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なまえのない新聞101より「いのちの祭り」特集

太鼓は私のもって生まれたメッセージを伝える手段です

太鼓バンドGOCOOのリーダー 淺野 香 さん に聞く


女性8人男性5人合計13人の太鼓バンド「GOCOO(ゴクウ)」は、様々な環境関連のイベントやお祭りなどでおなじみの人も多いと思う。和太鼓を中心としながらメンバー自作の太鼓や様々な打楽器を取り入れ、全く新しいスタイルで実に楽しそうに踊りながら叩くそのパワフルなエネルギーは、見る/聴く人を共振させ活性化させてしまう。今年秋にはアメリカ先住民の居留区等をめぐるツアーも決まり、この8月にはいのちの祭りにも出演するというゴクウ。ちょうど梅雨の合間に開かれた東京・国連大学前での環境イベント出演のあとで、リーダーの淺野かおりさんにお話を聞かせてもらった。(インタビュー:サキノ/文責:浜田)


太鼓の前にたった瞬間

 私は太鼓に出逢う前に鍼灸師として治療の仕事をしていたんです。自分は鍼灸という仕事を通して何をしたいんだろうと見始めたときに、ただ治療して人が直って楽になっていけばいいっていうことだけじゃなくて、その次のもっと深いところに自分がひかれることがあって、それをやるには人と向き合う自分というのが、ただ治療をするだけというのを超える必要があるなと考えていたんです。ちょうどそんなときにたまたま和太鼓に出逢ったんです。その頃は自分の人生の中で楽器を演奏して表現していくというのは全然アイデアの中になかったんですが。太鼓を教わった師匠というのが知り合いで、太鼓道場を開いて演奏活動もしていこうかなという時期で、近くにいた顔見知りを呼んでスタートさせた時に、私もそばにいたんです。自分は今でも音痴だと思ってるし、音楽に対してはたっぷりコンプレックスがあって、だから太鼓に呼ばれた時もすごく渋々というか参ったなーという気持ちが強い中でやってたんです。
 でも実際に練習がはじまって、大きい太鼓の前でやってみろということになってばちをもって太鼓の前にたった時に、それまで和太鼓なんて子どものころから打ったことも触ったこともなかったんだけど、浅野かおりとしての記憶じゃないところで、こうかえってきたというか‥‥。太鼓の前にたった瞬間、ああここにかえってきたんだなーという想いがあって。太鼓を打ちながら思い出していく感覚なんです。それから何ヶ月後くらいにはステージで打つようになった。

メッセージを伝える手段

 私の中では音楽をやりたい衝動というよりは、自分がいま浅野かおりとして生きている中でやるべき仕事っていうような感覚なんです。治療であれ太鼓であれ、一人一人生まれてくる時にメッセージを持っていて、自分がこの人生で何をしていきたいんだろうと探しながら、そのメッセージを伝えるための手段だと思うんです。
 今は太鼓を打つということが、私が持って生まれたメッセージを伝えるための一番の手段で、だからずっと続けてるし、でも治療であれ音であれ、そのことを受け取ってくれた人が元気になってエネルギーが起きるとしたら、その人の中にあるすごい力が動き出す、そことつながるからだと思うんです。それは人もそうだし、自然とか地球というものもそうだし、そのことを思い出すこととか実感すること、再確認することは、今の人間にとって力になることだなーと思います。
 それを太鼓を通してやりたくて私は生まれてきたんだと思うし、そこにたどり着くのに時間はかかったけど、いろんなプロセスが全部あって太鼓に出会ったからわかることもあると思う。この先、自分のスタイルがどんなふうに変わっていくかわからないけど、生きている一人一人が、どうして生まれてきて今ここにいるんだろうっていう根っこの部分に届く何かを伝えつづけていけたらって思う。

──鍼灸師として何年か開業していたということですが、そもそも東洋医学に興味をもったのは?

私自身が子どもの頃、いつも具合が悪い虚弱児みたいに育ってきて、すごく弱っちい子だったんです。今は誰も信じてくれないですけど。(笑)
子どものころから自分が医者に行って薬を飲むと、また別のところが具合が悪くなるっていうことを体験していたから。もしかして薬ってよくないのかな、じゃあ自分で何とかするしかないのかなって思ってたんです。
 小児喘息からはじまって、もう医者もわからないから自律神経失調症とか言われて。で、しょっちゅう調子が悪くて、何かやりたいことがあっても途中で具合が悪くなっちゃうんじゃないかなーって年中心配している。でも、ある時に自分でそのサイクルをやめようと思ったらどうなるんだろうと思ったら、すごく自分の中で変化があったんです。自分でやーめたって言えばすむのかってところから、だんだん東洋医学に興味を持ちはじめたんです。それは、横尾忠則さんの本を読んだりして、自分が生まれてきて今ここにいるというのはどういうことなんだろうって考え始めた時期と重なってます。

治療に限界を感じて

──治療師をやめて太鼓をやるようになったのは、東洋医学とか治療ということの限界を感じたからですか?

東洋医学の限界というより、治療という形態をとってること自体の限界として、患者さんとの関係で、自分がもっと成長しないと開けていかないなというジレンマを感じてた時期に太鼓に出会ったんです。
 治療をしていると、病気になることとか健康になることってどういうことだろうって考えるんですよ。治療をして痛いところが直ったから元気になるのかというと、そうとばかりは限らないところがある。病気とか脆い部分を抱えていたとしても、自分の生を生きるという力が強ければ、病気とつきあっていくということも含めて、自分に与えられた命を生きたるわいって思うじゃないですか。それが見えなくなってきている時とか、自分の存在が意味のないものに思えるような弱ってる時は、病気になっちゃってもいいやっていう、元気でいる理由が見つからないことってあると思うんです。むしろ病気になった方が、自分は病気だからお休みって言えるじゃないですか。
 それは甘えかもしれないけど、それもオッケーっていう幅もあっていいと思うし、でもその後に一休みしたからまたいっちょ行くかいって自分に言えるものが見えなくなっちゃうのが一番つらいと思う。患者さんとつきあってると、たまにそういうのが見えなくて、もう治療したから大丈夫ですよって言われても、いや〜?いや〜?って元気になれない人がいる。でも、その人自身が自分の中にある、どんなにすごい存在なのかっていうことがちょっとでも本人が感じられた瞬間に、抱えていた身体的な不調も意外とふっとんでしまう。
 太鼓の音に出会った時、すごくダイレクトだなと思ったんです。治療とか言葉を超えて、一方通行じゃなくて循環していく流れ。だから打ちつづけられる。すりへらしていくのではなく、出す一方で入ってくる。メンバーもその時一緒に居る人も、あなたがここにいてくれてよかったっていう気持ちが、太鼓を打ってつながっていった時に湧いてくるんです。
私の中でもきっと、言葉で伝わってこなくても、あなたが今ここにいてくれてよかったっていう思いを受け取ったときに、それが自分の中でまた生きる力になっていく。そういうふうに思ってもらえるのはすごい力になると思うんです。

虹の戦士をめざめさせよう

──さいごにゴクウからのメッセージをお願いします。

 自分がこの地球だとして、この地球上から全部のいのちが消え去った時に、地球である私が思い出すことって何だろうと思うんです。やっぱりいのちがそこにあって、いのちが喜びの中で暮らしている。笑いがあって、喜びを分かち合っている、何気ない日常の光景を思い出すんだろうなー。だから限られた命の時間の中で愛や喜びの記憶をこの大地に日々、ひとつでも多く刻んでいくことが、私達がこの地球のためにできること。でもそこにいのちが存在することは、幸せで楽しいことだけじゃなくて、いろんな問題とか困ったこと悲しいことだとか許せないことが起きていて、そういう問題がなくなることもないだろうし、この地球上に起きているどんな問題についても、すべてを知ることも正しい判断を下すことはすごく難しいことかもしれない。
 虹の戦士をめざめさせていこうっていうメッセージがあるんですけど、地球上に虹の戦士が現れる、それは特別のスーパーマンを待ち望むことではなく、そうか、私もそう、あなたもそう、‥‥というふうに今この時代に生きてる全員が目覚めていくことことが大事なのであって、一人一人の中にある大事な部分が動き始めることなんだと思います。では、そこで何をしていくのかということは、そんなに正義の味方みたいに立派なことをしようということじゃない。いろんなものを含んだ全ての世界に対して、単純にいえば愛すること、その思いを抱きつづけることだけなんだろうなと思うんです。 ●


取材を終えて

 初めて会ってから約1年、かおりさんもGOCOOも成長中の姿を演奏に直結しているかの様に、毎回驚くべき展開で、これは日々の練習量が並み大抵ではない、それに13人の気持ちをひとつにまとめる事をどうやってできるのか、その魅力がどうやって保たれているのか? かおりさんのリーダーとしての苦労も思って望んだ取材でした。
 話をしていて、改めて、誰にでも通ずる大切な心がけのようなものを感じ、すーっと、子どものような素直な所に届くもの、いろいろな側面を持つ人間がどうやって、お互いにともだちになれるのかを、教えてもらえた気持ちです。
 2日続きのフェスティバル、このインタビューを終えた翌日の演奏は、初日とは演出もメッセージもまったく別のものだった。地球と一緒に生きようという、環境保全を目的にしたこの集まりに、「今私たち自身ひとりひとりが、行動する時」という意味の曲〈レインボー・ウォリアーズ〉がまた新たな意志と息吹きをもって登場した。
 笑顔が弾け、人々がそのサウンドに波打つひとつの意識、それは先住民達からの伝説に予言されていた、その時代に今、共にこうして躍動して応えている現実だとさえ思えます。予言はわたしたちひとりひとりが自分で生きて紡ぎ続ける。「ここにきてくれてありがとう!」彼女の礼は、出逢いへの感謝。観衆の気持ちでもある。垣根がないんだ。
 こうして学びや喜びをリアルタイムで、ライブに盛り込むかおりさんの人となりをみんなに知らせることができる、じっくり話せて贅沢なひとときを満喫しました。ありがとうございました。(サキノ)



 
【CD】
「healing asia vol.2 featuring GOCOO」
 *今年1月発売/全6曲58分/¥2800/コンシピオレコード AGCA10021/

「“Wish Compilation”Hybrid Acoustic Ground」
 *6/30 発売開始、99年の秋分の日に開催された「Autumnal Equinox Festival」に出演したアーティストによるもの。風の楽団や山根麻衣らと共にGOCOOも参加している。
→03-5770-6921/\2500(税別)EMCM-001

【GOCOO 問合せ】Beacon Production:tel.03-5498-2900 fax.5498-2901

【Home Page】http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/2632/index.htm


No.101=2000年7・8月号

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