タイムトラベラーからの警告 (その1)

 今、インターネット上で次々と名乗りをあげる「タイムトラベラー」たちがいる。人類に警告を与えるとして、第3次世界大戦を含む近未来の出来事を語り続ける彼ら。そのタイムトラベラーたちが目撃した未来とは何なのか。そもそも一般の科学常識では考えられないタイムトラベルというものが可能なのか。「タイムトラベラー」たちの出現は、2017年から加速度的に増えている。これは、タイムマシンの公開がいよいよ近くなってきたことと、我々の世界線は元より、それに近い全てのパラレルワールドの世界線において、タイムトラベラーたちが警告したくなるような悲惨な近未来が待ち受けている証拠なのかもしれない。

タイムパラドックスの二つの解釈

 タイムパラドックスは、物理学の最先端でも真剣に論じられているテーマだ。要するに、タイムマシンで時間軸を移動することで、歴史的・時間的な矛盾が生じることを言う。
 すなわち―過去に戻って、自分に会ったらどうなるのか、あるいは自分の祖父を殺したら自分の存在はどうなるのか。かのアインシュタインがタイムトラベルの可能性を示し、後に物理学者が並行宇宙(パラレルワールド)の存在や、タイムトラベルの実現性について本気で向かい合うようになると、必然的にこのタイムパラドックスが真剣に論じられるようになってきたのだ。この問いには、大きく二つの解釈がある。『パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ』という、理論物理学者ミチオ・カクの本には、その二つの解釈が紹介されている。
「まず、ロシア人の宇宙物理学者イゴール・ノヴィコフは、〈我々はパラドックスが起きないように行動することを余儀なくされる〉と考えている」
「タイムパラドックスを解決するもう一つの案は、時間の川が滑らかに二手に分かれ、二つの宇宙ができるとするものだ」
 つまり「見えざる神の手」のようなものによって、タイムパラドックスが起きるような行動は我々の意思とは関係なく制限されるということ。もう一つは、並行宇宙は存在し、いつどこで誰がどのような行動をしたとしても、ただ単に別の世界が新たに誕生するだけ、とするものだ。これらの解釈は、実は実際のタイムトラベラーたちの行動に、大きく関係してくるのである。

ネット世界に出現するタイムトラベラー

 アメリカのApexTVという動画サイトが、最近、急成長している。その理由は、タイムトラベラーの動画にあるというのだ。元々この動画サイトは、エイリアン、UFO、ゴーストなどといった超常現象動画を多数、紹介していた。そして2016年4月からは、テレポーテーションの瞬間を思わせるような不思議な動画の情報が増えるという傾向はあった。中でもコンビニエンス・ストアのドアを通り抜ける男性の動画などは、非常に興味深い。このドア抜け動画の男性が、実はタイムトラベラーなのではないかと言われている。
 なぜならこの男性が店内に入り、再び出てくるまで、左上に記された年号がひっきりなしに2016年と2019年の間で入れ替わっているからだ(時刻表示は変わっていない)。
 こうした動画を盛んに紹介し始めたことで、タイムトラベラー自身がこのチャンネルに興味を示したようだ。同年、ApexTVに「未来から来た」と称する男が、世界の未来に関する警告を送ってきたのだ。その動画を9月に公開したところ、自分も未来から来た、または未来に行ったことがあるという人々の動画や音声が次々に送られてくるようになり、中にはインタビューに応じるケースも出てきた。そして2017年11月、かつてCIAに在籍していたというある人物が、ApexTVにコンタクトしてきた。彼は、タイムマシンで未来へ行った経験があるというのだ。

タイムマシン実験で未来世界に行かされた男

 「Time Traveler Who Has Been To The Year 2118 Speaks Out(2118年にタイムトラベルした人が語る)」という動画が、ApexTVで2017年11月16日に公開された。動画では元CIAのアレクサンダー・スミスと名乗る人物が、2118年に行ったと主張している。彼は変装用のラバーマスクを被っていて、素顔を明らかにしていない。また、インタビューはスカイプによるものだったという。つまり、スミスと直接会った者はいない。ネット上であっても素顔を明かしたくないということである。そうなれば、名前も当然、偽名である可能性が高い。
 スミスの言葉によれば、彼は元軍関係者で、最終的にはCIAで働き、それも特殊な立場にいたという。1981年にはCIAを退職し、地元で仕事をしていたが、突然、CIAからの男が二人、家にやってきた。彼らはスミスに一緒に来るように言い、出発については妻にも話してはいけないと口止めされた。スミスは目隠しをされて、軍の最高機密基地に連れていかれることになる。一種の拉致のようなものだが、それからスミスはタイムマシンの被験者に仕立て上げられたのだ。

 実はスミスはCIAで、空間と時間の制限についてテストするプロジェクトの話を聞いていた。そして、既にタイムマシンが作り上げられていることも知っていた。そんな彼だったが、実際にタイムマシンを見せられ、自分が被験者になるという話には、さすがにショックを受けたという。

 タイムマシンに乗り込むと、中は真っ暗で何も聞こえない。しばらくするとスミスは意識を失ってしまう。この後スミスは、病院のベッドで目を覚ますことになるのだが、その時の様子を動画の中で語っている。
「目が覚めると、病院のベッドに横たわっていました。私は、何か実験の失敗があって、まだ1981年にいるのだと思いました。周りを見回すと、部屋には誰もいません。ところが、さらに周りを見回すと、非常に変わった異質なものが目に入ります。たとえば、そこにはガラスのテーブルがありました。ただそれはテーブルトップのみで、浮いているのです。このテーブルトップの上には数個のコップがあり、そのうちの一つには水が一杯に入っているようでした。これは、1981年のどんな進歩したテクノロジーでもあり得ないことです。その後、一人の看護士が入ってきて、説明を始めました。彼女が言うには、私は道路脇で意識不明の状態で見つかったということでした。彼女は私が、自動車事故か何かで意識を失ったと思っていました。私は彼女に自分の話をしました。何があったのかを。すると、彼女は言いました。「それが起こったのは、いつですか?」
 私が1981年と言うと、彼女はこう言い返したのです。「今は2118年ですよ!」

 スミスによれば、2118年の一般知識として、タイムトラベル技術は2028年に公表されたことになっているという。従って、2118年の人々にとって、1981年からタイムトラベルしてくることはありえない。スミスはこの時点で精神に異常をきたしている人物と見なされてしまった。気晴らしにテレビでも見るように言われ、壁の前に浮いているガラス板がスクリーンに変じ、知らない番組が映し出された。チャンネルをニュース番組に変えると、日付が目に入った。そこには、2118年11月17日と出ていた。
 やがてスミスは、街を探索することを許された。地上を行き交っているのは徒歩と自転車の人たちだけで、車は全て空を飛んでいた。しかも、全てのビルが1981年当時の超高層ビルよりもずっと高いことに驚いた。街には人間と見分けのつかない、沢山のロボットがいた。違いといえば足がなく、宙に浮いていることだった。
 ロボットとは会話も可能だったので、そのうちの一体にどうしたらタイムトラベルができるかを尋ね、民間のタイムトラベルサービスを教えてもらった。その結果、スミスは現代に帰ってくることができたという。

 動画「あのタイムトラベラーが1982年から来た自分自身に出会う」では、スミスはタイムパラドックスについて語っている。実は彼(スミスA)は1982年に、2018年という未来へ行き、未来の自分(スミスB)に会っていたというのである。一方で、スミスAの今の自分=、今度は過去の自分(スミスC)が会いに来た。二人の自分が出会ってしまった以上、もし、過去の自分が会いに来なかったら、タイムパラドックスが起こる。ところが今回、彼らは動画を撮った。実は過去のスミスAが未来のスミスBに会いに行った時、動画は撮っていないのだ。もしイゴール・ノヴィコフが言うように、「我々はパラドックスが起きないように行動することを余儀なくされる」のだとしたら、この映像も見えない力に妨げられ、録画も配信も不可能だったはずなのだ。

タイムトラベラーが語る未来は食い違っている

 第三次世界大戦について語るタイムトラベラーは、かなりの数がいる。「2075年から来たタイムトラベラーが第三次世界大戦の詳細を述べる」という2018年2月に公開された動画に登場するマイケル・フィリップスと名乗る人物は、特に有名だ。彼は2043年イギリス生まれ。軍のタイムマシンを使う偵察隊所属だという彼が2018年にやってきた目的は、2019年3月に起きる戦争を阻止するためだという。
 2075年のある日のこと。政府のセクション18という部署から来たと名乗る人々が現れ、フィリップスはイギリス国防総省に連れていかれた。そこの格納庫で、8フィートほどの球状の物体を見せられ、タイムマシンだと説明されたというのだ。タイムマシンには、上下に二つのマイクロ特異点があり、それがマシンにパワーを与えている。これが重力を変形させ、時空の穴が作られるという。タイムトラベルでは、特異点のエネルギーが生み出す重力波を内側に向ける。逆に空間を移動する(瞬間移動する)時には、それを外側に向けて、その波に乗ればいいと、フィリップスは語る。すなわち、テレポーテーション(瞬間移動)とタイムトラベルは、ほとんど同じ原理の応用だったのだ。

 フィリップスは、こんなことも語っている。「2022年にロサンゼルスのカリフォルニアが、『BigOne』と後に呼ばれるM10.2の大地震に襲われた」
「2020年代の中頃に、我々は世界で初めて火星に着陸した。成し遂げたのはNASAではなく、イーロン・マスクだ。(アメリカの実業家。宇宙輸送を可能にするロケットを製造・開発かるスペースX社を2002年に起業)
 また、彼はタイムトラベル技術に関しても興味深いことを述べている。
「確か1947年に、アメリカ政府は宇宙船を捕らえた。この宇宙船に何ができて何ができないかを解析するには、2〜3年かかった。彼らは当時、宇宙船の技術を生かそうとしていた。しかしそれはうまくいかず、宇宙船は空間を移動するだけで、時間を移動せず、海岸から30〜40キロほど飛んだだけだった。この乗物が発見された時、乗組員は皆、その乗物と融合していた。嫌な光景だった。成功には程遠かったのだ。
 正式にタイムトラベルが発明され、完成されたのは1975年だ。第2次世界大戦などの、歴史上の重要な出来事を改変しようとする、いくつかの作戦があった。しかしそれらは成功しなかった。実際そのためにかなりの労力が注がれたが、事態をいっそう悪くしただけだった」

 フィリップスの言葉の中には、きわめて興味深い内容が含まれている。まず1947年に関してだが、これはロズウェルUFO墜落事件を指していることは間違いないだろう。また、実験機の乗員が機体と融合していたという話は、米海軍のレインボープロジェクトにおける軍艦エルドリッジ号のテレポート事件を彷彿とさせる。また、最後に語られていることも非常に興味深い。彼らは第2次世界大戦を阻止しようとしたが、できなかったというのだ。

 ちなみに日本にも自称タイムトラベラーは存在する。その中に原田(仮名)という人物がいる。2052年から2013年にやってきたと言う彼も、2021年に第3次世界大戦が起きたと言っているのだ。
 奇妙なのは、なぜ色々な世界線で、さほど離れていない時期に第3次世界大戦が起こるのか、ということだ。実はこれには一つの法則があるようだ。非常に大きな出来事の場合、別の世界線(パラレルワールド)に移っても、時期や原因を変えてそれは必ず起こるという性質があるようだ。その結果、複数のタイムトラベラーたちが、それぞれの世界線で体験した第3次世界大戦を防ぐべく、私たちのこの世界線にやってきているらしい。
 彼らはこの世界線で、これまで大戦勃発を防いできた。しかし、彼らのその行為が、また別の第3次世界大戦が待つ新しい世界線を生み出しているのかもしれない。
 それを完全に止めるは、原因となっている出来事の前まで遡り、改変をしなければならない。どこまでいってもきりがなく、実際には到底無理な相談だ。
 第2次世界大戦を防げなかったというのは、そのためだし、第3次世界大戦が起こらないように改変させるという試みも、根本原因までは遡れないのだ。

 タイムトラベルが可能であっても、タイムトラベラーたちの各々の世界線の歴史を改変させようという試みは、それによってまた新たな世界線を生み出すだけで、全ての世界線に共通する大きな出来事と、歴史となる宇宙の流れは、後追いの人間の作為や操作によっては結局変えられない―。第3次世界大戦を阻止するために、ここにやって来たと主張するタイムトラベラーたちの存在は、実はそのことを知らせているように思える。

タイムトラベラーからの警告 (その1)

 今、インターネット上で次々と名乗りをあげる「タイムトラベラー」たちがいる。人類に警告を与えるとして、第3次世界大戦を含む近未来の出来事を語り続ける彼ら。そのタイムトラベラーたちが目撃した未来とは何なのか。そもそも一般の科学常識では考えられないタイムトラベルというものが可能なのか。「タイムトラベラー」たちの出現は、2017年から加速度的に増えている。これは、タイムマシンの公開がいよいよ近くなってきたことと、我々の世界線は元より、それに近い全てのパラレルワールドの世界線において、タイムトラベラーたちが警告したくなるような悲惨な近未来が待ち受けている証拠なのかもしれない。

タイムパラドックスの二つの解釈

 タイムパラドックスは、物理学の最先端でも真剣に論じられているテーマだ。要するに、タイムマシンで時間軸を移動することで、歴史的・時間的な矛盾が生じることを言う。
 すなわち―過去に戻って、自分に会ったらどうなるのか、あるいは自分の祖父を殺したら自分の存在はどうなるのか。かのアインシュタインがタイムトラベルの可能性を示し、後に物理学者が並行宇宙(パラレルワールド)の存在や、タイムトラベルの実現性について本気で向かい合うようになると、必然的にこのタイムパラドックスが真剣に論じられるようになってきたのだ。この問いには、大きく二つの解釈がある。『パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ』という、理論物理学者ミチオ・カクの本には、その二つの解釈が紹介されている。
「まず、ロシア人の宇宙物理学者イゴール・ノヴィコフは、〈我々はパラドックスが起きないように行動することを余儀なくされる〉と考えている」
「タイムパラドックスを解決するもう一つの案は、時間の川が滑らかに二手に分かれ、二つの宇宙ができるとするものだ」
 つまり「見えざる神の手」のようなものによって、タイムパラドックスが起きるような行動は我々の意思とは関係なく制限されるということ。もう一つは、並行宇宙は存在し、いつどこで誰がどのような行動をしたとしても、ただ単に別の世界が新たに誕生するだけ、とするものだ。これらの解釈は、実は実際のタイムトラベラーたちの行動に、大きく関係してくるのである。

ネット世界に出現するタイムトラベラー

 アメリカのApexTVという動画サイトが、最近、急成長している。その理由は、タイムトラベラーの動画にあるというのだ。元々この動画サイトは、エイリアン、UFO、ゴーストなどといった超常現象動画を多数、紹介していた。そして2016年4月からは、テレポーテーションの瞬間を思わせるような不思議な動画の情報が増えるという傾向はあった。中でもコンビニエンス・ストアのドアを通り抜ける男性の動画などは、非常に興味深い。このドア抜け動画の男性が、実はタイムトラベラーなのではないかと言われている。
 なぜならこの男性が店内に入り、再び出てくるまで、左上に記された年号がひっきりなしに2016年と2019年の間で入れ替わっているからだ(時刻表示は変わっていない)。
 こうした動画を盛んに紹介し始めたことで、タイムトラベラー自身がこのチャンネルに興味を示したようだ。同年、ApexTVに「未来から来た」と称する男が、世界の未来に関する警告を送ってきたのだ。その動画を9月に公開したところ、自分も未来から来た、または未来に行ったことがあるという人々の動画や音声が次々に送られてくるようになり、中にはインタビューに応じるケースも出てきた。そして2017年11月、かつてCIAに在籍していたというある人物が、ApexTVにコンタクトしてきた。彼は、タイムマシンで未来へ行った経験があるというのだ。

タイムマシン実験で未来世界に行かされた男

 「Time Traveler Who Has Been To The Year 2118 Speaks Out(2118年にタイムトラベルした人が語る)」という動画が、ApexTVで2017年11月16日に公開された。動画では元CIAのアレクサンダー・スミスと名乗る人物が、2118年に行ったと主張している。彼は変装用のラバーマスクを被っていて、素顔を明らかにしていない。また、インタビューはスカイプによるものだったという。つまり、スミスと直接会った者はいない。ネット上であっても素顔を明かしたくないということである。そうなれば、名前も当然、偽名である可能性が高い。
 スミスの言葉によれば、彼は元軍関係者で、最終的にはCIAで働き、それも特殊な立場にいたという。1981年にはCIAを退職し、地元で仕事をしていたが、突然、CIAからの男が二人、家にやってきた。彼らはスミスに一緒に来るように言い、出発については妻にも話してはいけないと口止めされた。スミスは目隠しをされて、軍の最高機密基地に連れていかれることになる。一種の拉致のようなものだが、それからスミスはタイムマシンの被験者に仕立て上げられたのだ。

 実はスミスはCIAで、空間と時間の制限についてテストするプロジェクトの話を聞いていた。そして、既にタイムマシンが作り上げられていることも知っていた。そんな彼だったが、実際にタイムマシンを見せられ、自分が被験者になるという話には、さすがにショックを受けたという。

 タイムマシンに乗り込むと、中は真っ暗で何も聞こえない。しばらくするとスミスは意識を失ってしまう。この後スミスは、病院のベッドで目を覚ますことになるのだが、その時の様子を動画の中で語っている。
「目が覚めると、病院のベッドに横たわっていました。私は、何か実験の失敗があって、まだ1981年にいるのだと思いました。周りを見回すと、部屋には誰もいません。ところが、さらに周りを見回すと、非常に変わった異質なものが目に入ります。たとえば、そこにはガラスのテーブルがありました。ただそれはテーブルトップのみで、浮いているのです。このテーブルトップの上には数個のコップがあり、そのうちの一つには水が一杯に入っているようでした。これは、1981年のどんな進歩したテクノロジーでもあり得ないことです。その後、一人の看護士が入ってきて、説明を始めました。彼女が言うには、私は道路脇で意識不明の状態で見つかったということでした。彼女は私が、自動車事故か何かで意識を失ったと思っていました。私は彼女に自分の話をしました。何があったのかを。すると、彼女は言いました。「それが起こったのは、いつですか?」
 私が1981年と言うと、彼女はこう言い返したのです。「今は2118年ですよ!」

 スミスによれば、2118年の一般知識として、タイムトラベル技術は2028年に公表されたことになっているという。従って、2118年の人々にとって、1981年からタイムトラベルしてくることはありえない。スミスはこの時点で精神に異常をきたしている人物と見なされてしまった。気晴らしにテレビでも見るように言われ、壁の前に浮いているガラス板がスクリーンに変じ、知らない番組が映し出された。チャンネルをニュース番組に変えると、日付が目に入った。そこには、2118年11月17日と出ていた。
 やがてスミスは、街を探索することを許された。地上を行き交っているのは徒歩と自転車の人たちだけで、車は全て空を飛んでいた。しかも、全てのビルが1981年当時の超高層ビルよりもずっと高いことに驚いた。街には人間と見分けのつかない、沢山のロボットがいた。違いといえば足がなく、宙に浮いていることだった。
 ロボットとは会話も可能だったので、そのうちの一体にどうしたらタイムトラベルができるかを尋ね、民間のタイムトラベルサービスを教えてもらった。その結果、スミスは現代に帰ってくることができたという。

 動画「あのタイムトラベラーが1982年から来た自分自身に出会う」では、スミスはタイムパラドックスについて語っている。実は彼(スミスA)は1982年に、2018年という未来へ行き、未来の自分(スミスB)に会っていたというのである。一方で、スミスAの今の自分ニ 、今度は過去の自分(スミスC)が会いに来た。二人の自分が出会ってしまった以上、もし、過去の自分が会いに来なかったら、タイムパラドックスが起こる。ところが今回、彼らは動画を撮った。実は過去のスミスAが未来のスミスBに会いに行った時、動画は撮っていないのだ。もしイゴール・ノヴィコフが言うように、「我々はパラドックスが起きないように行動することを余儀なくされる」のだとしたら、この映像も見えない力に妨げられ、録画も配信も不可能だったはずなのだ。

タイムトラベラーが語る未来は食い違っている

 第三次世界大戦について語るタイムトラベラーは、かなりの数がいる。「2075年から来たタイムトラベラーが第三次世界大戦の詳細を述べる」という2018年2月に公開された動画に登場するマイケル・フィリップスと名乗る人物は、特に有名だ。彼は2043年イギリス生まれ。軍のタイムマシンを使う偵察隊所属だという彼が2018年にやってきた目的は、2019年3月に起きる戦争を阻止するためだという。
 2075年のある日のこと。政府のセクション18という部署から来たと名乗る人々が現れ、フィリップスはイギリス国防総省に連れていかれた。そこの格納庫で、8フィートほどの球状の物体を見せられ、タイムマシンだと説明されたというのだ。タイムマシンには、上下に二つのマイクロ特異点があり、それがマシンにパワーを与えている。これが重力を変形させ、時空の穴が作られるという。タイムトラベルでは、特異点のエネルギーが生み出す重力波を内側に向ける。逆に空間を移動する(瞬間移動する)時には、それを外側に向けて、その波に乗ればいいと、フィリップスは語る。すなわち、テレポーテーション(瞬間移動)とタイムトラベルは、ほとんど同じ原理の応用だったのだ。

 フィリップスは、こんなことも語っている。「2022年にロサンゼルスのカリフォルニアが、『BigOne』と後に呼ばれるM10.2の大地震に襲われた」
「2020年代の中頃に、我々は世界で初めて火星に着陸した。成し遂げたのはNASAではなく、イーロン・マスクだ。(アメリカの実業家。宇宙輸送を可能にするロケットを製造・開発かるスペースX社を2002年に起業)
 また、彼はタイムトラベル技術に関しても興味深いことを述べている。
「確か1947年に、アメリカ政府は宇宙船を捕らえた。この宇宙船に何ができて何ができないかを解析するには、2〜3年かかった。彼らは当時、宇宙船の技術を生かそうとしていた。しかしそれはうまくいかず、宇宙船は空間を移動するだけで、時間を移動せず、海岸から30〜40キロほど飛んだだけだった。この乗物が発見された時、乗組員は皆、その乗物と融合していた。嫌な光景だった。成功には程遠かったのだ。
 正式にタイムトラベルが発明され、完成されたのは1975年だ。第2次世界大戦などの、歴史上の重要な出来事を改変しようとする、いくつかの作戦があった。しかしそれらは成功しなかった。実際そのためにかなりの労力が注がれたが、事態をいっそう悪くしただけだった」

 フィリップスの言葉の中には、きわめて興味深い内容が含まれている。まず1947年に関してだが、これはロズウェルUFO墜落事件を指していることは間違いないだろう。また、実験機の乗員が機体と融合していたという話は、米海軍のレインボープロジェクトにおける軍艦エルドリッジ号のテレポート事件を彷彿とさせる。また、最後に語られていることも非常に興味深い。彼らは第2次世界大戦を阻止しようとしたが、できなかったというのだ。

 ちなみに日本にも自称タイムトラベラーは存在する。その中に原田(仮名)という人物がいる。2052年から2013年にやってきたと言う彼も、2021年に第3次世界大戦が起きたと言っているのだ。
 奇妙なのは、なぜ色々な世界線で、さほど離れていない時期に第3次世界大戦が起こるのか、ということだ。実はこれには一つの法則があるようだ。非常に大きな出来事の場合、別の世界線(パラレルワールド)に移っても、時期や原因を変えてそれは必ず起こるという性質があるようだ。その結果、複数のタイムトラベラーたちが、それぞれの世界線で体験した第3次世界大戦を防ぐべく、私たちのこの世界線にやってきているらしい。
 彼らはこの世界線で、これまで大戦勃発を防いできた。しかし、彼らのその行為が、また別の第3次世界大戦が待つ新しい世界線を生み出しているのかもしれない。
 それを完全に止めるは、原因となっている出来事の前まで遡り、改変をしなければならない。どこまでいってもきりがなく、実際には到底無理な相談だ。
 第2次世界大戦を防げなかったというのは、そのためだし、第3次世界大戦が起こらないように改変させるという試みも、根本原因までは遡れないのだ。

 タイムトラベルが可能であっても、タイムトラベラーたちの各々の世界線の歴史を改変させようという試みは、それによってまた新たな世界線を生み出すだけで、全ての世界線に共通する大きな出来事と、歴史となる宇宙の流れは、後追いの人間の作為や操作によっては結局変えられない―。第3次世界大戦を阻止するために、ここにやって来たと主張するタイムトラベラーたちの存在は、実はそのことを知らせているように思える。

 

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