実習プログラム(カリキュラム)内容の改善、動物の苦痛の除去(refinement)などが図られている例が見られるが、代替法の導入を強く推し進めていく動きは、現時点ではあまり見られないようである。
 慶應大学の前島一椒教授が、1987〜93年に慶應大学医学部の学生を対象に、動物実験に関する意識調査を行ったところ、「動物実験をしたくない」学生は5.81%、また、明確に「動物実験に反対である」学生は4.65%、あわせて約10%が動物実験には批判的であるという結果が出ている。他大学の医学部の調査でもほぼ同様の結果が得られているという。
 また、動物実験問題を扱う団体や組織に、医学生や獣医学生から、実習内容や動物の取り扱いの残酷さを訴える内容の手紙や電話が多く寄せられているとの報告もある。
 このようなことから、動物を実験に使用することについて、欧米諸国に比較し、日本の学生が特に無感覚であるとは言い難いと思われる。

 日本の大学の医学部・獣医学部を卒業し、現在は臨床の現場で活躍する4名の医師・獣医師の方々から、このテーマに関して体験談・意見を語っていただいた。
 現在、ロサンゼルスの動物病院に勤務している西山ゆう子獣医師は、大学時代の動物実験を振り返って以下のように語っている。
 「はじめは"かわいそう"という声を出していた学生達も、時間に追われる生活に疲れて、"スムーズに実験が終わる"ことの方が重要になっているようでした。これら一連の動物実験が、本当に獣医師を養成するのに必要なことであるのなら、意義があることでしょう。しかし残念ながら、その大部分は、必要なかったり、削減できたり、代替法で充分だったり、大学の制度を改善することによって省くことができるものだと思います。」
 また、山口県秋吉台自然動物公園に勤務している笹野聡美獣医師は、大学の生理学実習の例を挙げ、「これらの実験の内容の殆どは教科書で述べられている原理を確認するもので、わざわざ多くの動物を苦痛にさらしてまで実施する必要性があったのか、疑問を抱いてしまう。」と述べ、さらに必修の外科実習についても、「実際今の仕事に役立っているのは、研修医時代の経験であって、実習を反芻しながら手術を行ってはいないはず。学生全員に見合った数だけ犬を犠牲にする必要はないだろうし、小動物臨床の希望者は、実際の患畜の手術を見学したり手伝ったりすることで、ある程度の経験は得られるだろう。」と語っている。
 97年東北大医学部を卒業し、現在国立医療センターで勤務する田沼順子医師は、大学時代の薬理学で犬を使用した実習を例に挙げ、「既知の事実をなぞるだけの無意味な動物実験には反対。おそらく多くの医学生の意見は私と同じだと思う。」と語る。

 96年に大阪大学医学部を卒業し、現在は大阪警察病院に勤務している中田健医師は、在学中一切動物実験を行わずに代替法で学習し単位を取得した。
 中田医師から寄せられた大学時代の体験談を以下原文のまま掲載する。

 「医学生時代、あるきっかけから動物実験に疑問を持ち始めました。特に基礎系の学生実習は、毎年同じ内容をプログラムに沿って行い、単位を取るためにこなすだけで、尊い生命の残酷な浪費ではないかと思わずにはいられませんでした。ともかくも、自分だけは手を下したくないと思い、なんとか動物を扱う実習には参加せずに済まそうと試みました。
 動物を扱う実習を行う教科は、遺伝学、生理学、病理学、そして細菌学でした。まず遺伝学の授業で実習の説明があった際に、勇気を振り絞って手を挙げ、自分は信条として動物実験を受け入れられないので参加したくない旨を、教官やクラスメートの皆を前にして発言しました。さらに、代替としてレポートなど別の課題を与えてくれるようお願いしました。クラスはざわめき、教官もこのような学生は初めてだったようで、少々驚いていましたが、後で個人的に話し合いましょうとのことでその場は終わりました。結局、後で教授と話をし、動物を扱う実習の時は、図書館で自習していればよいということになりました。これをきっかけに、クラスメートの何人かにも自分の気持ちを話し、特に実習で同じ班になる人たちには迷惑をかけることになるので、理解を求めました。僕のように行動を起こすに至らなくとも、同じような疑問を感じている人たちもいるということがわかり、なんだか安心しました。クラスのみんなが僕のスタンスを知つてくれたことと、教授会でも話題にのぼり、他の教授方も僕のような学生の存在を認識してくれたことで、この後の行動がしやすくなりました。
 生理学、薬理学では、ます教授宛に短い手紙を書き、その後教授室を訪れて話をしました。教授は若く、アメリカなどでの研究経験がある方も多いので、西洋での動物実験に対する厳しい批判などもご存じで、僕が何も説明する必要はありませんでした。ただ、実習は小グループで行われ、教官が毎回違うので、その都度別の課題を与えていただくということになりました。
 細菌学の実験は、確かクラス全員の前でのデモンストレーションという形だったので、そのままサボタージュさせてもらい、感想を書く紙に自分の思いを綴りました。
 臨床に進んでからの実習では、もちろん実際に患者さんを相手にするものでしたので、動物実験はありませんでした。
 というふうにして、何とか動物実験をせずに医学部を卒業し、医者になることができました。動物実験に露骨に反対を表明して実習をボイコットしたのではなく、ずるいようですが、うまく立ち振る舞って何とか自分だけは動物実験を回避したのが良かったのではないかと思います。確かに、僕のやり方は大変消極的で、医学部における動物実験の現状を変えるものではありません。しかし、教官やクラスメートの皆に、動物実験に疑問を持つ医学生もいて、これから将釆増えて<る可能性があることを知ってもらうことができたこと、そして何よりも、僕白身が動物実験をしなくて済んだということで、充分意味があったと思っています。」
 
 このように、日本国内でも、大学の実習において動物を傷付けたり殺したりすることに疑問を持つ学生、代替法を用いる実習を要望する学生は、実際に存在しているのである。

 ただし、社会的な背景や大学の体制、あるいは国民性の違いなどにより、日本では、学生が内部で声を挙げることは、海外特に欧米に比較し、困難であることが考えられる。

 動物実験反対運動が日本において展開されるようになって、まだ10年余りである。またAnimal Rightsの思想についても、『動物の権利』(ピーター・シンガー編)『動物の解放』(ピーター・シンガー著)の二冊の本が、戸田清氏(長崎大学環境社会学助教授)によって80年代後半翻訳され紹介されたが、未だAnimal Rightsという言葉は一般化するに至らない。"権利"という概念自体、歴史的に見ても、日本人には馴染みの薄いもので、定着しがたい傾向にあると思われる。
 また、日本において、実験動物の扱いに関与する公的規制は、欧米に比較すると著しく弱い感がある。近年、「動物の保護及び管理に関する法律」(昭和48年制定)の改正を求める声が強まり、多数の動物保護関連団体や専門家によりその改正案が検討されてきたが、結果的に実験動物の保護に関する項目は削除されたと聞く。
経済的にも科学技術面においても"先進国"と呼ばれている日本ではあるが、「動物への配慮」という観点からみると、やはり全体的に遅れていると言わざるを得ない。今日の国際社会において、先進国内で日本だけが「実験動物の福祉・倫理」に関する公的規制が弱いという状況は、できるだけ早急に見直されなくてはいけないと思われる。

今後の展望について

 欧米において、教育における動物使用が論議を呼び、代替法の導入が進んだのは、1980年代後半からの10年間であった。
 1993年時において、ペンシルバニア大学の獣医学教育では、「動物を傷付けたり殺したりする実習」を必修科目から一切除外しているが、1987年時、同校では2人の獣医学生(Gloria BinkowskiとEric Dundyer)が、犬を犠牲にするラボを拒否し外科学実習の単位を落としている。(その後、Gloria BinkowskiとEric Dundyerは大学側を相手に訴訟を起こして勝ち、結局単位が認定されて卒業し、現在は獣医師として活躍している。)このように、僅か数年の間に同校の教育(実習)カリキュラムも大学側の姿勢も大きく変わっているのである。
 他大学或いは他の国の例を見ても、動物を犠牲にする実習項目の削除、それに替わる代替法の導入は顕著である。そして、この状況(alternative実習の台頭)に関しては、もはや "後退" することはあり得ないと断言してよい。
 このような短期間で代替法が教育現場に浸透し定着したことについては、その倫理性・有効性・必要性が学生・教育者両サイドにおいて認識され、そして代替法の研究開発が進展したことにより、alternative実習が可能となったからであると考えられる。また、国や立場を超えての協力体制が確立したこと、外圧ではなく内部からの改革であることなどの positive で creative な面が評価され、多くの人々に受け入れられたことも大きい。
 今後、alternative実習の普及は、学生・教師への啓蒙活動、関連法規を制定・整備するためのロビー活動などを通して、より図られていくことになるであろうと思われる。また、より良質の教育に向けて、既存の代替法の改善・改良、新しい代替法の研究開発が望まれ、進展していくことが予想される。
 欧米における代替法の台頭は、教育分野に限局したものではなく、一般市民から支持を得た社会的コンセンサスとなりつつある。日本においても、このような国際的な潮流が理解され、現実に実践されていくことを期待したい。

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謝辞

稿を終えるにあたり、御指導、御校閲賜りました麻布大学実験動物学研究室の二宮博義教授、御助言賜りました同研究室の猪股智夫助教授に深く感謝の意を表しますとともに厚く御礼申し上げます。

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