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旬な映画のご紹介

華氏911
Fahrenheit9/11

【マイケル・ムーア監督、2004年公開、122分】

映画のパンフレット表紙
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 カンヌ映画祭の最高賞をとったことやディズニー社が配給を拒否したことで注目をあび、ドキュメンタリー映画として珍しく日本でもロードショー劇場で堂々と上映されているこの映画はぜひ早く見たかった。
 東京の映画館に見に行った人の話だと立ち見も出るほど満員だったというが、僕が見た時は土曜日の午後だったのに意外と観客数は少なく、およそ半分ちょっとだった。
 
 映画の内容は直接見てもらった方がいいと思うのであまり紹介しないが、ブッシュ一家とビン・ラディンとの親密な関係など9.11の同時「テロ」事件の背景を扱ったもので、人によってはショッキングな内容かもしれない。僕自身はこのHP(特にHot Newsのコーナー)で何度も紹介している情報など、すでに知っているようなことばかりで特に驚くことはなかったが、そのことよりもこの映画が広く見られていることに意味があるなと思った。やはり映画の力はすごい。難しい話題(特に政治的な)になると関心がある人しか文章を読んだり集会に行って話を聞いたりしないけれども、エンターテインメントを提供する映画という形では広く受け入れられやすく、世論にも影響を与える力を持つ。
 この映画は特に米大統領選の直前に公開されたことで、ブッシュ支持派からは偏った政治的宣伝映画だとブーイングをあびているが、マイケル・ムーアは逆に今までマスコミが偏った報道をすることでアフガニスタンやイラク侵略戦争を支持するような世論操作が行われていたのだという。マスコミが意図的に没にしてきたものを集めたのがこの映画だとも言える。
 
 この映画のもう一つの特徴はTVCMのようなテンポの早さで、話がつぎつぎと展開するのでそうとう集中して字幕を読まないと取り残されそうなほど。難しい話題や悲惨な映像に続いて思わず吹き出すような場面が入り、それにマッチングした音楽が流れたりと忙しい。これはマイケル・ムーア監督の映画の特徴でもあり、「アホでマヌケなアメリカ白人」(米TV番組で放映されたもので、DVDやビデオで見られる)や「ボウリングフォーコロンバイン」(これもDVD/ビデオがある。銃社会アメリカの病気を掘り下げた内容で去年のアカデミー賞のドキュメンタリー部門で受賞。その授賞式でブッシュをこきおろした演説も有名)と通じるものがある。 
 
 映画のタイトル「華氏911」を最初に聞いて思い出したのが、昔読んだレイ・ブラッドベリのSF小説(トリュフォー監督によって映画化もされた)「華氏451」だ。華氏451度とは紙が燃え出す温度のことらしい。未来の管理社会では情報がすべてTVによって伝達され、本や文字を読むことは許されていない。そこで「反体制的」な人々が隠している本を探し出して燃やしてしまう消防士(実際には消すのではなく燃やすのが仕事)が主人公の物語だ。
 マイケル・ムーアはきっとこの作品を念頭に置いて、人間にものを考えないようにさせて支配するような管理社会がもう出来上がってしまってるよと言いたいのだろう。映画のパンフレットには「華氏911‥‥それは自由が燃える温度」という文句が書かれていた。
 
 このように僕にとってはお勧め度高得点の映画だったが、少しだけ物足りない面もあった。それは‥、
 映画の中では、爆撃されて身内が死んだイラクの人の嘆き悲しむ映像や、貧困層出身でイラクに兵隊として行ってみたらアメリカが解放者で自由と正義の味方だと思っていたのとは全然ちがうと言う米兵たちの姿も映されている。しかし映画の結論的にはアメリカの若者たちをこんなに犠牲にしていいのか、誰が裏でもうけてるんだ等、どうしてもアメリカ中心の視線のような気がして、米兵の何十倍?も死んでいる(しかも女性や子供、民間人が)イラクでもこの映画は素直に喝采を浴びられるのだろうかと思った。
 ‥だがまずはアメリカ人たち(マスコミしか見てない日本人にも)に隠されていた事実を知らせる必要性が有るということでは、それだけでも充分この映画の意味があるし、アメリカも捨てたものじゃないなと思わせる映画であることにはまちがいないと思った。             (あ)

お勧め映画

 なおこの映画を見てよかったと思った人は、ぜひ次の映画もお勧めしたい。

 まず「テロリストは誰」(DVD/ビデオ)は、テロとの戦いを合言葉にしているアメリカ自身が、歴史的に見て世界各地でテロを行ってきているという歴史を明らかにした映画。「華氏911」と合わせて見ることで理解が深まると思う。字幕付

 もうひとつはまだ見てないので言いきれないが(近々見る予定)「911 in Plane Site」。9.11の事件そのものを様々な未公開映像から検証したもので、9.11事件が米政府?の自作自演だったことを示唆するものらしい。現在、自主上映ツアー中。

 

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