パンフレット

「いのち」と地域通貨

土 谷 龍 司


 人はなぜ、競争と支配の中で生きているんだろう、、、。
 本来、自然はその恵みを与えるだけで、人々はあるがままに自由に生きるだけで、十分に豊かであったはずなのです。交換の手段であるお金に、「利子」が仕組まれ、自然も人生も、それ自身では払い切れないほどの負債を抱え込むことになったのです。そして、欠乏という幻想の中で、その架空の不足を補うための、命がけの椅子取りゲームをしているのです。

 今、地域通貨が登場し、新しいパラダイムへ至る道具として注目されています。
 一口に地域通貨と言っても、様々なタイプと仕組みがあります。大きく分けて、紙幣やチケットを発行するものと、コンピューターまたは通帳などを使って、お互いのやり取りを記入していくという方法です。いづれもその地域通貨が単独で使用されるばかりでなく、現行の通貨と併用しながら、目的や用途に応じて使い分けることができます。そのことで、現実社会での様々な矛盾を少しでも小さくすることが出来るかもしれません。
 今回、「いのちの祭り」では、地域通貨の要素が盛り込まれた、シンプルな交換リング形式を提案します。
 まず、フォーラムをとおして、明かされていない実態経済の裏側がどうなっているのか、巨大な金融システムに潜む謎は何なのか。そして地域通貨がどういうものかを事例を交えて紹介します。
 地域通貨専門のブースでは、全国で取り組まれている地域通貨の案内と、これさえあれば、身近なネットワークの中で、すぐに交換リングが始められるスターターキットを用意しています。
 体験を希望する人々によって、実際に交換リングのシステムを共生をテーマにした「虹の村」で運用してみます。
 まず、交換のリング(輪)に加入するための手続きをします。自分の技術や能力、してあげられる情報と、援助して欲しい情報、祭りへの希望などを登録して通帳を受け取ります。これは自分と社会(祭り)との関わりを宣言することです。自分の利益を優先する考えではなく、役立ち合うという意志を確認する作業です。 
 会場では、祭りへのボランティアや、「虹の村」の村人たちの間で、生活に必要な食材の交換や、心と身体を癒すといったサービスの交換に使われます。たとえば、駐車場案内を手伝った人は、その人の通帳にプラス○○が記入され、そのパートの責任者には、マイナス○○の数字が記入されます。そしてお互いにサインを交します。もちろんパート責任者には、本部とのやり取りでプラスが支給されています。本部にたまったマイナスは、「いのちの祭り」全体の資産です。いわば宝物です。駐車場を手伝った人は、そのプラスで、炊き出しでの食事ができるでしょう。バザールやカフェでのリング参加者がいれば、代金の一部(5%とか10%)を地域通貨で支払うこともできます。

 祭りが終わるとき、プラスを多く残した人は、祭りに貢献した人です。マイナスが残った人は、祭りに感謝して終わるでしょう。
 初めは、子供だましのような、些細なことの取り引きでいいのです。その小さな取り引きを重ねていくことによって、私たちは、物やサービスを交換しているのではなく、「いのち」と「いのち」の関わりをつなぎ直していることに気付くでしょう。GIVE & TAKE という見返りを意識する関係からGIVEN & GIVE という「無条件の愛」の関係へと。私たちは勝手に生きているのではなく、宇宙によって生かされているから、その「いのち」を役立てるという互酬性の関係へと至ろうとするものです。そうして信頼の絆が強くなったとき、いつのまにか、私たちの社会は変わっているのではないでしょうか。
 環境や教育という個人では取り組み切れないと思うようなテーマでも、人々の繋がりが回復した地域では、第三の道といわれる解決法が生まれるかもしれません。
 地域通貨は、共生社会という共通の願いを実現するための道具の一つです。地域通貨を導入したからと言って、豊かな社会が実現するわけではなく、共通のビジョンがあって、始めて有効な手段となるのです。
 今後も、国民通貨の「円」は必要です。しかし、お金を払うことで、人との縁を切ってきた今までの通貨では、私たちの夢は実現できない事に気付きはじめました。生活の中に地域通貨を取り入れることによって、今までは評価されなかったものが、大切な価値をもっていることに気付くでしょう。弱者といわれる高齢者や障害をもつ人々はもちろん、地域にとっては自然も、一人ひとりの存在もあるがままの姿で、”たからもの”なのです。

 誰かの椅子を奪い合わなくても、自分自身であるというだけで、安心して座る場所は与えられているのです。二十一世紀を前にして、誰もがそのことに気付く時を向かえているように思います。



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