〜メッセージ〜

日本は大麻バッシング天国


 10月25日午後、元女優の高樹沙耶さんが、石垣島で大麻所持の現行犯で逮捕―というニュースがテレビで流れた。身柄は沖縄県警に移送され、同居していた男性の2人も同時に逮捕されたとのこと。
 一部のニュースの解説によると、関西の方の麻取が数年前から内偵を進め、現行犯で逮捕する機を狙っていたという。これ自体、ゾッとする話だが、高樹沙耶さんのような目立つ有名人が、大麻肯定論を正面から堂々と主張することは、危険で無防備過ぎることだった。当然、それだけで世間からは「大麻を喫っているのではないか」という目で見られることを覚悟しなければならない。

「元女優が大麻で逮捕」のニュースは、待ってましたとばかりに、テレビのワイドショー、芸能メディアの格好の餌食となった。ワイドショーには、下世話なタイトルが並ぶ、並ぶ―高樹沙耶が大麻で逮捕、女1、男4 石垣島での共同生活とは―元女優がなぜ 石垣島で宿経営、自然生活&男らと同居 医療用大麻の解禁を訴えた謎―石垣島フシギなエコライフ 大麻を巡り麻薬取締官と生バトル

 過去に高樹沙耶さんが医療用大麻の有用性について真剣に語っているシーンも、テレビのワイドショーにかかると、まるで空しいピエロだ。大麻で逮捕、イコール心の闇とか、転落人生と勝手に決めつける。
 また、いかに医療用大麻や産業用、資源としての大麻が有用であるにしても、心身を蝕む違法薬物である大麻を喫ることは良くない等と戒めてみせる識者、ジャーナリスト、キャスターの相変わらずの無知と、見ざる、言わざるの自己規制ぶりには呆れる。
 大麻は心身を蝕む麻薬? 嘘とデタラメを言うのもいいかげんにしてほしい。今時、先進国のメディアの中で、こんなことを言っているのは日本だけだ。大麻を一度も喫ったことも、その実物を見たり触ったりしたこともなく、きちんと調査、検証したこともない人間が、よくもそれほど確信的に大麻についてモノが言えるものだ。

 どのメディアも、大麻にはどんな危険性、有害性があるのか、最も基本的な事実については触れない。これはとてもおかしなことだ。
 大麻を持っていたから、使用したから「悪い」「悪い」と大騒ぎするばかりで、大麻のどこが「悪い」のか、本当に「悪い」のか、その大元の事実については曖昧なまま、触れようとしない。

 元女優が大麻を吸っていたからといって、それがなぜメディアからこれほどバッシングを受け、違法であるという一点で、凶悪犯のような扱いを受けなければならないのか。そのことが他人や何かに事実上の危害や被害を与えたとでもいうのか。
 実名報道に加え、重大な人権侵害が堂々と罷り通り、ほとんど人格攻撃のような報道の様をメディアも大衆も、おかしいとも思わず、当然の罰のように見ている。

 はっきりとさせておくが、私は大麻の所持・使用が現在の法の下では違法であることを承知の上で、高樹沙耶さんらの医療大麻に関する主張には全面的に賛成するし、密かに大麻を喫っていたことを責めたり、咎めたりする気もないし、その資格もない人間だ。
 大麻は、厚労省やメディアが言うほど悪いものではない。それよりずっと悪いのは、単純所持だけで重い刑罰を科している独裁国家並みの現行の法律の方だ。

 大麻事犯報道の度に痛感するが、今のテレビ、新聞の大麻に関する報道姿勢は、覚醒剤と同じ“ダメ、ゼッタイ”一点張りで、それ以外の異見、異論が全く出てこないことは、世界の芻勢から見ても異常だ。特にこの10年、大麻と言えば、危険ドラッグや覚醒剤と同等の危険な薬物というイメージが、メディアの警察の先棒を担いだプロパガンダもあって、世間に植えつけられてしまっている。

 私の記憶する限り、80年代半ばまでは、これほどではなかった。
 新聞の論壇やコラムの記事では、「大麻は麻薬ではなく、薬草である」と肯定的に捉える学者、専門家の声が載せられていた。
 そういう意見や異論も、今ではほぼ完全に排斥された。テレビ、新聞、雑誌等、一般のメディアにおいては、大麻を肯定的な視点で捉えることは今や完全にタブーだ。大麻について少しでも肯定的なことをつぶやこうものなら、周囲から所持・使用を疑われて、警察からも目をつけられて、逮捕されることになる―と、体験者も多くいるだろう芸能人、アーティスト、ミュージシャン、ジャーナリスト、作家、政治家らも、戦々恐々として押し黙っている。

 今回の件のように、高樹沙耶さんのような元女優という目立つ人を逮捕して見せしめにすることで、それを見ている国民に対して恐怖を与え、その無意識界を制圧、支配するという効果を発揮している。かように昭和23年(1948年)に、アメリカの命により制定された大麻取締法―全く時代後れの法律が、現在に至るまで国会でも、国民の間でも、その中身を一度もまともに検証・論議されることもなく、国民の意識を恐怖の下に圧迫、制圧し続けている。

 メディアは大麻をやり玉に挙げても、大麻取締法の中身については何も触れない。大麻取締法には、大麻の所持や栽培で、具体的にどのような弊害があるのか、そこで守られる保護法益とは何なのかという立法事実が記されていない。そして立法目的も書いていない。
 したがって、大麻取締法は形式上も欠陥法であって、憲法の適正手続きの保障という考え方からすると、元より無効であると言えるのだ。考えてもみてほしい。その都度、テロ事件のように報道される大麻事犯だが、そこにはどこにも被害者がいないのだ。そして、逮捕される被疑者自身が、最大の被害者となっている。

 この国では、なぜかくも大麻の規制が厳しく、少量の所持だけで凶悪犯並みの扱いを受ける犯罪とされるのか。少量の所持・使用だけで刑事事件として扱われるのは、主要先進国の中では日本だけなのだ。(アメリカ、オーストラリア、カナダ、オランダ、デンマーク、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、ポルトガル、イギリス、スイス、ベルギーは、軽犯罪もしくは非犯罪化、合法化)
 日本では単純所持で5年、栽培について7年以下の懲役刑が定められている。たとえば殺人予備罪、暴行罪、脅迫罪で2年以下の懲役、業務上過失致死罪で5年以下の懲役、または50万円の罰金―他の犯罪と比較してみても、非常に重い刑罰が科せられているのだ。

 大麻は薬学上においても、高い耐性上昇と中毒性が生じるとされる「麻薬」ではない。ちなみに、いわゆる危険ドラッグも覚醒剤も、正確に言えば「麻薬」ではない。麻薬とは分類上は、強力な中毒性を持つ阿片、モルヒネ、ヘロイン、コカイン等のアルカロイド系の薬物を指している。
 日本の法律においても、「大麻」と「覚醒剤」、「麻薬」とは別のものとして区別されている。
 米国立薬害研究所の評価によると、他の薬物―ニコチン、ヘロイン、コカイン、アルコール、カフェイン―との比較で、大麻は禁断症状、耐性上昇、依存性、陶酔度に関して、いずれも最も安全である数値を示した。

 大麻はCBD(カンナビディオール)やCBN(カンナビノン)といったカンナビノイドと呼ばれる計61種類の向精神性有機物質を有していて、これらのカンナビノイドの含有量や配合バランスも、大麻の作用に少なからず影響を与えていることは間違いない。
 しかし、実際のところ、その作用のほとんどをもたらしている活性化合物は1種類であり、それが通称THCと呼ばれる「デルタ9テトラハイドロカンナビノール」である。

 大麻の精神作用は、アッパー、ダウナー、サイケデリックの3つに類別することができ、他のドラッグとは明らかに異なっている。
 ある人は陽気になって、笑い転げたり、活動的になったり、ある人はリラックスして心が静かに落ちつき、またある人は、時間と空間の変容を伴った幻覚(通常は見えないもの)を体験したりする。
 つまり、セットとセッティング(心の状態と周囲の環境)によって大きく左右される。

 テレビの取材で厚労省の麻取の専門官という婆さんがこう言っている。まるで自ら体験したかのように。
「知覚、感覚が変わります。時間と空間の感覚も。より強い幻覚症状に陥ると、完全に集中力も記憶も失うことになります」

 ある部分、当たっているふしもあるが、体験ではなく、被験者のデータと推測でそう言っているだけなら、よくぞ見てきたように言いにけりだ。大麻でどんなに陶酔状態になったからといって、完全に集中力や記憶を失うなんてことは、けっしてない。
 麻取の専門官がいみじくも言っている。―知覚、感覚が変わる。時間と空間の感覚も。つまり、未知の感覚を得、未知の世界が見えるらしい。そういう感覚、意識自体が悪であり、この社会の“みんな一緒”の和を乱す異物、異分子と見る空気が官民問わず、浸透している。だから、有名人、芸能人が大麻ごときで逮捕されても、一般の人々は、バッシングを拡散こそすれ、同情はおろか、おかしいとか理不尽なことだとは全然思わないのだ。

 ポン(山田塊也)亡き後、堂々と大麻の素晴らしさを説くメッセンジャーは、見渡してみても、ほとんどいなくなった。今時、そんなことを大っぴらに語るのは、誰にとってもいささかリスクが高すぎる。今は、あえて大麻のことは「秘すれば花」と、伏せておくのが賢明な判断と言えるかもしれない。
 私の知る周辺でも、大麻について、その有用性や非犯罪化をメディアや司法、行政に対して、いくら言葉を尽くして訴えたり、主張しても、この国では何も変わらないという状況を何十年も見てきた。そして分かってきた。それが心身に合うのは、その感覚を求めているのは、この国の中ではあくまでも少数派で、大多数の人々の頭―意識は、大麻の波動に合わない、必要ともしてないのではないかと。

 ただ、小さな声でも、これだけは言わせてほしい。―食用、資源、神具、医療、瞑想に至るまで、大麻は、古から人類にとって無二の貴重な資源で、伴侶というべき植物であった。そしてその関係は未来と次代へ通じているものでもある。それは宇宙からの贈り物というのがふさわしい、地球にもたらされた奇跡の種なのだ。

 他の誰が声を上げなくても、私は獄中の高樹沙耶さんに「負けないで―」と、心からのエールを贈りたい。文字通り、どん底と言えるような境遇にあろうと、宇宙はけっしてあなたを見捨てはしない。
 あなたには、刑罰を受けるべき罪や犯ちなど何一つない。直接、面識がなくても、あなたは私の同志でもある。その一点において、メディアが何を言おうと、私は同志であるあなたにエールを贈る。

    闇夜のカラスは けっしてあなたを忘れない
    闇夜のカラスは どんなところまでも降りていく
    闇夜のカラスは どこまでもあなたを見守っている

      オーム・シャンティー! 心身清浄
                        ガリバー拝




 

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