ESAが発表する火星の映像は、NASAが発表した映像とはやはり一味違う。使っている観測機器の違いもあるが、映像が実に生々しい。ヘラス盆地の峡谷を写した映像には、青い液体の水がはっきりと見えるばかりか、その周辺に植物らしきものが確認できる。
すでに火星に水が存在することは公然の事実である。問題は海である。かつて火星には大量の水―海が存在したことは間違いないが、その規模はどれほどのものだったのか。日本をはじめ世界中の天文学者たちは様々なシミュレーションを行っている。アリゾナ大学のベーカーらは、火星の北半球の少なくとも15%は水深100〜200メートルの海であったと計算しており、日本の小松吾郎氏によれば、面積で最大、北半球の半分は海であったと結論づけている。研究者たちが注目するのは北極である。火星の北極には低地が広がっており、ボレアレス海と呼ばれている。その構造からこのポレアレス海は巨大な隕石か、小惑星が衝突したクレーターが元になってできているのではないかともいい、海岸線を分析したところ、少なくとも海の水は2段階で消失したことが分かっている。 かつて火星に海が存在した。これは間違いない。時期については諸説あるが、広大な海が存在したことは定説になっているといっても過言ではない。問題はなぜ消えたかという点にある。一般に太陽系が誕生して約10億年間、火星は地球と同じような環境にあったが、約15億年前頃から徐々に寒冷化が進行し、それと同時に海の水が蒸発。やがて荒涼たる大地となり、水は両極と地下に存在するのみとなったと説明されている。アカデミズム得意の斉一論の典型であるが、はたしてそれは事実だろうか。疑問は多い。 火星の赤道付近には台状クレーターという風変わりなクレーターが存在する。名前の通り、クレーターの周りが円形に台のように盛り上がっている。なぜ、このようなクレーターが赤道付近にできたのか。実は謎なのだ。台状クレーターは元々両極の氷床がある地域に特徴的なクレーターなのだ。氷床に隕石が落下するとその中心にクレーターができ、衝撃で飛ばされた土砂が周囲に広がる。この状態で夏になって氷床が溶け、結果として、土砂がない部分が溶解して、ある部分だけが残る。これが繰り返され、周囲が風化されると、台形をしたクレーターができあがる。つまり、台状クレーターがあるということは、そこにはかつて氷床があっことを物語っている。問題はそれが赤道にあるということだ。赤道でも存在するのは2つの地域に限られる。同じ赤道でも両者はともに緯度で180度離れている。 考えられることは一つしかない。この2つの地域はかつて両極地方だったということだ。南極と北極だったのだ。それがいつしか赤道付近にまで移動してしまった。ポールシフト―極移動である。現在の両極はかつて赤道付近にあり、逆に赤道付近の台状クレーターがある2つの地域が両極だったのが90度入れ替わってしまったのだ。 |