57. 『アナナイ通信2号』の発行

アナナイ通信表紙この欄の No.40(08.1.28)で予告した『アナナイ通信2号』は、4月中に編集を終え、印刷寸前だったのだが、執筆者の1人が原稿を書き直すとゴネて、結局6ヶ月も発行を遅らせてしまった。
 そのため、ドキュメント「麻をめぐる40年の闇」は、07年11月のラグビー部学生の大麻事件まで、今年の事件は記録なし。また「麻声民語」も、オバマかヒラリーかなどと、今になっては時代遅れの話題になってしまった。もっとも執筆時点では大統領選挙への関心さえ吹っ飛ぶほどの米国発金融恐慌が起こることなど、予測もしていなかったが。
 サブプライムローンのドミノ倒しが加速して、たった1年でリーマン・ブラザースが倒産し、ついに資本主義社会の崩壊さえ前兆が見えてきた。
 1991年に共産主義ソ連が崩壊して間もなく、桂川直文君からラビ・バドラというインド系アメリカ人経済学者の書いた本を紹介されたことがある。ソ連全盛の冷戦時代に、世界で唯1人、ソ連の崩壊を予言した学者だったが、その当時は誰からも相手にされなかった。ところがソ連が崩壊し、アメリカの一極覇権が確立するや「次は資本主義も崩壊するだろう」と予言して、今度はベストセラーになった。
 バランスの一方が消滅すれば、当然バランスを失った他方も消滅するという理屈だ。案の定、共産主義というブレーキを失った資本主義は、市場原理主義などという「弱肉強食の論理」をグローバル化し、金が金を産む金融経済が実体経済をふり回し、人間性を疎外し、人間の精神を未開野蛮まで退化させて、自業自得でパンクしてしまった。
 ラビ・バドラは人類の精神史をインドのカースト制度に見立て、神々の支配した古代をバラモン(僧侶)の時代、武力の支配した中世、近世をクシャトリヤ(武士)の時代、経済の支配した近代をヴァイシャ(商人)の時代とし、この資本主義という守銭奴化の時代の末に、ポスト近代であるシュードラ(労働者、無産者)の時代がやってくるとしている。
 それがどのような時代かは、ラビ・バドラの予言より更に20年前、60年代後半、我々ヒッピーが予言した「文明の死」が、いよいよ悶絶のクライマックスを迎えることで推測されよう。
 「文明の死」とは、言うまでもなく西洋物質文明の死であり、資本主義の発展が生み出した大量消費文明の死である。それは果てしない自然破壊と自然界からの無限の搾取と収奪に基く文明であり、それはまた大量のゴミと汚染の元凶でもある。
 資本主義の崩壊と文明の死は、凄まじい混乱と悲惨をもたらすだろう。何よりも食糧危機は深刻である。飢えが地球上を襲うのだ。だからヒッピーは言ったじゃないか。「ドロップアウトして、自然に帰れ、自給自足からやり直そう!」と。すると一億中流意識の小市民は「ヒッピーは社会的変質者で、麻薬中毒で、フリーセックスで、無責任な非国民で、人間のクズだ!」と言って差別した。
 しかしヒッピーたちは大麻を吸いながら、「ラヴ&ピース」という意識進化の頂点をめざして歩みだしたのだ。以来40年にも及ぶ闇の中を。そして40年目の年末に、ひょっとしたら「麻の戦士」桂川君が、仮釈放で出所してくるかも知れない。

 『アナナイ通信 2号』 08年4月発行
 定価500円 送料150円
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