「地球温暖化」の虚構 (その二)

 

環境汚染の主因は何か

 「二酸化炭素の排出量を減らせば環境が良くなる」と考える人は、今一度、何が地球環境に汚染や破壊をもたらしているかということを、よく見てほしい。一番悪いのは「有害物質」と「熱の排出」と「機械的な自然破壊」である。地球の汚染は大気中の窒素酸化物、硫黄酸化物、浮遊粒子状物質、放射性物質の複合的な重なりによって、より広範囲に拡がろうとしている。現在、世界中で進行する砂漠化の原因は、酸性雨、森林伐採、農地開発と河川の大量取水にある。CO2 や温暖化とは全く関係がない。
 中国の工場群が吐き出すもうもうたる煤煙―スモッグの光景に象徴される、その有害な大気汚染物質による環境汚染も、同時に排出されるCO2 の方が問題であるかのように語られてきた。環境を汚染しているのは、これらの煤煙に含まれる窒素酸化物、硫黄酸化物、浮遊粒子状物質等々であって、CO2 ではない。

 元々、地球大気の0.03%を占めている重要な物質であるCO2 を、あろうことか「大気汚染物質」と呼称する向きも出てきたのには絶句し、呆れてしまった。我々人間は、呼吸の度にその大気汚染物質―CO2 を吐き出している。二酸化炭素は大気汚染物質ではない。それはあらゆる生物が体内で生産し呼吸によって放出する物質であり、全ての植物が光合成を行って生きるために不可欠の生命活動維持物質である。

生命は炭素が基本

 最近聞かれる「低炭素社会」という言葉は、人間が自ら生命の素である炭素を否定する愚劣な非科学的観念論である。我々生命体は炭素が素となってできているのだ。植物の炭酸同化作用に始まって、動物が炭酸ガスを吐き出し、いかにして炭素からエネルギーを得るかを人体が考え出し、それによって生物は生命を、この世に授かった。なぜ炭素や二酸化炭素を憎むのか、筋違いもはなはだしい。
 光の電磁波エネルギーを化学エネルギーに変える光化学反応によって、光合成による炭酸同化作用が行われる。これが生命の源となった有機物の大量生産の始まりである。
 人間は薪、木炭、石炭、石油を燃やし、その炭素が与えた熱によってここまで生存してきた生き物である。炭素は熱源となる最も重要な元素なのだ。

 ガソリンのような石油製品や、石炭など、全ての化石燃料は、太陽エネルギーを過去の動物と植物が凝縮して生まれた、地球の自然遺産である。この天然の化石燃料を悪の象徴のように語る向きもあるが、短絡的な暴論である。脱石油時代という言葉も、当面、現実的にはありえない選択だ。石油は自動車のガソリンとディーゼル燃料、火力発電の重油燃料、暖房用の灯油として燃やされて、熱エネルギーを生み出すが、それだけではない。
 石油化学製品は生活の隅々で使われている。台所用品、新聞・雑誌、写真の印刷インキ、医療機器、医薬品、入れ歯、様々な衣類と寝具、福祉用品、防寒具、スポーツ用品、サンダル、靴、傘、メガネのレンズ、電卓、接着剤、塗料、工業用薬剤、ボールペン、ファイル、フォルダーなどの文房具に至るまで。映画フィルム、電線、パソコン、スマートフォン等々は言うまでもない。
 脱石油といっても、これらの製品を作るのに石油の代わりになる物質は、今のところ地球上には存在しない。もしプラスティック製品など石油合成物質がなければ、代わりにどれだけ多くの森林が伐採され、動物の皮が剥がされ、鉱物・金属資源が使われたか、想像もつかないほどである。
 問題は、消費量にある。使いやすいがために、人類の消費量を激増させたことと、その廃棄物と処分方法にある。また、石油製品も合成化学物質として、有害な農薬、除草剤、排ガス、ダイオキシン、環境ホルモンのように危険な物質になる。

CO2 は無実

 大気中のCO2 が増えることの脅威は、地球の46億年の歴史から見れば、ほんの一瞬の“直近の過去”の危ういデータを基に論じられている。こうした主張や議論には、地球大気の変動を客観的に理解しようとする科学の方法論とは、相当に無理があるように見える。温暖化などという曖昧で、見当違いの言葉で地球の気候変動を説明したり、議論しないことが肝心である。それぞれの異常気象の原因は、複数の要因によるもので、個々の現象の関連も含めて科学的に分析しなければならない。何でもかんでも、CO2 による温暖化のせいにするのは科学ではなく、恣意的な新興宗教だ。
 はっきりと断言できることは、これまで見てきたように、地球の気温の上昇や気候変動、環境汚染といった問題のどこにもCO2 は登場しない。全くの無実である。

 温暖化の犯人として、なぜCO2 ばかりが注目されるのか。環境問題のような政治家や先導者が介在する問題を科学的に扱おうとすると、一般社会には物事をなるべく簡略な説明で済ませようという心理が働くからだろう。CO2 は気候変動がどうやって起こるかを簡単に説明するには都合がよい。この物質だけで地球の気候が支配されていると言われれば、人々はそれ以上の複雑な仕組みを学ぼうとしなくなる。

「CO2 増加による地球温暖化」は、もはや科学ではなく、完全に政治化している。「排出権取引」等の言葉に象徴されるように、温暖化を世界的な政治・社会問題にすることによって、利益を得ている多数の者が存在している。また、危機感を煽って大きな国家予算がつぎ込まれると、利益を得る人々がいる。ちなみに現在の日本でも、温暖化研究という名目がつけば、どんな意義があるのか理解しがたいような研究課題にも、毎年数億円の予算が支出されているという。研究すべき課題が山積しているからではなく、課題が地球環境問題であれば潤沢な研究費が研究機関と研究者に流れ込む。こうして政府も企業も、研究者も、広報担当のメディアも揃って、「CO2 増加による地球温暖化」が、確定した科学的事実、社会常識として宣伝されていった。

地球のエネルギー収支を決めるのは太陽

 地球温暖化説は、地球の平均気温が大気中の二酸化炭素の濃度によって支配されているかのように論じ、新聞やテレビ、ラジオなどのメディアは大抵それを鵜呑みにして報じている。しかし、宇宙的なスケールで地球物理学を研究する科学者から見れば、これは大きな見当違いということになる。なぜなら、地球大気の平均気温を本質的に決めているのは二酸化炭素など一部の大気組成物質ではなく、?太陽から地球に入ってくる入射エネルギーと、?地球から宇宙空間に逃げ出す放射エネルギーおよび反射エネルギーのバランスだからだ。
 これら2つのうち、?を決めるのは「太陽定数」である。これは太陽に対して直角をなす地球の仮想的平面に降り注ぐ太陽エネルギーの強さで、1平方メートル当たり毎秒1370ワットと計算されている。
 この太陽定数を直径1万2700kmの球体である地球の断面積(約1億2700平方km)に掛け合わせる。すると、地球が太陽から受け取っているエネルギーの総量は「174 兆キロワット」であることが分かる。これは100 万キロワット級の原発が生み出す電力の1億7400万倍に相当する。地球は46億年の歴史を通じて、太陽からこうした莫大なエネルギーを四六時中、受け取ってきたのだ。

 もう一つ、熱エネルギーの問題がある。それは地球の熱が逃げ出す基本的な仕組みで、陸地や雲や大気の出す放射エネルギーが赤外線として宇宙に逃げ出すものだ。
 太陽の表面温度が約6000度と計算されており、これに対して大気がない場合の地球の表面温度はマイナス18度Cと計算されており、この温度が放射する電磁波は赤外線である。
 実際の地球では、この赤外線は宇宙に逃げ出す途中で一部が大気を暖める。大気は太陽からの直接の入射エネルギーよりも、むしろ暖められた地上からの赤外線によって加熱される。太陽からの入射エネルギーは主に可視光として地球に届くが、可視の波長は大気をほとんど素通りしてしまうため、大気はあまり暖まらない。
 これに対して地球が放出する赤外線(700 ナノメートル〜1ミリ)は、大気中の水蒸気や二酸化炭素、メタン、オゾン、亜酸化窒素などによく吸収される。その結果、大気は効率よく暖められることになる。
 暖まった大気はより多くの赤外線を出すので、その一部が宇宙空間に逃げ、残りの一部は再び周囲の大気や陸地を暖める。暖まった大気や陸地からはさらに赤外線が放出されて宇宙に逃げる。こうした反復的プロセスを繰り返しながら、結局は地球に入ってくる熱エネルギーは全て宇宙に逃げてしまう。今ほど莫大な量の太陽エネルギーが入ってこなければ、地球は極寒の世界へ、どんな生命も生きられない氷の惑星になってしまう。

 こうして見ると、地球大気の温度を究極的に決める要因は、太陽と地球の関係にあることが分かる。太陽の放射エネルギー(地球から見れば入射エネルギー)と、それを宇宙に跳ね返すアルベド、そして熱エネルギーを赤外線として宇宙に逃がす地球の温度の3つである。この3つを組み合わせた方程式を作って解を出せば、地球の平均気温が出るが、答えはマイナス18度である。これに大気の温室効果分33度Cを加えると、プラス15度Cとなる。地球の実際の平均気温は16度なのでほぼ一致する。これは温室効果のおかげで地球は生物にとって快適な温度に保たれているということである。植物が二酸化炭素の光合成によって生き、かつ成長していることも忘れてはならない。地球の生物は二酸化炭素に感謝をこそすれ、この物質を地球環境の破壊者であるかのような議論をするのは、恩を仇で返すような振る舞いだ。

「太陽の冬眠」が迫っている?

 人類にとって本当に心配なのは、温暖化よりも寒冷化だ。地球の寒冷化が進んだ場合には、農作物ができなくなり、温暖化どころではない大被害が出ることは間違いない。
 太陽黒点には周知の通り11年周期と別に、100 年の大きな周期があって、もう一つの温暖期、寒冷期の大周期があることも、太陽研究者の間では常識となっている。
 2012〜2013年が、11年周期の転換点で、現在はサイクル25の黒点の極小期に入っている。前回のサイクルは12年7カ月に延びたので、このように黒点の周期が長くなったことは、「太陽の冬眠」と呼ばれる寒冷期突入の特徴であると見られている。こうして多くの研究者が寒冷化の到来を予測しており、しかしその大周期の原因が、いまだに分かっていない。

 ここまで述べてきたように、地球の気候変動要因は、少なくとも10次元以上の解析ができなければ解明できないはずである。限られたデータに基づいたシミュレーションでは、それは到底不可能だ。将来の地球と宇宙がもたらす気象メカニズムがどうなるかは、現在の未熟な人類には分からない、と考えるのが科学的な態度だろう。
 ここまでの重要な一つの結論として、あらためて記すが、CO2 が地球を温暖化してきたのではないことは明白である。数々のメカニズムが相互に、周期的に作用して、そして主に太陽活動がその中心にあって、自然現象によって過去の気温が変化してきた、ということに尽きる―。

「木を見て森を見ず」から脱する

 私はここで、人間は二酸化炭素を大気中に野放図に放出してもよいと言っているのではない。自動車や工場などの排ガスを削減、規制することは、CO2以上にその大気汚染物質を減らす上でも絶対に必要である。ただ、それは温暖化とか気候変動とは関係のない従来から求められている政策である。地球温暖化を既定の事実のように主張し、それを報道している人々は、多勢に無勢を演出しているが、それは科学的真実の探究とは無縁である。CO2 が異常な地球温暖化を引き起こしているという政治的・社会的要請に従ったシナ
リオばかりに目を奪われていると、我々は惑星地球を真に科学的、かつ冷静に見るチャンスを失ってしまう恐れがある。母なる地球は、コンピューター・シミュレーションの予測など歯牙にもかけていない。「今世紀末までに世界の平均気温の上昇を2度未満に抑える」などと言うが、地球の大気と気象とは、人間がコントロール可能な閉鎖系の温室ではないのだ。
 地球とその気象は、人間の願望や意図をはるかに超えた宇宙的スケールの原理と仕組みによって、太陽系の一惑星としての数十億年の歴史を今も刻み続けている。
 現在の世界を挙げてのCO2 温暖化騒ぎは、「木を見て森を見ず」で、宇宙の真っ只中にある地球という視点を欠いた、人類の視野狭窄と閉鎖的な思考法の産物である。世界を挙げて、このシナリオを進めている限り、誰も地球の真実の姿を知ることはできないだろう―。

 




 

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