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しなやかに したたかに

本当に市民が主体の社会をつくるために

平和憲法を私たちの聖典に

大野 拓夫


ヤイラクからの自衛隊撤退のために、多くの人々が関わった。平和のための行動は、苦しみではなく喜びになる。


 日本の政治史が大きな転換点を向かえようとしている。言うまでもなく憲法改正だ。自民党をはじめとする右派政治、読売、産経などのメディアを中心に日本国憲法を作り替えようという運動が声高に進められている。その論点の中心は、日本国憲法の核とも言える平和主義を後退させ、戦争のできる「普通の国」を目指そうというものだ。すでに一部かいま見えている改正案は、武器の保持、自衛隊の軍隊への格上げ、武器輸出を可能にするなど平和主義の改変、国家への忠誠などを掲げる教育・思想面での改変などである。小泉首相は国会に諮ることもなく、多国籍軍への参加を決めてしまった。多国籍軍は国連軍でもなく、アメリカを中心とした紛れもない軍事行為だ。そんなことが国会も憲法も通り越して決まって行く。日本は既に法治国家ですらなくなってしまった。

当たり前のものこそ大切なもの 
 憲法改正の国民投票は、早くて07年、遅くとも10年頃に行われる可能性が高い。つまり、あとわずか3年から6年が議論のために残された時間となっている。改憲がアメリカからの外圧や思想的超保守層、産業界などの要求で組織的、戦略的に進められているのに対して、憲法の平和主義を守ろうという勢力の声は圧倒的に細く小さい。このままではかなり一方的な改正がなされてしまうのではないだろうか。
 ここまでなってしまった原因は、共産、社民など護憲派政党の退潮も影響しているが、根本的には日本の市民が平和を空気のように当然のものとして、日頃からの努力を怠ってきたツケなのだと言える。私たちには今その空白を埋める作業が求められている。

全国に広がるイラク自衛隊派遣違憲訴
 そんな中、ささやかな抵抗運動とも言えるのが、今各地で起こっている自衛隊のイラク派兵に対して違憲性を訴え、撤兵を求める訴訟である。昨年3月には名古屋で集団訴訟が始まった。現在では3000人を越え、その中には多くの若者たちも含まれている。東京では約100人がリレー方式で本人訴訟を起こしている。これは弁護士に頼らず一人一人の論点で裁判を行うもので、作家の鎌田慧氏、評論家の佐高信氏、北沢洋子氏など多くの文化人、戦争体験者、元自衛隊員など多くの名もない市民がそれぞれの体験に基づいた憲法擁護の論陣をはっている。大阪、静岡、山梨でも同様の訴訟が起こっている。
 これらの訴訟は司法による違憲立法審査権の発動を求めるものだ。本来、国が違法行為や憲法違反を行った時、司法はその違法性、違憲性をチェクする必要がある(三権分立)。しかし、日本では、それが成り立っていないし、国民の側から違憲立法の審査を求める法律もない。だから、今回の裁判では仕方なく、各々が「民事裁判」を起こし、自分が国から受けた「被害」に対して国の賠償責任を問う形で行われている。

平和に生きる権利を創る
 私も東京での裁判の原告になった。平和憲法を誇りに想い、イラクへの自衛隊派兵に対して心を痛めている当事者であるからだ。
 私たちは、今回の自衛隊派兵によって、平和的に生きる権利が脅かされていること、私たちの人格が著しく脅かされていることなどを訴えている。国側は、「そもそも、そんなことを訴える権利はない」と裁判の無効を唱えている。
 私たちが今回の裁判の論拠にしているのが平和的生存権と人格権である。平和的生存権は平和的に生きる権利を保証するもので、環境権と同じように憲法にはっきりとは書かれていないが、13条、9条に依拠するとされている。しかし、一般的に認知された権利ではまだない。
 私はこの平和的生存権を「私たちが銃を向けられることも、向けなければならないことも強いられない権利」として確立できないかと考えている。先の世界大戦では明らかに、そして今回のイラク戦争でも私たちは戦争加害者であることを強いられている。私たちは自らの税金で米軍の武器弾薬を補充し、それが何十万もの市民(半数が女性や子ども)を殺している。それは私たちが殺したのとなんら変わりがないのだ。そのことに気付くなら、その苦痛をどうすれば良いだろう。私たちは戦争加害者になることも強制されてはならないはずだ。
 また、それらの行為が国の「無法」によって押し進められる。国による超法治主義の台頭は、この国が既にファシズムの段階に入ったことを示している。私たちはそのことを裁判所に警告しているのだ。無法をとめられるのは貴方たち「法の番人」しかいないのだと。

平和の使者になるために
 「護憲」は旧左翼の専売特許のように考えられて来た。しかしそうではなく、平和の実現を永く先住民的な意識を保って来た私たち日本人の魂(スピリット)に最も即した役割だと捉えられないだろうか。私は平和憲法を私たちに与えられた宿命として背負うことにくみしたい。世界を開発しつくし、戦争を是とする勢力でなく、平和を慈しみ自然と共に生きる精神として私たちを認識する時、平和憲法は私たちになくてはならない聖典の第一章とも位置づけることができるだろう。私たちはこれを捨て去る努力でなく、ここから始める努力をすべきではないだろうか。


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No.126=2004年9・10月号

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