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新刊本の紹介‥‥訳者の三輪妙子さんに聞く

『メグさんの性教育読本』

恋をするのも命がけ!?の時代の一冊


 「小学五年の娘にこのあいだ、『肉体関係ってなんのこと?』って聞かれて、困ってしまったわ。どう言ったらいいのかしらね?」、「うちの子、トイレまでついてくることがあるのだけど、生理のときはどう説明したらいいかしら?」
 『メグさんの性教育読本』を翻訳・出版して以来、こういうことを聞かれることが多い。わたしはにっこり笑って、「この本を読んでくれれば、ぜーんぶ書いてあるわよ」と言うのだけど‥‥。
 わたしたちはだれもが、生まれたときから性的存在。セックスや妊娠・出産だけでなく、月経や射精、避妊、思春期のからだの変化、恋人との関係など、わたしたちの人生は性的なものと切り離すことはできない。だから、小さな子どもであっても、性にまつわるいろんなことに興味をもつのは、あたりまえ。
 メグさんは言う。性のことを話すのに、いちばん簡単なのは4、5歳の子どもたち。性について、なんの悪いイメージももっていないから。「男の人のペニスが、女の人のワギナにはいって、精子を卵子に届ける」と聞いて、この子たちは「へーえ、そうなの」とすんなり受け入れる。
 「そんな小さい子に?」と半信半疑の人が多いかもしれないが、これは本当です! じつはわたしも、現在22歳と20歳になる娘と息子がまだ幼児だったころ、性交の仕組みを話したおかげで、その後の「性教育」のやりやすかったこと!なんせ、子どもが性交のメカニズムを知っているのだから、なんの話をしても、たがいに照れることもない。
 自分の子どもはとうにその年齢を過ぎているという場合は、それでも諦めないで。たとえば、車で遠出をする機会をとらえて、とにかくひたすら話しつづける。子どもが「うるさいよ」と言おうが、ブスッとした顔で外をにらんでいようが、めげずに。
 性感染症が50種以上あり、そのうち8種が致死性という事実。エイズの新たな感染者が今年だけでも560万人という現状。そのなかで恋をし、パートナーを見つけていくのは、実際のところ命がけ。若者であれ、熟年、老年であれ、安全で、豊かな関係をつくっていくために、本書に書かれていることくらい、ちゃんと知っておきたい。メグさんのユーモアにケタケタ笑いながら、大事なことをいっぱい学べる、たよりになる本でーす!
 【以上、三輪妙子さんのメッセージ】

 シャイでなかなかこういう話題にオープンな態度で接する事の苦手な我が国日本の痒い所にようやく手の届く、これは多くの家庭にとって、特に思春期を控えたティーンのいる親にとっては、お助けウーマンの登場。
 本来は、セックスを堂々と愛の行為として、人間の尊厳に輝くシーンとして、純粋に親から子へと、伝えて行きたいものだ。という、素朴な思いと裏腹に、この世界にはデリケートな心に突き刺して来るような、様々な風俗的な、あるいは複雑化した、性情報がある。腫れ物に触るよう…というのが、本音ではないかと思う。そういう時に、とにかく救いの一冊。健康的な人間関係が滞りなくスムーズに、生き生きとした生命活動、根源的な<愛>の営みとして、これからの世代にももたらされるように。
 三輪さんの仕事は<生命>という視点で見るとわかりやすい。彼女との出会いは、グリーンピースの最初の来日時。実際に鯨とタンカーの間にゴムボートで入り込んで捕鯨を阻止。非暴力直接行動の、多分日本人女性としては最初のひとり。その時笛を吹くとほんとに鯨が歌い返して来るという経験を、目を輝かせて語ってくれた。笛を吹いていたカナダ人のパートナーとの間に、2児が生まれ、子育てとカナダ、日本の往復を続けながら、女性解放のムーブメントの中で生まれた生理の本『ピリオド』、女性だけの架空の国『フェミニジア』の翻訳。80年初頭のスリーマイル事故のあとの、「カレンシルクウッドの死」(翻訳、映画にもなった)。真実を漏らすと命を狙われ、葬られる!?原子力発電って、一体なんだ!? そして、「原子力資料情報室」のスタッフとして働く。
 88年「いのちの祭り」の時の、脱原発シンポジウムの司会をしてくれた時、日程的に無理でいらっしゃれない高木仁三郎さんにかわっての、参加だった。今でこそ本当に専門家って、市民の環境団体なのだということがわかる。事故の度に意見を聞くのなら、事故が起こらないうちに専門家のヴィジョンを真面目に研究し予算をつけて、エネルギー政策を主導させてもらいたいものだ。
 三輪さんはカナダでは、70年代のカナダ・インディアンたちに、日本の水俣病とそっくりの水銀汚染が起きた事からエコロジーという分野にのめりこむ。貨幣経済と麻薬やアルコールで衰えていく何かを見てしまう。彼らの野生。土地と結びついていて生きられる先住民の魂の病。三輪さんには、そういう何かを察知するアンテナがあるのだろうと思う。それから20年程の歳月、かつてのパートナーは白人の側からネイティブですらもう忘れてしまった、シーダーの樹木の再生可能な利用法の技術を復活させて本を書いた。
 ある意味では、原子力の様な巨大で複雑すぎて、誰にも何も解らなくなっているような産業がまかり通っているという、そういう社会に平気で正気を保っていられる人間の方が、感覚が麻痺してるのかもしれない。平気だという顔をしている。その実猛烈なストレスを隠して「無病病」の様な状態になっているとしたら、愛そしてセックスは、一体どうなってしまうんだろう。健全に生命がほとばしるように抱き合う。子供達の澄んだ瞳。うまく言えないが、紙一重のところで、<いのちの源>に光を当ててくれるかのような、この翻訳があるように思う。        取材・文:星川まり

No.98=2000年1・2月号

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