フォーラム報告

地域通貨と共生のコミュニティー

このフォーラムはテープ記録がとれなかったため、実際の講演記録ではありませんが、かわりにフォーラムの担当者によってまとめられた概要を掲載します。なおこの内容は担当者だった臼井さんのHPに掲載されているものと同内容です。臼井さんのページはこちらです


第一部 
「日本人の無知こそほとんど唯一の“希望”」田所康雄さん

 「お金がないと生きられない」という人類が設定した一種の決め事から、「お金だ
けでは生きられない」という宇宙のシンプルな真実へ。この意識の変革こそが、社会
を変えていきます。それには、ただ心の底から気が付くだけでいい。多くの人々がま
だその気づきを体験していない日本。それは、その分大きな変化への可能性もあると
いうことを意味しています。お金を求めて真っ正直に経済発展を遂げた日本社会。あ
る意味、ウブな国民性。人工密度も高く、情報伝達もかなり素早い。つまり、気づき
が一旦本格的に広がると、爆発的に情報が流れ、一挙に変革を遂げてしまう可能性が
あるのです。その典型的な例が明治維新。滞ったエネルギーの流れを開放して、「開
国」しましょう。自分を開く。日本を開く。世界を開く。宇宙人への仲間入りをする
時は、近づいています。狭い産道を通る時は、けっこうつらいものですが…。

5・土 「フォーラム:地域通貨と共生のコミュニティー」10:00〜22:00 at:虹の
村・シンポドーム
             10:00 
       田所 靖雄(翻訳家、『ネオ・ジパングの夜明け』著者)によって世
界経済の実態を紹介していただきました。

         

第二部 
講演会「だれでもわかる地域通貨入門」あべよしひろさん

 まずは、現在の貨幣制度に仕組まれた「利子」というトリックを体感するゲームか
ら。「いんちき銀行券千円」を一人10枚ずつ配り(融資)、一人一人好きな商売を
やっているという想定の下、取引ゲームを行います(いわゆるお店ごっこ)。時間が
きたところで、「いんちき銀行」に利子千円をつけて返済。ここで返済できない「破
産者」が出ます。2回目の取引の後では、さらに千円を付加して返済しなくてはいけ
ません。ゲームから脱落する「破産者」が増えきったところでゲームオーバー。次
に、地域通貨「レッツ」を使ったゲーム。「人のために何ができるのか」「自分は何
を望んでいるのか」を、自ら考えて記入した一覧を基に、ニーズが一致する人同士で
お互いの通帳にプラスとマイナスの数字を相談して記入します。例えば、お掃除して
ほしい人の通帳にはマイナス〇〇、お掃除してあげたい人の通帳にはプラス〇〇。取
引が成立して、「ありがとう」と握手を交わす参加者の笑顔。お金の本来の役割は、
お互いを支えあうことで人と人とをつなぐ道具です。そして、人と人のつながりの先
には、コミュニティーがあります。競争・自由・匿名性・成長・孤独などを促す「陽
経済(円やドル)」、連帯・自律・情報公開・安定などを促す「陰経済(地域通
貨)」。拡散していく経済と収縮していく経済。どちらが良い・悪いというものでは
ありません。大切なことは、この両者のバランスをとりながら、自分で意識的に貨幣
制度を選択することなのです。

地域通貨の説明を受ける参加者

    レッツゲームに和気藹々とした空気が流れていました。

利子を取られて破産した人達

       
なぜ地域通貨が必要なのか世界各地の例を紹介いただいた後 ロールプレイング風体
感ゲームを通して現在の貨幣システムの問題点を実体験しました

元来お金とは、人間が豊かに暮らすために発明されたツールであり、単なる“取り決
め”でしかありませんでした。取り決めであれば変えることも可能なのです。都合が
悪い取り決めなら変えればよいのです。現在の問題点が多くなった“取り決め”の欠
点を補完する意味で発達してきたのが地域通貨と呼ばれる新しい“取り決め”なので
す。限定した地域でしか通用しない通貨を用い、地域内でお金を循環させることに
よって、経済の安定化・活性化とはかるとともに、グローバル化する経済によって崩
壊しつつあるコミュニティを再構築するという狙いがあります。地域通貨のもう一つ
の特徴は利子のつかないお金だということです。ですから、お金本来の働き=物と
物、物とサービスの交換手段である決済機能しか持たせていないのです。  

第二部
座談会「人間中心の金融・経済システムを語る」森野栄一さん

お金が欲しい。でもお金がない。これが、お金が力(利子)を持ち始めた原因です。
日本国民全員が一度に銀行からお金を降ろしに行っても、実際にはそんな大量のお金
はどこにもありません。日本人の個人貯蓄はかなりの高額かもしれませんが、国は国
民に対してそれを帳消しにしてしまうほどの大金を借金しています。結局、私達はお
金を本当に所有してはいないのです。電子取引上の数字としてのお金。そこから1秒
毎に生み出される多額の利息にふりまわされる人間達。お金の力は止まるところを知
らず、人間の願望から生まれた貨幣システムはもう人間にはコントロールできないと
ころまで肥大化してしまいました。では、なぜ私達はそんなシステムを作ってしまっ
たのでしょうか。人間は、いつか死にます。いつまでたっても腐らず老化しないお金
に対して、人間は無意識のうちに不老不死の夢を託していたのです。自分の力を将来
にとっておくためのツールとして、老後に備えてお金を蓄えることが常識のように
なっている不安に満ちた現代社会。余剰なものや必要なものを、必要な人々へと運ぶ
道・運搬手段であったお金は、本来の役割を見失い、今は完全に滞っています。しか
も、地球や人々から多くのものを搾取しながら。私達の社会はどこに行くのでしょ
う。今こそ、原点を思い出す時なのです。

第二部
シンポジウム「実践者が語る、地域通貨の実際と展望」

「とにかく積極的に“使う”ことがおすすめですね。人にいっぱいお世話をしても
らっているマイナス長者になれるんですから。実際に地域通貨を使ってみてわかった
のは、お金を使って実は人とエネルギーを交換しているんだという感覚です。エネル
ギーの流れと共にコミュニティー全体が進化していっているのでしょう」と、ある実
践者。拍手。場を共有する人々の笑顔。「ありがとう、という思いが日常生活の中で
流れていく。それが、いいんですよね」と、ある参加者。突然の激しい夕立に、手作
りの竹製シンポドームに雨音が響きます。でも、雨音と共に響き合う人々の思いは、
とても温か。「あっ、三日月が出てる!」。いつもまにか雨も止み、美しく日が暮れ
ていきます。

レッツ知多事務局の杉浦さん 女性中心に90人近くで地域通貨を運営しているとい
う報告がありました。途中雨にあいましたが虹の村スタッフのサポートがェあり 竹
ドームの雨漏りを体験しながらシンポジュームが進みました。

第三部
「ひと・自然・いのち・繋がるということ 共生のコミュニティーをさぐるリレートーク」

アース・スチュワード・インスティテュート代表のダグラス・ファーさんの自然との
調和をテーマにしたお話で静かな夜の対話がスタートしました。もう、ここまでくる
と、説明の域を超えています。どうか、みなさんが、この波を感じることができます
うように。

共生社会への扉

伊 藤 秀 紀
(エコロジカル・コミュニティ研究)

<真理が(ロゴス=ローグ)通じる(ダイア)>
 
 あの「スモール・イズ・ビューティフル」を書いた経済学者E・F・シューマッハ
にちなんで設立された、イギリスの小さな大学院に留学していた時、“目から鱗が落
ちる”と言うのはこのことかと
心底実感した本がありました。それは量子力学の巨匠デビッド・ボームが彼の晩年に
書いたものでした。その中でボームは、これからの社会の展望を語る中で、人間同士
が行なう「対話=ダイアローグ」の重要性を強調しています。これは彼が晩年に最も
力を入れた活動の一つです。「ダイアローグ」のダイアは「通じる」と言う意味を持
ち、ローグは「ロゴスまたは真理」を意味します。つまり、お互いが公平な立場にた
ち、情報をみんなで共有し、相互の意見に耳を傾けて対話を進めるならば、独り善が
りや先入観が排除されるばかりでなく、一人では到達し難い、よりふさわしい結論に
至る事ができるということです。ボームはまた「対話=ダイアローグ」は、私達の社
会があらゆる過ちを避けるための、最も優れた免疫機能としての役割を果たすであろ
うと述べています。お互いの間で何かを決めなければならない場合には、まず相手の
意見をしっかり受け入れる事からスタートします。自分の意見もきちんと主張するも
のの、相手の意見も自分の意見と同等に尊重しな
がら、お互いの合意点を探って行く事がそのプロセスとなります。お互いが相互の意
見を十分に尊重するならば、必ず合意に達します。しかも「対立」するよりずっと簡
単に合意にいたる事も可能です。「共生」とは、「お互いが存在する事によってお互
いが生かされている」ことを深く認識し、「自分の存在をしっかり表現しながらも、
他の存在も自分の存在と同等に尊重し、共に全体への調和をとりながら生きていく」
ことだと思っています。その意味において、この対話による合意形成は、人間社会は
もちろん、人間と自然界における「共生」においても、最も基本となることと考えら
れます。

<調和への対話には、小さな単位で>
 
 私達が共生社会をめざすならば、社会の構造もおのずと変わって行くことになりま
す。対話による合意を重視するためには、大きな集団では不可能です。よりふさわし
い小さなサイズの集団にならなければなりません。また、自分達の活動が他の人々や
自然界に及ぼす影響に対して、しっかりと責任を負う必要があります。そのために
は、私達の生活の主要な部分を、できるだけ自分の見える範囲で生産し、消費するこ
とが要となってきます。社会のシステムも自己管理し、自己メインテナンスします。
金融も自分達でまかないます。教育もそうです。つまり、自分達の、自分達による、
自分達のための、自分達で納得し責任を負える社会を形成して行く事が大事になって
きます。そして、それは意外と小さな地域レベルでの活動となるでしょう。これは昔
の田舎にあったような閉鎖的なコミュニティーのことではありません。また、どこか
に理想郷を作ることでもありません。これからの共生社会への第一歩は、お互いの自
由な意思を尊重しながら、今住んでいる地域のコミュニティーを、相互の信頼と協調
関係をベースに、より自立的なものに再構築していくことと考えられます。

<対立する同士より、隣との協調から>

 それならば、一体何が具体的に変わってくるのでしょうか。例えば、協調が基本の
共生のコミュニティーでは、生産者と消費者、経営者と従業員、店員とお客といった
相い対する関係よりも、それらが相互に融合した形が生まれてくるはずです。その方
が必要とされるニーズに合った、質の高い財やサービスを安定して供給できるからで
す。また、個人が全てに所有権を主張することよりも、無駄をすることなく共有でき
るものは皆で持つというスタイルが多くなってくるでしょう。エネルギー資源の利用
についても、それは地域で共同で自給自足することが多くなってくるはずです。この
ことは、必要なものを必要なだけ消費するといった、新しいライフスタイルをも生み
出します。また、長い年月のあいだに築きあげられた伝統的な地域の文化も、貴重な
知恵の宝庫として見なおされてきます。財やサービスの交換も自分達で管理する交換
システムの中で行なわれる様になります。子供の教育も、大規模な画一的なものか
ら、地域の文化と個人の特質、精神的・身体的な発達に合わせた教育を可能とする、
地域に支えられた小規模な学校が増えてきます。協調を主体にした共生のコミュニ
ティーは、私達の社会に豊かな多様性を育み、愛に満ちた生活の場を提供してくれる
はずです。地域のひとりひとりは、そのコミュニティーの中に自分の場所を見つけ
て、コミュニティーを支える大切な役割を担って行きます。そして、その自分の場所
と役割は、周囲が移り変わっていくのと同じペースで、常に全体に調和しながら自ら
も変わって行きます。

<個と全体の相乗進化>

 まさに自然界の原理と共通したしくみがここにあります。これこそ本当のエコロジ
カル社会と言ってもよいでしょう。ひとりひとりの愛に満ちた小さな活動が集まれ
ば、それがコミュニティーの「質」を高めていきます。コミュニティーの「質」が高
まるとそれがまたひとりひとりの精神的、市民的意識を変えていきます。ここには、
全体への調和を大事にする個人とコミュニティーとの相互のフィードバックがあり、
それが全体を共に進化させていきます。これは、私達の母なる地球“ガイア”を創り
あげてきた原理と全く同じです。実はこれらはもう絵空事ではありません。世界中の
各地で、日本各地で、すでに様々な形で実践が始まっています。消費者と農家が共同
で経営する無農薬有機農業法人、コミュニティーで作る信用組合、地域での財やサー
ビスの交換システム、地域単位のエネルギー供給システム、車などの共同所有、地域
全員の合意を前提とする地方、地域で建てた小学校、などの様々な取り組みが、世界
中で同時多発的に起こっています。そこでは実際新しい人間関係、自然界との関係が
生まれ、コミュニティー自体も変わりつつあります。これらは、まさに地球規模での
変容を実感させる出来事です。嬉しい事に、その変容への扉はあなたの前にも開かれ
ています。そして、あなたが望みさえすれば、この新しい共生の世界にいつでも参加
できるのです。シューマッハやボームをはじめ、多くの偉大な先人達が描いていてき
た夢が、いま現実に動き出しているのです。


 

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