日記31

BIG ISLAND(ハワイ島〕その二

美味しい食事とリラクゼーションされた2日間を過ごしたあと、次の目的地に向かった。コナの自然食品センターでパンと果物と水を買いこんで、ジンジャーヒルからそう遠くないHo’okena Beach(ホーケナビーチ)が3日目の宿泊先だ。

3時ごろビーチについて指定された場所にテントを張る。日本でキャンプをしたことがないので、詳しいことは言えないが、八丈島のキャンプ場を訪れたことがある。シーズン中だったこともあってとても密集していて足の踏み場もないほどテントが隣接していたのを覚えている。ここのビーチはキャンピングの数が限定されていて、もちろん事前にインターネットで滞在許可を取らなければならない。www.co.hawaii.hi.us

夏休みも終わった9月の月曜日だったのでキャンプ場には7〜8テントが程よい感覚で並んでいた。

私は野営が好きだ。本当はテントも張らずただ寝袋だけで地面に横たわりたいと思うほど。八丈島にいた頃、年に一度6月の誕生日の頃に家から毛布と寝袋を持って海岸べりの断崖絶壁のちょっとだけ平地のところで一晩寝るのが自分の誕生日の儀式だった。梅雨の晴れ間を狙っての野営なのでいつも決行はその日の夕方にならないとはっきり決まらない。イザ決行するとなると懐中電灯と水をリュックに詰め込んで、そしてその頃には猫も犬もいたので、私が出かけると犬も猫も全員ついて来た。4〜5匹の犬猫と暗い海岸の道を抜けてその絶壁の20畳ほどの平地に出て、寝袋に横になる。後は目が覚めるたびに満天の星がゆっくりと位置を変えてゆくのを見つめて、又しばらく眠って、、体がごつごつの石に痛くなり始める頃曙が東の空を染め始めて、海の彼方から朝日が昇るのを眺めるのだった。猫たちはほとんどが私の寝袋の中に入ってきて窮屈でしょうがない。だが真っ暗な夜の森でただ一人で過ごすよりは仲間がいたほうが心強いし、自分を慕って散歩にまで着いてきてくれる犬と猫たちには、無償の愛というものの気高さを教えられた気がする。

あたりが暗くなって、月の光が唯一の光源となった頃。サーチライトかと思えるほど強い光のライトを額につけた人影がキャンプ場に現われて、一つ一つのテントを訪ねている。無許可でキャンピングしている人が居ないか調べに来たのだ。私のテントの前に来て名前を尋ねる、答えるとノートに同じ申請者の名前を見つけてペンでチェックして『Have a Goodnight!』といって次のテントへ。

久しぶりのキャンプ生活は泳ぐ事と日光浴を存分に味わった。日中はテントから100メートルも離れていない波打ち際まで裸足で行くのも足の裏が暑くてあわてて砂浜を駆けて水に飛び込むのだ。泳いで冷えた体を砂浜に横たえながら、「ああ、また皺が増えてしまう」チラリとじゅんオネエさまの真っ白い美肌を思い出した。私にとって人生で一番好きなことが、砂浜に寝そべって冷えた体をお日様に温めてもらうことなのだ。腹ばいになって暖かい砂をお腹に感じて、背中に日差しを感じて頭を真っ白にすることが、疲れもストレスも消えて『あぁ〜気持ちがいい!』心から「あぁ気持ちがいい!」

ホーケナビーチはノートパソコンよりも大きそうな魚が浅瀬でも群れを成して泳いでいるし、亀もゆらゆらしているし、、やはりここでも私は声を出した。ただし、海中で

若い頃はカナヅチだった私が八丈島で覚えた泳ぎは水中メガネと時代遅れのゴムの足ヒレが必須で、今でもそれらがないと浮くことは出来るのだが前に進まない。まるで溺れているかのように手をばたばたさせながら浮き上がって息をついて又水中にもぐって水の中で歌うのだ。水の中で息を吐くときに声を出してメロディーをつけて、あいしてる〜♪なんて言葉にしても自分以外の人には何を言っているか全くわからない。でも楽しいので歌うのだ。歌い始めると心なしか魚が近くまで来てくれるような気がする。もちろん私の声は聞こえていると思う。水中下でどのくらいの距離まで私の声が魚たちに聞こえているのかわからないが、いつも愛の想いをこめて人魚たちにも伝わるように歌う。そして歌いながらだとだいぶ長い間水の中に留まっていられるのだ。メガネも足ヒレもつけないで泳いでいるときには溺れそうな気分で5分も海中にいられない私なのです。

最後の朝、テントをたたんでいるとキャンプ場の人たちが何とはなしに色めきだって沖を眺めている。隣にテントを張っていたカップルも今朝出発する様子でテントをたたんでいたのだが、シュノーケルとフィンをつかんで波打ち際に走ってゆく、沖を見ると数十頭のイルカが入り江に入ってきてジャンプなどをして遊んでいた。カヤックで沖に乗り出す人や、泳ぎに自信のある人たちはシュノーケリングで彼らが遊んでいるところに向かってゆく。私も行きたいが、ちょっと遠すぎて自分の泳げる距離ではない。でもせめてイルカたちに歌を聞かせてあげたくて、意を決して海に入った。歌いながらゆっくりと泳いでいく、200メートルほど泳いで、まだイルカたちが遊んでいるところまではだいぶ距離がありそうだ、きっとここで歌えば彼らにも聞こえるはず、そして昨日の魚の群れのように聴きに来てくれるかもしれない。そう思いながら歌った。チラッと岸を見ると単独では今までの自分の人生で一番遠距離を泳いできたのがわかった。「イルカさぁ〜ん、ありがとう、愛しているよ」と歌った。そしてもうこれ以上水の中に居るのは無理だとあきらめて引き返し始めた。岸に泳ぎ着くのも大変だったけどやっとたどり着いてシャワーを浴びて又帰り支度を始めていると。キャンプ場の人たちが小さな歓声を上げた。イルカたちの群れが岸辺にどんどん近ついて、ちょうど私が歌っていた場所あたりまで動いてきたのだ。そこまでなら、子供たちだって泳いでゆける距離だ。お父さんとブギーボードに乗って4〜5歳の女の子が浮き袋をつけて海に入って行く。私ももう一度歌いにいきたかったが、帰る飛行機の時間が迫っていて、後ろ髪を惹かれる思いで、車に乗り込んだ。帰り際イルカたちがこんなに岸辺に近づいた事が今までにはなかったことを人々の話し振りから知った。私の歌を聞きにきてくれたのに違いない。そう思った。

いつか、もっと近くで出会えるのだと思う。これからも海の中で愛の歌を歌ってゆこう。

自分が泳いだ事と、帰り支度に精一杯で岸辺で遊ぶイルカたちの写真を撮るのを忘れたのが・・・う〜ん残念


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