カズからの手紙

〈その1〉自宅出産にて3男を無事出産

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結果、3人の息子を皆、父親である自分自身が取り上げるというありがたい体験をさせてもらいました。
長男の天地(アマチ)と次男の八星(ハッセイ)は前のパートナーだった有里との間に、北カリフォルニアの山中の自宅で産まれました。3男の一新(イッシン)は昨年再婚した新しいパートナーの史江(フミエ)との間に、長野県の入笠山麓にある廃村の芝平(シピラ)に自身で再建した築百年の自宅(標高1200m)にて、誰も立ち合うことなく、夫婦だけの静かで平和なお産により無事誕生しました。

病院出産のあり方に納得がいかないという事が、自宅出産を選んだ大きな要因ではありますが、もう一つ言えば、産まれて来ようとする命の必然を本当に信じることができるからこそ、“もし、何かあった時にはどうしよう?”という不安を乗り越えて、自分たちの本能と感性を信じた、自立したお産を選択することができたと思います。

右=長男の天地、左=次男の八星、中央=史江と一新(お産のまぎわに完成したこの寝室で出産した)

廃屋再建。天井に天窓を作る作業中。ネコのミユと共に。 

   

我が家で飼っている野性の日本ミツバチの巣の入った樽。この春、分蜂が楽しみだ。緑のネットはスズメバチよけ。

僕らは今この世に居るが、産まれ来ようとする魂は僕らの目には見えない、もう一つの世界から必然の目的を持って、また天の御心に添った天命を持って霊的な導きの中でこの世にやってくる。私は宗教家ではなく、一人のミュージシャンとして、また一人の生活者として、30年近く野性と触れあう暮らしを選んできたことなどから、そのことを学んだ。そして特にスピリチュアルなお産の体験から霊的な導きを得たことや、育児のプロセスの中からそのことを学んだ。

天の御心に添った事を引き受けた場合には、奇跡が起こってでも目的は達成されるものだし、また逆の場合には一見どんなに簡単なことでもスムーズに進まないものである。そしてそれを引き受ける側の選択と、やって来ようとする側の選択は、結果一つのものとなる。こういう側面からも我々がワンネスの中に活かされていることを感じるのですが、むしろ産まれて来ようとする側がどんなふうに産まれて来たいかという事によって、我々の方が選ばれた親として逆に動かされているような気がします。そしてそこには深い愛による導きがあると感じられます。

僕は3人の息子達が自分を親として選んで来てくれたことや、とても大切なことを、共に在る暮らしの中からたくさん教えてくれることに深く感謝したいと思います。

廃屋再建。神だな設定

廃屋再建。次男の八星と共に窓作り

生後1ヶ月の弟・一新を抱く次男の八星

天地と八星の母である前パートナーの有里は、この廃村と街の中間にある村社会の中で暮らしていますが、ここから車で20分程のところなので、子ども達は父の家と母の家を往来している。ご存じの方も多いと思いますが、有里はシンガーとして盛んに活動している人だから、僕の活動とスケジュールが重なると子ども達に無理をさせることになるので、ここ2年くらいは僕自身の音楽活動は最低限におさえて、なるべく子ども達が安定した暮らしができるように心がけている。そんなわけもあって東京以北へはもう2年以上歌いに行ってないので、ファンの皆さんには申し訳ない。それぞれに新たなパートナーを得て、経済的にも自立しあいながら、お互いのスケジュールがなるべく重ならないよう連絡を取り合うのだが、この狭い日本のネットワークの中でコンサートの主宰者も時に重複したりする事もあり、スケジュール調整は自分を優先して行こうとすると難しい。

息子達にとっても、この山の中で父と薪取りをしたり畑をしたり、廃屋の再建を手伝ったり、また時には学校を休んで共に旅をしたりすることは望ましい日常だと思うし、彼らもそれを楽しんでいる。
特に今回、弟が産まれたことに関しては、2人共とてもハッピーで、なぜか妹ではなく弟であることを望んでいたし、そのとうりになって喜んで良く世話をしてくれている。一新が泣くとどちらかが行ってそっと抱き上げてくれるシーンは何ともほほえましい。
2才の時に弟の八星が産まれ、母離れして父さん子になった天地は、母とはまるでキャラクターの違う新パートナーの史江と大の仲良しだ。今バスケットボールに夢中の天地は、元バスケ部だった史江とボールでたわむれている。そして良く彼女に甘える。

八星は“この家族は本当に仲良しで良いね。僕はここに居ると淋しさを感じることがないんだ”と言ってくれる。そして史江に何でも良く話をする。学校のこと、母のこと、旅のこと‥‥etc.。また最近ではゲーム機やカードで遊ぶよりも、自分でスゴロクなどのゲームや新たな遊びを創造して行くことが多くなり、家族でそれを楽しむということもできて、増々ハッピーだ。本当に僕らはこの出会いによりとても幸福になりました。

自然農。枯葉、雑草と共に育つ白菜、大根

自然農。雑草と共に育つ秋野菜

史江とは昨年の2月にネパールのシバ神の音楽祭に演奏旅行に行った時にポカラの街で出会った。そして今日まですべてがとてもスムーズに運んだ。家族も友人も皆この出会いを喜び祝福してくれた。彼女がこの山にやって来て1年たったら、もう一新がやって来た。あまりのスピードに驚いたりもするが、何もかもが不思議なほどにスムーズに流れて行く。30年前に集団離村になった芝平は、シピラというアイヌ語が地名の由来だが、この山の中で人の子が産まれたのは本当に久しぶりのことだったと思う。山の精霊たちも、それはもう大喜びしていて、野性もそのことにちゃんと響いている。

2/10、真冬に信州の標高1200mの山中で、不思議なことに突然雪が雨に変わり暖かい。月は新月。そしてタカがこの家に降りたった。
天候や野性がいつもと違う形で現れた時には、常に自然が天の御心に添ったメッセージを送ってきているということを、僕は長年の山暮らしの経験から学んでいる。タカの飛来はいつもそんな風に僕らへやって来る。時には道を先導するように、頭上や側方を飛んだりすることもあるが、ネイティブ・アメリカンの智恵によれば、タカは“チャンスをつかめ”や“新しい命の誕生”のメッセージを送るとも言われている。

そしてお産の時には精霊や守護霊がたくさん応援に来ていたに違いない。僕にはアイヌの産婆術の智恵が注ぎ込まれ、その時になると本当に不思議なのだがいつも何をどうしたらよいのかということがすべて自然にわかる。そして経験豊かな産婆のような手さばきに自分自身が驚くほどだ。会陰の保護もうまくいって、母子共にダメージの無い、平和で愛に満ちた出産をすることができた。さらに母子はお産をしたその室でそのままゆっくりと産後のプロセスを迎えることができる。何とすばらしいことか。人それぞれ色々な見解や考え方があることと思うが、誰が何と言おうと、結果として3人の息子達はそれぞれにベストの状態で自立して産まれてきたのである。私は単なるサポート役だ。

これからの時代、トラウマの無い出産を目ざして産まれて来ようとする進化した魂がたくさん降りて来ることと思う。そんな流れの一つとして、僕らの体験したことをチャンスがあれば必要な人たちに新たな判断基準の材料としてお届けすることは、きっとこれから望まれて行くことかもしれません。このようにマイペースな暮らしですから、子どもらのことも考えるとあまり無理な活動はできませんが、本当にご縁のある方のところにはきっとこんな体験のより深い話や、そういう暮らしから生まれた歌々をお届けできることと思います。興味のある方はどうぞ気軽にコンタクトしてください。山中の暮らしにつき、今のところE-mailはありませんから、手紙か電話、FAXによるコンタクトになります。やはり陣痛誘発剤の投与や会陰の切開など、お産の精神性を理解しない、医師の都合に合わせたお産から、子ども達はもっと守られて行くようになってくると思います。

2005.4月  LOVE 和♪

廃屋の再建も完成が近づいた。
手伝いの子どもらといろりに火を入れて暖をとる(photo by BUJU)


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