SERIES(2) プラズマ・ユニバース

  現代に生きる私たちが電気通信や電力によって互いに結びつけられているように、私たちはより深い部分でも、ほとんど神秘的ともいえる電気の力によってつなぎ合わされている。あなたが今、この文章を読むのも電気のおかげだ。脳の神経細胞同士の接合部に電位変化が生じることで興奮が伝わり、意味が生まれているからである。
 私たち人間は、電気的宇宙という大海を泳ぐ電気的存在なのである。このエネルギーが数十億個の惑星や恒星を輝かせ、竜巻やハリケーンにエネルギーを与え、宇宙で最も偉大な力として立ち現れてくるのである。
 それは重力でも、磁力でも、ダークエネルギーでもない。科学者たちが「神の粒子」という魅力的な名前をつけ、莫大な費用をかけて加速器で探している素粒子でもない。それは電気であり、それを生み出しているのがプラズマなのだ。

 このように考えられないだろうか。宇宙にある全てのものが、全てとつながっているのなら、それを媒介するのはきっと電子しかない。ネットもまさにそれであり、あなたや私の身体、あなたの脳から地球、太陽、星々に至るまで、どこまでも宇宙はとことん電気なのだ―。


            

宇宙空間に広がるプラズマ

 物質には3つの状態がある。すなわち、固体、液体、気体である。気体よりももっとエネルギーが高くなるとどうなるか。水分子でいえば、構成する水素と酸素の原子がバラバラとなる。最初に、原子核を回っている電子が軌道を外れて外に飛び出す。これを電離した状態と呼び、原子はイオンになっていると表現する。これが物質の第4の状態、プラズマである。プラズマとは、高エネルギーの電離したガス状態を指す。プラズマ状態で電子
が軌道を外れても、電気の力によって再び原子核に引きつけられると、持っていたエネルギーは光となって放出される。プラズマが光るのはこのためである。オーロラや雷、蛍光灯やプラズマテレビに至るまで、その原理は同じである。
 太陽においても、激しく運動するプラズマから、こうして光が放出される。ただし、光といっても目に見えるものばかりではない。光は電磁波である。周波数によって、電波からマイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線と、様々な特徴を持つ。太陽のプラズマは、これら全てを放射している。エネルギーの低い状態から高い状態まで、多種多様な電磁波を宇宙空間に放出しているのだ。

 かつて宇宙空間は真空が広がるだけであると考えられてきた。が、観測が進むにつれて、意外にプラズマが大量に分布していることが分かってきた。暗黒に見える空間にも、小さい密度ながらもプラズマが存在する。ましてや太陽などの恒星はプラズマの塊であり、銀河はプラズマの渦であるといっても過言ではない。
 ビッグバン宇宙論は、あくまでも宇宙を支配している力は重力であると考える。惑星の運行にしても、ブラックホールやダークマターにしても、重力が力学的に重要なファクターであると主張する。これに対して、プラズマ宇宙論は電磁気力に重きを置く。電磁気力は重力に比べ、10の39乗倍も強い。地球上にいて、重力が大きく感じるのは、電磁気力が圧倒的に少なく、その及ぶ範囲が局所的にとどまっているからである。電気伝導度の大き
いプラズマが乱舞する太陽の表面では、電磁気力が現象を規定している。ましてやプラズマが満ちている宇宙空間ならば、なおさらである。


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