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島日記

1998年5月号

デポジットで揺れる島

★マスコミで昨年後半から時々報じられるので、八丈町で今年度からデポジット制度を導入するというニュースを目にした方も多いと思う。元々はこの4月から試行期間に入り、6月から実施するという計画で、予算もつけられ条例も制定されたのだが、一方で共産党や商店主らによる反対の署名運動も起こって、今のところ多少開始が延びそうな気配だ。それが今どうなっているかを書いてみよう。

★八丈に移り住んで「きれいな海大好き会」という名前でビーチクリーンアップをするようになったが、その中でも八丈でデポジットができたらいいねという話題はたびたび上っていた。というのも、島はまわりと切り離されて独立しているので、缶飲料などにお金を上乗せして販売し、容器を返すとお金も戻ってくるというデポジット制度がやりやすいからだ。もし自分の住む島で全国に先駆けてデポジット制度が実現できたら、そんな素敵なことはないと、デポを一つの柱にした「エコアイランド」のイメージをふくらませていた。

★しかし現実にデポジット制度が実現しそうになってくると、激しい反対運動が起きてきた。問題は住民ではなく行政主導でデポの話が持ち上がったところにあるのかもしれない。東京都(青島)がやりたがっていて、その実験地に八丈島が名乗りを上げたという経緯もあるらしい。元々デポの意味をそんなに知っているわけでもない役場の人たちが、スケジュールを決めたから(予算がとれたから)といって予定通りに実施しようとしても、住民への説明会で質問に答えられない姿を目にする。役場で決めたやり方を「一度決めたことは変えられない」とゴリ押ししようとし、それに対する反発が生まれ‥‥。本来なら役場の担当者は十分にデポジット制度のことを勉強して、デポの意味や八丈で実施する意義を住民や商店に納得させられるくらい説明する必要がある。

★実際にはお年寄り一人でやっているような小さな商店で回収などの作業をするのはとても難しいのに、役場の人からサービス業なんだからやるべきだというように押しつけされてはたまらない。回収ができなくても販売では協力してもらうとかもっと柔軟に対処できるはずなのに、「一度決めたことだから変えられない」という態度では、こちらも土地の件で同じセリフを役場の人間から何度も何度も聞かされただけに思わず反発してしまう。きっと反対運動をしている人たちの大部分は、そういった反発があるんだろう。

★しかしここで反発だけしていては、役場の人間と同レベルで終わってしまう。島を良くし、ひいては国全体のリサイクル政策に影響を及ぼしていくという夢を実現するには、役場の人間の態度を改めさせ、同時に反対している人たちにもデポの意味を理解してもらって、デポを契機として八丈島をエコアイランドにしていくように努力したい。さいわい反対運動が起きたおかげでデポジットやリサイクル・ゴミ問題について島の中で多少関心が高まったので、これは絶好の好機とも言える。

★しかし反対運動の論調を見ていると、どうもネガティブなムードに終始していて、残念ながら何かを生み出せるような質のものとは感じられない。特に一部政党が反デポのキャンペーンをはっているのには正直がっかりさせられた。本来ならメーカー責任を追及し、デポの意義を説いて回る立場であるはずの政党が、目先の小売り業者の利益(手間暇かかるめんどくさいことはやりたくない)を守るという態度では、今年秋の町議選をにらんでの党利党略と言われてもしかたないだろう。それと、商店側の手間がたいへんそうだからやりたくないという気持ち。プラス役場への反発もある。

★しかし反対側が理由にあげていることはどれも説得力がない。「子供の非行につながる」なんていうおかしな理由が何度も繰り返されたりするのは、よほど反対理由が乏しいせいなんだろう。反対側はもっと本音を出して、どうしてやりたくないのか、やれないのかを正直に話し、その上でどういう解決法が見いだされるのかを話しあうべきだ。

★こうなっては役場にまかせてはおけないし、反対側にも理はない。へたをすると選挙の時みたいにしこりだけが残るということにもなりかねない。役場の人間の役人根性を揺さぶって改めさせ、反対側を含む住民の声をきちんと取り入れて計画を全面的に見直すような方向でしかデポの実現はできないはずだし、させてはならない。そう思っていたら、他にもデポの成り行きを心配して何とかしようという声が住民の中からわきあがりつつある。これからどうなるかはっきりしないが、何とかデポの実現、そして町政への住民参加に向けて自分の役割が果たせたらと思っているのだ。
〈ア〉

 夏祭の会場でも自動回収機を置  いてデポジットの実験が行われ、 子供達に好評だった。

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