〈 コ ラ ム ・ エ ッ セ イ 〉

ア セ ン シ ョ ン て 何 ?

 

 よく言われるように2012年12月21日のマヤ暦の長周期の終わりの日に、地球の破滅も人類の滅亡も起こらない―。恐怖のシナリオとパニックスペクタクルのハリウッド映画『2012』のおかげで、「2012年」は、すでにノストラダムス予言と同様の食傷気味のオカルト話になっている。
 2012年頃に起きるとされた太陽活動の極大期に伴う太陽嵐のピークや、それによる地球への影響で、何がしかの天変地異があったとしても、それは、従来の予測より数カ月以上遅れそうなことが分かってきている。ここまでは「2012年」を知る人の共通認識となってきていると言っていいだろう。
 では、その時期に起きると言われた「アセンション」―次元上昇とは何だろう。ニューエイジのファンタジー、スピリチュアル系の「意識の目覚め」を指すキーワードとして、聞き飽きた感もあるが、この言葉は、あまりにも安易に、言葉の意味を広げ過ぎて使われているように思えてならない。

 「アセンション」(Ascension)とは、元はキリスト教の用語で、Ascend(昇天)がルーツで、『新約聖書』にある、十字架にかけられて死んだキリストが、3日後、復活し、40日間を弟子たちと過ごした後、天に昇っていった―Ascendしたことを指している。その時、弟子たちは、復活したキリストに接した印象を、それは通常の肉体とはちょっと違う体だったと述べる記述が福音書にある。では、普通の肉体でなかったとしたら、それは何だったのか。

 私がアセンション―次元上昇という概念を知ったのは、歴史と科学、オカルト、宇宙の謎の再研究を始めた1992年頃で、予言の研究から日本の『日月神示』、ホピの予言やマヤ暦、テレンス・マッケナの「時間波動理論」を知り、「2012年」というポイントも、そこから浮かび上がってきた。
 アセンションについては、マヤの人たちは何も言っていない。彼らの暦が2012年に終了する。そのことに基づいて、1990年代に欧米の精神世界の人たちが「これはアセンションだ」と言い始めた。最初に誰から出た情報かといえば、マヤ研究家のホゼ・アグエイアス博士で、彼が言っていることに精神世界の人やチャネラーが様々に色をつけたりしてきた。
 それから90年代末にかけて、その調査と研究をまとめた個人ミニコミ誌『宇宙NEWS LETTER』でUFO、宇宙人、未踏科学、アセンション情報を紹介し、「なまえのない新聞」の紙面でも広告を載せてもらったことがある。ネットの時代が始まる直前、ミニコミというアナログメディアで2012年とか、アセンション云々を伝えているものは、まだほとんどなかったと思う。ささやかながら、私も、このトンデモ情報をいち早く発信した一人だという自覚がある。

 そこで知った『日月神示』の言葉は一つの衝撃だった。『日月神示』は2012年を明示してはいなかったが、そのメッセージは他の多くの宗教の教典を含めても前代未聞のものだった。その中にこうある。

「マコトでもって洗濯すれば霊化される。半霊半物質の世界に移行するのであるから、半霊半物質の肉体とならねばならん。今のやり方ではどうにもならなくなるぞ、今の世は灰にするより他に方法のないところが沢山あるぞ、灰になる肉体であってはならん、原爆も水爆にもビクともしない肉体となれるのであるぞ、今の物質でつくった何物にも影響されない新しき生命が生まれつつあるのぞ、岩戸ひらきとはこのことであるぞ」

「岩戸がひらけると言ふことは、半分のところは天界となるということぢゃ、天界の半分は地となることぢゃ、今の肉体、今の想念、今の宗教、今の科学のままでは岩戸はひらけんぞ、今の肉体のままでは人民生きてはいけんぞ、一度は仮死の状態にして魂も肉体も、半分のところは入れかえて、ミロクの世の人民として甦らす仕組み、心得なされよ、神様でさえこの事判らん御方あるぞ、大地も転位、天も転位するぞ」

 半霊半物質の世界への移行―これ以上的確に次元上昇―アセンションを表現する言葉は他に見当たらない。ニューエイジのチャネラーやUFOアブダクティー(接触者、被誘拐者)らが地球のアセンションを唱え出すよりはるか以前に、『日月神示』では、はっきりと具体的なことが語られていた。それを予言するのは国常立大神(クニトコタチオオカミ)という封じられた元の神さんであるという。
 一方では、宇宙の天変地異には何も触れずに、人類がこれから何十年かかけてゆるやかに変化(進化)していくことをアセンションと呼ぶ、バシャールのような穏健で常識的(?)なメッセージもある。あなたはどちらが好みだろうか?

“高位の宇宙存在”と称するバシャールが最近、チャネラーに伝える、ゆったりとしたアセンションとか、数十年かけて人類はポジティヴな人々とネガティヴな人々に別れていくなんていう話は、私には寝惚けた言葉としか思えない。(今さらバシャールが出てきたことが驚き)。こういう二極化は、現象としては既にはっきりと現れている。これから何十年もかけなくても、今や完全にそうなっているのだ。
 それにどんな人間も、そして宇宙人も、単純にネガティヴ系、ポジティヴ系と分けられるものでもない。そういう何十年もかかる変化(進化)をアセンションと呼ぶのは、言葉の意味からして矛盾している。そういう精神の変化は、誰しもが人生の中で長い年月のうちに体験するもので、そもそもアセンション(次元上昇、次元交替)とは、そんな悠長な現象ではないだろう。それは精神上の現象ではなく、肉体を含めた存在丸ごとの現象で、さなぎが成虫になる時のように、もっと劇的で瞬間的で、ミラクルな現象であるはずだ。
 そう、復活後のキリストが“不思議な肉体”を得ていたように。
 アセンションというのは、これから2012年、あるいはその先のいつか、人間は丸ごと変容、変態してしまうという話だ。変態というのは、ある形を成している生命体から全く違う生命体に変わっていくということなのだ。

 そもそも物質次元の宇宙と地球上において何の天文学的・物理的現象が起きないで、自動的に生物、そして人類全体にも、アセンションなど起こるわけがないとも言える。その現象を特定、推測できるくらいの科学的データもそろそろ揃ってきているようである。
―2012年末から2013年、あるいはその以降のある時点で、太陽系に侵入、衝突してくる星間雲からの衝撃波+太陽活動の極大期が重なり、太陽は膨張を開始する。さらに太陽が星間雲からの衝撃波がピークに達する位置に来たところで、太陽は超新星のような大爆発を起こし、同時に地球を含む太陽系惑星を包み込んでいるヘリオスフィア(太陽大気圏)のプラズマがスパークする。
 地上からは太陽が膨張と共に爆発したように見え、全地の空が昼夜を問わず真っ白に光輝く。そして数分後には地球は太陽からのスーパーフレアに呑み込まれる。それはバン・アレン帯さえ吹き飛ばし、現在、地球の3倍大の穴が開いている磁気圏をくぐり抜け、地上大気圏まで到達する可能性が大だ。地球はそれ自体がプラズマの繭をまとわない限り、地上は文字通り焼き尽くされるかもしれない。

 これはかなり過激なシナリオだが、そのような“磔”(はりつけ)にも等しい厳しい体験を経なければ、人は誰しもアセンション(次元上昇)も、真の変化もできないと思う。
 広い意味では、肉体の死を経て次元を移ることもアセンションの範疇に入るが、これから臨もうとしているのは、この肉体ごと次元を移ること、肉体を転換、転位することであり、それがアセンションの本義なのである。だからこそ、科学的、常識的にもあり得ないことと考えられている。アカデミズムもメディアも、一般の人々も、そんなことがあるわけがない、何百万年もかかって類人猿からヒトになるという進化なのに、あとほんの数年でサナギが蝶になるように劇的に人間が変わるなんてありえないという反応だ。

 私が予測する一つの可能性はこうだ。―その時、地上のどこにいても、そのプラズマの中で焼かれることなく存在できたら、人間や生命体は、その高エネルギーに励起されて電子の動きが変わり、同時に原子構造、分子構造が変わり、結果、DNAが変化し、今とは異なる肉体に転位するということも起こり得るかもしれない。その時、いわゆるチャクラが開き、活性化するのは言わずもがなだ。
 今から科学的証明はできないが、絶対にそんなことはありえないと否定できるほど、我々は宇宙の真理を理解、熟知しているわけではない。太陽一つ、原子一つ、電子一つについてさえ、我々は実はほとんど何も分かってはいないのだ。
 よってアセンションなんて、そんなバカなこと、夢みたいなことはあるわけがない、という醒めた判断を私はとらない。かといってそれを確信し、すっかりその気でいるというわけでもない。かもしれない、そうなったらいいなという感覚だ。もっと言うと、その時を心から待望している。それは子どもの頃、遠足や旅行の日を前にしてワクワクして堪らなかった気持ちにも似た何か。そんな無邪気な夢を見るのは大人げない私だからだろうか
…。

 物理的なサバイバルに備えることも、ある程度は必要だろうが、精神世界を知って、瞑想をやったり、色々なセミナーやレクチャーに参加したりすることが、実際のアセンションにおいてプラスになるかどうか、私自身は疑わしいと思っている。宇宙の変化のことを知らなくても、そんなことより小説を読んだり、音楽を聴いたり、演奏したり、スポーツに熱中したり、素敵な恋をしたり、という普通の生活を充実させた方が、準備としてはいいかもしれない。
 これは、伝えるのが非常に難しい情報なのだ。それをちゃんと裏付けられるような情報がたとえあったとしても、言わない方がいいのかもしれない。外を知らないで、この三次元の世界の中で普通に死んでいく方がいいのかもしれない。
 実際、権力者の中にはそういうポリシーを持って動いている者もいるかもしれない。
 2012年、あるいは地球の大異変について、我々の現状について、彼らは彼らなりに知っているに違いない。その上で彼らは「言わない方がいいでしょう」と。言えば我々にパニックと混乱をもたらし、反乱が起きかねないと思っているのかもしれない。
 ただ、それを知っていても、知らなくても、宇宙と地球に起きる現象は時間の問題で、万人に等しく訪れる―。

                   *

 マスコミではほとんど報道されないが、最近、木星では巨大な内部からのエネルギーの上昇流が観測されている。太陽周縁では、まるで銀河鉄道列車のような9つ連なりの赤く輝く超巨大物体―ソーラークルーザーが、観測衛星のカメラにとらえられている。
 太陽表面では、半球を一周する超巨大な磁気帯―プラズマ・フィラメントが観測され、太陽表面の半球全面によるフレア爆発という、これまでにない事態の可能性が専門家によって懸念されている。宇宙天気はけっして安泰ではないことは、現時点でも歴然としている。
 アル・ゴアのグループが2008年、「太陽は地上の天候に全く関係ない」と、大々的に発表したが、私は唖然としてしまった。地球の海流も大気も太陽の影響下にあり、地球上の全生命は太陽なくしては一日も生存できないのに、よくもこんな大嘘をつけるなと。
 これに関してマスコミが一言も疑問の声を発しなかったのも驚きだった。なぜこれだけ強調するのか。そこに真実が隠されている。真実は逆なのだ。太陽と地球の天候が密接に関係するだけでなく、人間の感情、ホルモン、ウィルスなどは、太陽と一体化していると言っていい。だからといって太陽の異変を必要以上に恐れることはない。長い時間で物事を見たら、これは昔からよくあることなのだ。どうせ起こること、避けられないことなら、逆にどんどん太陽光線を浴びておいた方がいいのではないかと私は思う―。

太陽周縁の超巨大発光体群

 NASAが2006年に打ち上げた双子の太陽観測衛星「STEREO」が、2010年8月24日に撮影した写真に、見ての通り列を重ねる9つの発光体群が写り込んでいた。
 右から3番目の発光体は、上下に2機が連結しているようで、他の8個と比べて2倍の大きさに見える。画像全体から判断すると、この発光体は超巨大だ。画像は1枚しか出ておらず、むろんNASAは説明をつけていない。しかもこの画像はNASAのサイトからすぐに消され、現在は見ることができない。

 

*写真・図版は学研『ムー』他より転載


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