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Terro in USA

報告:「止むことのない反戦・平和の声」(10月16日)


日米環境活動支援センター
宮崎さゆり

10月7日、アフガニスタンへの空爆が始った。9月11日以来、ブッシュ大統領が先
頭に立って醸成してきたテロとの戦争ムードによって国民的結束が高まり、それがそ
のまま米国民のアフガニスタンへの軍事行動支持へと繋がっていった。このような状
況の中で、軍事行動へ抗議の声を上げる人々は肩身が狭い思いをしているのであろう
か?

● 興味ある世論調査結果

それに答えるために、米国の世論調査グループ「ピュー・リサーチ・センター」
(Pew Research Center)が10月4日に公表した世論調査結果の中に、米国民が意見の
相異に寛大であることを示す判明事実があったのでそれを紹介しておきたい。

なお、この世論調査は、10月1日から3日にかけて、米国内の成人1001人を対象に
電話による聞き取り調査によって行われたものである。また同センターは企業および
政府から完全に独立した非営利の民間団体であり、世論調査を通じてメディアと公共
政策に関する討論の場を形成することを目的として、重要な情報を無料で政治指導
者、ジャーナリスト、学者およびNGOに提供している団体であることも付け加えて
おきたい。

**ピュー・リサーチ・センターによる世論調査結果(一部紹介)**

(1)米国民は圧倒的に軍事力行使を支持しているが、それと同時に意見を異にする
人々の声を聞くことに対しても好意的な感情を抱いている。(調査対象者の内)71%
の人々が軍事行動に対する平和的な抗議行動を認めるべきだとしており、さらに75%
の人々がテロ攻撃は米国の政策に責任があるとする意見をメディアで取り上げること
を認めるべきであるとしている。

(2)多くの米国人が意見の違いに寛容であるだけでなく、多数の人はテロリズムに
対する戦いについて軍事行動ではない選択肢に関しても進んで聞こうとしている。35
%の人々が軍事力行使の他にテロリズムを止める方法についての議論が少なすぎると
考えており、また反対に11%の人々がこの点に関する議論は十分されたとしている。

(3)調査対象となった全てのグループ全体にわたって、現在の政策に同意しない人
の表現の自由を認める人々が多数派となっているが、調査対象グループによってその
数値は変化している。例えば、戦争反対の抗議行動を制限すべきとする人々は、大卒
者のグループでは15%であるのに対して、高卒、或いはそれ以下の学歴のグループで
は30%となっている。また高齢者グループ(65歳以上)も市民の自由に関する問題に
ついてその他のグループと意見が分かれており、65歳より若いグループでは79%の
人々が米国の外交政策への批判をメディアが取り上げることを容認しているのに対し
て、高齢者グループは58%となっている。

(4)共和党員と民主党員、双方とも多数意見に賛成しない人々の表現の自由を支持
しているが、テロリズムに対する戦いについて軍事行動ではない選択肢に関して進ん
で聞こうとする人々の数に際立ったイデオロギーの分離がある。リベラルな民主党員
の内、54%の人々が軍事力行使の他にテロリズムを止める方法についての議論が少な
すぎると考えているのに対して、保守的な共和党員においては30%となっている。ま
た、軍事行動ではなくテロリズムの危機を乗り越える解決策に関する討論に一番興味
を抱いているのは、大学で教育を受けている青年達である。

以上の(1)〜(4)の判明事実を総合すると、9月11日以後、急速に愛国心が高
まった米国人であっても、国家の方針への反対意見も容認している姿勢があきらかと
なってくる。またそれを裏付けるものとして、9月29日に米国各地で行われた大規模
な反戦デモの直後に、NBCテレビ局が実施した世論調査では、「デモ参加者を非愛国
者だと思うか?」という質問にNOと答えた人が50%であったことが上げられる。

● 国家の非常時における言論の自由

最近、e-メールで次のような質問を受け取った:「アメリカ(特に東海岸)で
は、報復戦争反対を口にすると、『非国民』という言葉を浴びせられたり、『舌禍』
でキャスターが番組を降ろされるなど、報復に向けての気運一色に染まっていってい
るというような現地報告が新聞に載っていたが、現状はどうなのか?」

この質問は、新聞に掲載されていた現地報告の内容とワシントンD.C.での大規模
な反戦デモについての私の報告とがしっくり一致しなかったので、現状確認のために
送られてきたものだ。私は返信で、指摘されたことが事実であっても、それが米国の
すべてではないと答えた。米国にはいろんな考えの人々がいるので、中には「非国
民」(というよりも「非愛国者」)といった言葉を発する人もいるだろう。また、
ABCテレビ局の深夜番組「Politically Incorrect」のホストでコメディアンのビル・
マー氏が9月17日の番組で米軍を批判したことが抗議の声を呼び、さらにその番組の
スポンサーから複数の会社が降りたことは事実である。また同氏は、ABCのオフィ
シャル・サイトに謝罪声明を発表している。

特に「コーポレイト・メディア」(Corporate Media)と呼ばれる主要テレビ局
(米三大ネット局)は、どの局も大企業に所有されており(例えばABCはディズニー
に所有されている)、さらにその重役会には石油企業の代表が入っているということ
である。またそれらの石油企業の元取締役には、ブッシュ政権を支える政府高官の名
前が上がっているので、主要テレビ局が反戦活動と結びつく発言を抑圧し、戦争ムー
ドを積極的に応援する役目を担っていることは明らかだ。テレビ局としては経済的な
後ろ盾となっている大企業や番組のスポンサーの意向に添う番組を作らざるを得ない
ので、今回のような国家の非常時にはコーポレイト・メディアに言論の自由はあまり
期待できないと思う。

しかし、連邦政府がその言論の自由を制限するとなるとこれは大問題である。前
述のビル・マー氏の米軍批判の発言を指して、フライシャー大統領報道官は「言葉に
気をつけるべきだ。そういう発言をする時ではない」と発言したという。報道官の発
言を英語でそのまま書くと次ぎのようになる。“The reminder is to all
Americans, that they need to watch what they say, watch what they do, and
this is not a good time for remarks like that.”(ホワイト・ハウスの公式記録
からは“watch what they say”が削除されているということである。)

たいへん問題のある発言と考えられたのは、公式記録からそれが削除されたこと
からも明白である。戦争という名の下で、臨時に大幅な権力が与えられた大統領の報
道官を勤めている者が、米国憲法修正第1条で認められている言論の自由を制限する
発言をしたことは、ブッシュ政権の危さを暴露しているのではないだろうか。

フライシャー大統領報道官の発言に対して、すぐに批判の声を大新聞に載せたの
はニューヨーク・タイムズ紙の代表的なコラムニストで、1999年にピューリッツアー
賞を受賞(批評部門)しているモーリン・ダウド女史である。彼女は9月30日のコラ
ム(タイトル:“We Love the Liberties They Hate”)で大統領報道官の発言を激
しく批判し「私たちの国が攻撃目標になり、誰かがホワイト・ハウスに異議を申し立
てる勇気を持っている時に、フライシャー氏は私たちに攻撃的で懲罰的な影響を及ぼ
している。特に私たちが標的になっている時こを思想の対立を抑圧してはならない。
コラムニストとコメディアンの職が意見の相異によって危うくなる風潮こそ恐れるべ
きである」と書いている。

米軍を批判した番組ホストのコメディアンが視聴者から非難を受け、スポンサー
がその番組から降りる。そして大統領報道官が言論の自由を制限する発言をするが、
その問題の発言が公式記録から削除される。さらに、それと同時にコラムニストが言
論の自由を制限することへの批判記事を書き、それが大新聞に掲載される。この一連
の出来事のつながりが、この国の非常時における言論の自由とその限界をよく表わし
ているように思われる。

● 独立メディアの活躍

日ごろから大企業に所有されているメディアの報道に強い不満を感じている米国
市民は、より民主的な報道機関と考えられるケーブル・テレビ局、独立ラジオ局、さ
らにインターネット上の独立メディアから多くの情報を得ており、また情報を得るだ
けでなく、自ら進んでそれらの報道機関に話題や意見を提供するという情報の相互交
流が盛んに行われている。そしてあの9月11日以降、ますますその民主的な報道機関
が重要視されて来ているようだ。

そのような報道機関として有名なのが「C-SPAN」という非営利の公共ケーブル・
テレビ局(ラジオ番組もある)である。「C-SPAN」は1979年にケーブル・テレビ事業
によって創設されており、主にケーブル・テレビの視聴料で運営されているというこ
とだ。いつも議会が開催されている時にはライブでそれを放送しているが、9月29日
のワシントンD.C.での反戦デモの時には、集会場となったフリーダム広場にパラボラ
・アンテナの大型車両を横づけして、反戦・反人種差別の集会でのスピーチをすべて
放送した。現在はその三時間分のビデオがC-SPANのウェブ・サイトを通して見ること
ができる。

また、1999年のシアトルでのWTO会議を決裂させた「シアトルの闘い」の時に、草
の根市民による報道組織として活躍した「インデベンデント・メデイア・センター」
(IMC: Independent Media Center)も、インターネットを通してかなり充実した情
報発信源となっている。民主的な報道を欲している市民がIMCのサイトにアクセスす
ると、ボランタリーの情報提供者による写真、ビデオ、音声、活字などから、現在の
ホットな情報が得られ、さらにコメント等をIMCのサイトに掲載することが出来るの
である。さらにIMCは世界各地45ヶ所以上の地元のIMCとリンクしているので、世界各
地の社会、経済、政治、環境問題で活動している人々がここから自分達の声を外へと
発信することができるのである。それはまさに世界市民による世界市民のための全く
新しい民主的メディアと呼ぶにふさわしいものであろう。

さらに、民主的な報道機関として一般的に親しまれているのは、FMナショナル・
パブリック・ラジオ(NPR)であろうか。スタジオの司会者が各界の専門家の話を聞
いて、それについて電話で市民の意見や質問を聞く番組などは、この時期にはかなり
興味のある自由で多角的な意見を聞くことができる情報源となっている。インター
ネットと違って、ラジオは台所に立っていても、ソファに横になっていても話しを聞
いて情報を得ることができるので、もっと活用したいものである。

●止められぬ抗議の声

昨日、仕事の帰りにワシントンDCの地下鉄に乗り、空いている席に座ったら、自
分の目の前にサーモンピンクのツーピースを着た背の高い金髪の女性が立っているの
に気付いた。彼女の黒い肩掛け鞄には、なんと、私のバッジの五倍近くある直径およ
そ10cmの大きなバッジが付いていたのだ。そこには「Operation Enduring Freedom」
(作戦「不朽の自由」)と書かれ、さらに星条旗も浮き出ていた。それを見て私も
ぐっと胸を張って反戦のバッジ「War is not the ANSWER」を見せた。

それでは再び、ここで最初の問いに戻ってみよう。アフガニスタンへの軍事行動
は始った状況の中で、それに抗議の声をる人々は肩身の狭い思いをしているのであろ
うか?その答えは「NO」である。

一般的に米国人の性質として「熱し易く冷め易い」「気が短くて我慢強くない」
「早く結果を知りたがる」ということが指摘されている。だから、同時多発テロの圧
倒的な残虐さを見た米国人が愛国心に燃えて、テロ撲滅のための軍事行動を支持して
いる状態がどれだけ維持するか、はっきり言って誰も分からない。だからこそブッ
シュ大統領は、何度も「これは過去の戦争とは違う戦争だ。長い戦いになる。目に見
える成果もあれば、見えない成果もある。忍耐が必要だ」と強調し、国民の忍耐強さ
を訴えているということだ。

となると、現在米国民の9割近くが報復戦争を支持している状況が反転して、9割
以上の米国民が反戦を言い出す時が来るかもしれない。その時のためにも、ここで
今、報復戦争への抗議の声と平和活動を止めるわけにはいかないのだ。なぜなら、平
和を求める忍耐強い市民の声には、状況が反転する底力を十分に秘めているからであ
る。大きなバッジの彼女が地下鉄を降りてから私はもう一度胸を張った。

◆参考サイト:
・ Pew Research Center http://www.people-press.org/
ここで紹介した世論調査の詳細情報「More Important Findings」
http://www.people-press.org/oct01mor.htm
・ C-SPAN http://www.c-span.org
・ Independent Media Center http://www.indymedia.org/
大メディアと石油大企業の関連についての詳細情報「Big Media/Big Oil Links」
http://nyc.indymedia.org/front.php3?article_id=10650&group=webcast

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