● どうやって海の世界と出会ったんですか?
沙 耶:最初の入り口は、仕事で野生のイルカに出会う機会があって、イルカと泳ぎた
い、イルカのように泳ぎたいって強く思ったこと。でもすぐに、自分が水中の生きも のであるイルカのように泳げるなんておこがましいということに気づいてうちのめさ
れました。やっぱり自分は陸で酸素を吸って生きている人間で、水の中ではダメな生 きものなんだ〜って。それでも、こんなに幸せな気持ちを味あわせてくれる彼らに、
少しでも近づきたい。どうやったらより深く長く海の中にいられるかなと思っていた 頃、ハワイ島でアメリカのフリーダイビングの選手と出会えたんです。その人たちの
姿をみて、人間の、生きものとしての可能性に感動した。「こうしたい」と思ったこ とって、必ず実現出来るんだって。「深く潜りたい」と思ったら、生理学的には無理
といわれていた深さを超えて潜ってゆくことが出来る。息も4分半もとめることが出 来るようになったし。フリーダイビングは、私自身にそういう生きものとしての可能
性を確認させてくれました。
宇宙飛行士が宇宙から地球を見たときに、強烈な一体感を感じるっていうでしょ。 それに近い感覚で、海の深さ30メートル以上にもなると、神の領域になってくる。
そういう領域に自分が行かせてもらって、「みんなつながっている」っていうことが はっきりわかった。理屈じゃなくて、体中の細胞がわ〜っとそれに気づいちゃう感
じ。生きてるってなんて素晴らしいんだろう!って。地球という生命体において、自 分だけが孤立してるのではない。みんなつながっている。死が近い究極の場所にいる
と、無意識にそういうことを感じとるんだと思う。
いまの私は、さらに競技で記録をきわめたいとは思っていません。スクールをはじ めたのは、あの時感じた素晴らしさ、あの一体感をみんなと分かち合いたいという気
持ちからです。
● でも普通の人はそんなに深くいけるわけではないでしょう?
沙 耶:本当に海に慣れて、息をとめていることが気持ちいいと感じられるようになれ
ば、深さはそれほど関係ない。5メートルの深さでもそれを味わえると思うの。自分 の準備次第で。最終的には、例えばヨガの瞑想のように、水の中でなくてもそれを味
わえるようになる。でも海の中はやっぱり特別気づきやすい状態でいさせてもらえ る。水の中だと、自分の力ではどうにもならないって最初からあきらめてるでしょ
う。だから謙虚な形で入っていけるんだね。
水の中という、自分が普通に生きているのと全くちがう環境に身をおくことによっ て、色んなことに気づかされる。例えば呼吸もそう。人間って、ふだん当たり前にあ
るものって意識できないでしょう。でも水の中に入っていくことによって、自分が空 気を吸って生きてる生きものなんだ、呼吸ってすごい!ってあらためて気づいたり。
フリーダイビングの面白さは、そういうたくさんの気づきをくれること。私にとって それは水中瞑想であり、究極のミソギでもあった。行者さん達が本格的にミソギをす
る時のように、食事も徹底的に調整して初めて深く潜ってゆけるのね。やっている最 中はそこまで考えてなかったけど、フリーダイビングに集中したあの1年で究極のミ
ソギをさせてもらったんだなって。後になってから色んなことが分かってきました。
● ところで、いまの沙耶さんのテーマはどのあたりなんですか?
沙 耶:これまでの人生で、芸能界で仕事をしながら物質的な世界も極め、その対極の
自然や海の世界も極めたところで、昨年あたりは出しきった後の放心状態みたいにな っていました。これからは、その中道をゆきたい。いまやっと、幸せって毎日を普通
に生きることだなって思い始めていて。日々の生活や、足元を見つめることがすごく大切に思えるの。今までは、自分にパワーを与えてくれるものや喜ばせてくれるもの、どこか聖地のような場所に行って感じて気づいてということが多かったんだけど、それより「いま・ここ」。人間としてうまれ、日本人として、現代に生まれた自分に与えられた環境を、どう天国として生きるかっていうあたりがテーマかな。
30代前半でアボリジニと出会ったときに教わった、先住民の昔ながらの地球にお ける生き方のエッセンスが今の私の核になっています。それと同時に、人類が築いて
きた現代のテクノロジーも学んで取り入れていきたい。それらは両方とも、究極の所 でつながることができると思うの。地球が崩壊しない限り、私たちは毎日食べものを
食べて生き続けてゆくわけだし、その持続ということを考えながら、色んなことをシ ェアできる場をつくってゆきたい。千葉の白浜に、建設予定の家の設計図がちょうど
できたところです。地球に生きる人たちの古くからの知恵と、持続可能なテクノロジ ーの両方が融合したモデルハウスになったらいいなと。「地球に負担をかけないど、自分たちも楽園」みたいなお家を作って、みんなが集まって歌ったり踊ったり、楽しくシェアしていけたらいいな。
●踊りといえば、地唄舞の名取りである沙耶さんが最近すっかりフラにはまってますね。
沙 耶:フラは、宇宙や大地や、植物やスピリットと直結していて、ただの踊りじゃないっていう感じがします。気功やヨガとも通じているけど、健康になるとかそういうことを超えてしまっている。地球ってアートの場、芸術を楽しむ場でしょう。フラというのはそこにおいて、音楽や肉体を最高に使った究極の芸術という感じ。踊ってみることで、自分から光を放っている感じ。そして自分だけが気持ちいいというのではなくて、そこにいてダンスを感じる人たちみんなと気持ちが通い合うのを実感して本当に幸せになる。こんなふうに、ただただうれしい、たのしい、気持ちいい‥そういうことだけをシェアしたかったんだ私は!。そういうことの表現者になりたくて「芸能人」になったんだって、すごくクリアになれました。
芸能界に入ろうとしたきっかけは、高校生の頃、原田真二さんのコンサートに行って、観客にライトが当たる瞬間、千人もの人が満面の笑顔で彼の音楽に酔いしれている顔を観たときのこと。たった3分で、一度にこれほどの人を幸せにできる仕事ってすごい、私もそんなことがしたい!って思ったのが原点だったの。本来芸能人になる人は、みんなそういう気持ちで出発してるはず。だけど今までの時代って、欲望に対して忠実に生きるのが幸せをつかめる‥みたいな所で生きてたから違う方向にいっちゃったのかな。女優さんとして、演技が上手ねとか視聴率がよかったとか言われても、う〜ん、嬉しいんだけど素直に喜べない自分がいて、その理由がやっとわかってきた。いくらきれいに着飾っていようと、男性的なパワーを使う世界だったなって。フラを踊ってみて、自分の中の女性性がはじめて喜んでいる感じがして。こんな幸せ、
理屈ぬきのよろこびだけを伝えられる芸能、それこそが芸能人としての本望だったんだな。
● ほんと、沙耶さんをみてるとすごくシンプルですっきり抜けた気持ちよさを感じます。
沙 耶:40才をすぎてやっとだよね。これまでは、自由に幸せだけを追いかけて生きる人間はダメな人間、社会にとってルーズな人間というイメージがあったでしょう。私もそこを行ったり来たりしたのね。やっぱりそうだよな、世間体や親のいうことに従わなくちゃとか。色んなこと言われてきたけど、もう今は確信してます。いったんこの気持ちよさを知ったらね、もう戻れないなあの四角な世界には。
こういうことを若い人たちに伝えたら、待ってましたという感じだと思うよ。た だ、「伝えることが私の使命」みたいに張り切ることもないと思う。ちょっと前までは、私の仕事は伝えることなんだと強く思っていたこともある。結果的にはそうなるかもしれない。でもまず大事なのは、自分がいつも幸せでいること。自分がハッピーで楽でいること。それだけでいいかなって。その様をみて、いいなーって思う人はそうするだろうし。無理に伝えようとすると、そこにまたへんな欲とかエゴが入ってくるし。人のことを気にするより、自分の幸せを一生懸命追求してるのが一番って、今は思ってます。
● 9月の大島では、いっぱいフラも踊りましょうね。ありがとうございました。
2005.6 Oshima WS
photo by Mieda |
高樹沙耶さんの
Book&HP
高樹沙耶オフィシャルウエブサイト http://www.saya.jp/
「マイブルーヘブン」 毎日新聞社
「心の楽園に住む」 集英社be文庫 |
伊豆大島・海と火山と森につながるワークショップ
ALOHA BREATH IN OSHIMA
“アロハ”とは“呼吸とともにある”という意味です。海と火山の島、伊豆大島で、アロハの息と心を体感する2泊3日を過ごしませんか。
ファシリテーター:高樹 沙耶 海と親しむ ドルフィンスイム入門
&小池 マナ 内なる自然と外なる自然につながるダンスセラピー
2005年9月9日(金)〜11日(日)
伊豆大島(東京から船で1時間45分)
主催&問合せ:アマナ
TEL&FAX:04996−7−1080
メール:uzmasumi@gemini.interq.or.jp または:090−2201−0672
★ お問い合わせいただいた方には、詳しい案内と申込書をお送りします。
★ オプショナルツアー&ワーク:9月11日(日)〜12日(月)を予定
アマナのホームページ http://www.amana-alohana.net/
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