行き詰まるビッグバン宇宙論

 ビッグバン理論の予言はどれも実際の宇宙の観測とは合わない。宇宙にはこの理論が予言する宇宙の年齢(100〜200億年)よりも古い物質が存在するし、軽い元素の存在比は予言とは全く一致せず、ビッグバン理論の改定版であるインフレーション宇宙モデルの予言する宇宙の物質密度は、実際とは100倍も違っている。
 最近の観測では、宇宙にはかつて、今存在する星々よりも古い世代の星々が存在したことが明らかになってきた。というのは、銀河の中で今観測される最も古い星々でさえ、金属物質を大量に含むことが判明したが、これらの物質は過去の世代の星々の超新星爆発によってのみ作り出されたからだ。ということは、宇宙の軽い元素もまた、ビッグバンのような最初の大爆発を想定することなしに作りだせるということである。
 これらの古い星々が放出したエネルギーが銀河間宇宙を覆うチリによって散逸されると、それは宇宙背景放射として観測されるだろう。実際、宇宙の物質の22%を占めるヘリウムを生み出すことによって作りだされるエネルギーの大きさは、宇宙背景放射として観測されるエネルギーの大きさと一致している。

 この放射はどのようにしてかくも均一に分布するようになったのか。後述するアンソニー・ペラットらの研究によれば、この放射を拡散させたのは“電波の霧”である。これはクェーサーや銀河中心核に漂っているプラズマのフィラメントの集合体である。プラズマ・フィラメントに捕らえられた電子は、電波やマイクロ波を吸収・放出したりし、他方、赤外線や可視光は自由に通過させる。コービー衛星が観測したようなスムーズな黒体輻射
は、このような電波の霧によっても生み出されることが、計算によって示されている。
 これまでに電波と赤外線が測定した銀河のデータを見れば、我々が宇宙背景放射として観測しているものは、“ビッグバンの名残り”などではなく、電波の霧によって局地的に生み出された“拡散された放射”である可能性が高い。


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