六ヶ所村から六ラプ、
そしてNO NUKES FESTA2009へ

PEACELANDのYAMさんに聞く

sakino



 青森県六ヶ所村。行程中重大なガラス固化トラブル、そして本当にこのエネルギー政策に疑問はないの?!というSTOP!が歯止めをかけている。自分で考え行動する個性的な表現がつながりあう新しいNO NUKESの大きな潮流。活発に市民活動相互がリンクする中、八戸のYAMなる人物に皆さんどこかで会っていると思う。虹色で優しい線、PEACE LANDから発信される絵解きの再処理システムはとってもわかりやすく、文章ではとぼけた口調でスカッ!と辛辣に語る…なんだか気になって来ていた。夏になる頃その人がNO NUKES FESTA2009 の実行委員会でちょっと前の席に座っていた! 横向きに座ると足先だけ見える。銀色のスニーカーだった。履き込んでいぶし銀だ!「彼面白いよ!」と取材を薦められ…さっそくお話を聞くことが出来た。(そういえばシルバーロングヘアーだ)

 

Q1 今日はよろしくお願いします。いつ、どうして、八戸に住むようになったのですか? また、どんなこども時代を過ごしたのかをざっとお願いします。

● じゃあまずはこれまでのいろいろを。僕は生まれは横浜、育ちは平塚。子どものころは1人で絵を描いたり、自転車のっていろんなとこへ行ったり、わりと1人でいることが多かったけど、近所の子たちと子供花壇や子供新聞作ったりもしてた。けっこう妄想好きだったな〜。
 で、小田原の方にある高校のデザイン科に通ったあと東京の服飾の学校へ、半年で赤坂にできたGRASS、当時尖端だったいわゆるヒッピー・ファッションのショップでスタッフとして働かないかって誘われて、そこでイカレタ服を作っていました。その後友人3人と青山で3 1/3(サンカサンブンノイチ)っていう一点物やオーダーの店を始めたんです。フラワー・チルドレン〜サイケデリック〜ロンドン・ポップっていうきらびやかな時代だよね。ちょうどその頃からマンション・メーカー、今でいえばインディーな服屋がどんどんできてきて、で、ミュージック・シーンはそのあとパンク・ロックの登場。僕は渋谷のファイヤー・ストリートで仲間と一緒にHELLOっていう店を始めた。ず〜っと服関係の仕事、っていうよりぜんぜん仕事っていう感覚じゃなかったけどね。で、90年代頃から東京がおもしろくなくなっていって、今のパートナーが八戸で服屋やっていたんで、そこ手伝おうかなって、18年くらい前に八戸に移住しました。

Q2 六ヶ所村の核リサイクル工場問題は、どんなきっかけで?

● 八戸に来て、はじめは六ヶ所のことなんか全然知りませんでした。車の免許を取ったのでいろんな所へ出かけ、特に下北半島が好きで、尻屋崎の寒立馬とか。途中六ヶ所のあたりの道がけっこう工事をしてて、なんだろうな〜って思っていたら、原子力関係の施設が出来るって知ったんです。でもどんな施設かも知りませんでした。で、今から14〜5年くらい前青森市で反核の集会があるっていうのを何かで見て行ったんですが何だか場違いでなじめなかった。
 それでも六ヶ所のことは気にはかかっていて、そしたら01年にグリーンピース・ジャパンが、フランスのラ・アーグ周辺のお母さんたちが作る「フランスの怒れる母たち」を呼んで全国で講演会を開き、八戸でもその講演会があったんです。そこではじめて再処理工場っていうものを知り、それがあの六ヶ所に作られているものと同じだっていうことを知ったんです。その講演会のあと八戸での講演会を主催した方たちと一緒に再処理工場に反対する会を作ったんですが、反核燃運動の方達の中僕がただ1人新米で。新しい会は新しい人に代表になってもらおうということで、よくわからないうちに共同代表になっちゃったんです。
 02年頃、その会で「下北半島ツアー」をしました。大間原発予定地でただ1人土地を売らずに反対していた熊谷あさ子さんのお話を聞いたり、東通村原発のPRセンターや六ヶ所の原燃PRセンターを、2日間かけて回ったんです。1番強烈だったのが06年に亡くなった熊谷あさ子さんの話。それまでも原子力関係の土地の買収とか、なんだかいろいろ汚いことが行われているってことは聞いてはいたけど、あさ子さんの話はそれを現実に受けた人の話で、もう国策と言いながらやっていることは暴力団ややくざの様な手口で、いや、もしかしたらもっと卑劣かも、で、もう黙っていられなくなって、それから夢中で原発のこと再処理のこと、核燃サイクルのことを調べ始めました。

Q3 六ヶ所村ラプソディー、鎌仲ひとみ監督との出会いを聞かせていただけますか?

● 何だか不思議な出会い…僕が勝手にそう思っているだけなのかもしれないけど。NHKで「エンデの遺言」を観てそれがすごく印象に残っていたとこへ知り合いが八戸で「ヒバクシャ」の上映会をするという。ちょうどそのころPEACE LAND pressの初期版制作中で、上映会のお知らせを載せるために詳細を聞きにいったんです。すると両方とも鎌仲さんの作品だと知って驚いて。上映会の当日はじめて鎌仲さんに会ったんです。初対面なんだけど何だかずっと前から知っている人のようで、不思議な感じでした。上映会のあとの懇親会で「鎌仲さん、今度は六ヶ所の映画を作って下さい」って言ったら「うん」とは言ったんだけど、それがあーいうふうに実現するなんて!!

Q4 六ヶ所村ラプソディでYAMさんが戸別のチラシ配りをしている姿が写ってる けど、そういうことをずっとやってるのですか?映画六ラプに出ることになったあたり の話をもうすこし。

● あの頃ちょうどウラン試験が始まる時で、原燃や青森県が説明会を頻繁に開いていた。でも会場へ行ってもほとんどが動員されてきた事業者関係、県職員、呼ばれてきましたよ〜って感じのおばちゃんたちとかで、もっと普通の人たちが来てほしくて、無我夢中って感じでした。八戸市内でも1人でPEACE LAND pressを配ってたけど…この2〜3年ちょっと遠ざかっちゃっているな。っていうか街に人がいなくなっちゃったってこともある。地方都市の問題だよね。大きなショッピング・センターの進出とか電気屋もラーメン屋もパチンコ屋も中央資本だもんね。
 六ラプ出演のきっかけは、04年に国際平和巡礼があったじゃないですか。その頃から鎌仲さんが六ヶ所村へ来るようになって、でもその時はカメラも持っていなかったんですよ。で、再処理工場ではウラン試験が始まろうとしていて、僕はもうここでなんかビシッと意思表示しなくちゃと思い、「県庁前でハンストをやります」って賛同人を募ったら、花とハーブの里の菊川さんと定岳さんが一緒にやろうってことになって、鎌仲さんもハンストの様子を撮影するよ〜ってなった。でも全然身構えさせない。ホント鎌仲さん素晴らしいよね。僕は鎌仲さんのおかげでいろんなことを知ったし、いろんな転機に必ず登場するんです。

Q5 <ピースランド>について、絵はいつ頃から描いてるんですか?ふだんはどんな生活?

● 再処理に反対する会でまず最初に、それまでの「反核燃運動」とは全く別の人達にこの事を知らせる事をやろうと思って。それはわかりやすく若い人達も興味を持つようなフリー・ペーパーだ!って事でA4版の上質紙に輪転機で印刷したものを作ったんです。それが「PEACE LAND press」で、その頃は1人で県庁へ申し入れにも行ってました。その後もっと自由に動く為に会を離れ1人でPEACE LANDを始めたんです。絵を描くのは子供の頃からだけど、僕は物事をぎゅーっと追求していくタイプではないんで、まあ他のこともそうだけど、けっこういいかげんなんでしょうね。ふだんは、パートナーが服屋をやっているんで、そこのポストカードやカレンダーを作ったり、お店でかけるための音楽をミックスしてCDを作ったり。その他はほとんどPEACE LANDの事をやっています。じゃあPEACE LANDで何やってんの?ってなるんだけど、僕にしたらもうすべてがPEACE LANDで、全部僕がやらなきゃいけないことだと思っているんです。まあでも、こうやって好きなことをやっていられるのも彼女のおかげですけど・・・。

Q6 全国の原発現地含め100を越える市民団体が賛同して「NO NUKES FESTA2009」がいよいよ行われます。開催に至るプロセスを教えて下さい。どんなフェスになるか…楽しみです、YAMさんはバンドで出演なんですね!

● まあ自然に来ちゃったって感じなんだけど。はじめはサヨコオトナラのOtoさんが“月見ル君想フ”でやった「STOP ROKKASHO」のイヴェントに参加したあたりからかな。そこでSTOP ROKKASHOで動いている首都圏の人たちと知り合って、バンドとしてNO NUKES MORE HEARTSのイヴェントにも呼んでもらったりして。そういうネットワークの中に、今まで運動を続けてこられた人たちもつながっていって、すごく大きな流れが出来てきたってことだと思います。これも鎌仲さんの「六ヶ所村ラプソディー」があったからでしょうね。
 今回のNO NUKES FESTAでは首都圏のBee's cafeチームや6ラプ市民サミット・チーム、 PEACE LANDなどが一緒になって「NO NUKES CAFE」なるオープン・カフェを明治公園に出現させようと企てているんです。ここで食事をしたりコーヒーを飲んだりしながら、マジで楽しく、楽しくマジにライヴやったり、トークが出来ればいいな。僕らはバンドで出ます。すごく長い名前なんだけど、zodiac nova, pop-machine & contemporary systemっていいます。2人組で最近はライヴとトークをあわせ、曲も「核に注意しろ!」とか「アオモリノヒミツ」宮沢賢治の詩に曲をつけた「政治家」とか、辰巳芳子さんの詩に曲をつけた「命のスープ」とか、ドラエモンが反核だったらっていう「近未来的猫型ロボット」とかやりながら、再処理、青森や東北のこと、命、食のことなんかを話していくっていう。自分でいうのもなんだけど、けっこう受けるし盛り上がる。そんなライヴをはさんで会場の人たちと参加型のトーク・タイムを設けるとか、とにかく次につなげることが出来るイヴェントにしたいんです。だからあまりマニアックな話にならず、かといって軽いだけじゃないよ、みたいなね。
 今、この国は情報がすごくかたよっているってゆうか、制限されちゃっていると思うのね。この再処理の問題だって、青森の地方紙には1面にバーンと取り上げられても、他じゃ小さくだったり、全然記事にもならなかったりする。これは青森という日本の片隅で行われていることだけど、国策でありエネルギーというこの国にとっての重要課題。なのにTVなんか知らん顔でしょ。でもこういうイヴェントが日本の各地で開かれて集まった人たちが面と向って情報を共有できる。1人よがりの情報じゃなくて、みんながそれぞれの情報を持ち寄って、その中にある大事なところを探り出す、そういう作業も大切だと思うのね。だってすべての情報が正しいってわけじゃないんだもん。こういうイヴェントはそれが出来る場所だと思うんで、ぜひ参加して下さい!

Q7 六ヶ所村と脱原発、自然エネルギーへのシフトについて、特に今お話したいことを自由にお願いします。

● 六ヶ所村の再処理工場は今にっちもさっちも行かないようなひどい状態です。こうやって再処理が進まないと使用済み核燃料の剪断が止まって、核燃料貯蔵プールが空かない。日本中の原発から使用済みの核燃料が持って来れなくなるでしょ。今日本の原発で使用済み核燃料の貯蔵量が70%位の所が8カ所近くあるので、そこが一杯になると原発を止めなきゃいけなくなってくる。ひどい話だよね。最後のゴミのところを考えずに原子力なんて始めちゃった。原子力政策自体が揺らいじゃってるって言ってもいいだろうね。
 現に来年策定するはずだった原子力政策大綱が先延ばしになった。このまま行っても原子力は破綻するんだろうけど、1日でも早くその日を迎えられるように、僕らが道しるべを作るべき時が来たって感じがするんだよな。だってもう再生可能なエネルギーへシフトしていくしかないでしょ。それでも原子力派は最後まであがくと思うよ。だから僕らがなぜ反対するかっていうのを伝えていく・・・出来るだけたくさんの人たちにね。
 今ガラス固化製造が止まっているんで一安心だけど、実は再処理工場はガラス固化体が作れないから高レベル放射性廃液っていう恐ろしく放射能濃度の高い液体が240m 位たまっているのね。これは15時間くらい冷却できない状態が続くと沸騰して爆発する可能性もあるのね。この国は一番ヤバイゴミを抱え込んじゃったよね。でも誰も責めることは出来ない。ある意味国民全体の意志でもあったわけで、やっぱりみんなの意志をどこに向けるかしかないよね。で、持続可能へ進路をとれ!だね。

Q8 ありがとうございました。最後にもうちょっと音楽のこと聞かせて下さい。

● 小学生の頃は「世界の民謡」って本があって、そんな歌よく歌ってた。中学生の時にBeatlesを聞いたのが衝撃的で、ギターを買って弾きながら歌うようになって…それで23歳の時にものすごいギタリストに出会ってね。ブラジルや南米の音楽を聴くようになったのはその人の影響。本格的にバンドをやりだしたのは八戸にきてから…そういう意味で僕はいろんなことに呼ばれてこの地へ来たって感じもするんです。まず八戸でサンバ・チームを作ったのがけっこうセンセーショナルで、30人位いて市や県のイヴェントに参加したり、危うく原燃提供のTV番組にまで引っ張りだされそうになったり。今は2人組のユニット、例の長い名前の<ポップ・マシン>と、即興爆音バンドの<魔太郎定食>をやっています。メンバーは他に仕事があって、僕も他のイヴェントで忙しいけど…9月からけっこうライヴをやっていく予定です。



★PEACE LAND
yam@hi-net.ne.jp
http://peaceland.jp
http://p-sratv.peaceland.jp/
*free paper PEACE LAND
 みんなでやるにはどうすればいいんだろう?楽しく反核<Voices from Aomori>最新号は地元八戸でこの7月に国宝に指定された縄文(風張)遺跡の「合掌土偶」。計り知れない魅力を秘めたその文化に心をはせ、そこから見た六ヶ所村再処理工場の相次ぐ不具合と具体的隠蔽。なんともお粗末な現代文明とやらではある。放射能だけではなく食品汚染についても言及し、植物油は「低温圧搾/コールドプレス」表示に限るとの報告です。DVD「大問題ネットワーク」ネット販売中(沖縄のKEN子さん呼びかけ/ラビラビ、カクマクシャカ他)
*free paper 6paper
 6人の女の子達が六ヶ所村を知り集まり…6peaceがスタートする過程から描かれている。シンプルナチュラルなデザイン・編集、旅と出逢い、情報が一冊になった。きっかけも作ったCANDLE JUNEさんが発行。
*月刊Actio(送料無料500+税)FAX;048-445-8943 http://www.actio.gr.jp/ E-mail; mail@adtio.gr.jp
半年¥3000/6冊 1年¥6000/12冊 ふろむあーす、ナワプラサードなど全国販売店にて。 No.9は「日本を変える選挙の夏」若者が当たり前に生活していける社会 本田由紀他。YAMさんはコラム<東北よ!箍(たが)をはずせ!!>連載。

NO NUKES FESTA2009

〜放射能を出さないエネルギーへ〜

http://www.nonukesfesta2009.com/

日時 : 2009年10月3日(土) 入場無料  
    開場 : 10 : 00 開会 : 11 : 00 パレード出発 : 15 : 30
会場 : 明治公園(新宿区霞岳町)
   *JR「千駄ヶ谷」駅下車 徒歩3分 
   *東京メトロ・大江戸線「国立競技場」駅(E25出口)下車 徒歩2分
内容 :ステージ/ブース出店/パレード 等
*10月2日(金)・4日(日)にも関連イベントあり。広瀬隆、冨田貴文、寿 and so on,,,
主催 : 10.3 NO NUKES FESTA 2009
 全国実行委員会