52. 夜の「大麻」大捜査網

 「麻声民語49」で報告したように、6月に長瀞キャンプ場で開催された「第3回てのひらまつり」の3日目の朝(私の不在中)、通報があったとして警察官7〜8人が会場に踏み込み、大麻の捜査をしたが、ブツが出なくて引き上げて行った。そこで私は「ケータイの犬(密告者)」たちに油断禁物と、警鐘を鳴らしておいた。
 それから2ヶ月後の8月17日、隣の群馬県はみなかみ町キャンプ場で開かれたレイヴ会場で、男女8名が大麻やMDMAなどの所持、使用で逮捕された。当然、これも通報によるものと思われるが、300人のパーティに警察官200人を動員したというから、まさにテロ対策並みの捜査網である。
 キャンプインによるライヴまつりが、各地で開催されるようになったのは、「88いのちの祭り」以降の20年間であり、野外のレイヴパーティが盛んになったのは、「レインボー2000」以降の12年間である。この間、実に多くのまつりとパーティが開催されて来たが、警察官(私服)は会場に潜入しても捜査令状がないから、大麻などの現行犯逮捕は不可能だった。ただしまつりやパーティの帰路を待伏せ、強制的に検査して、現行犯で逮捕するという例はあった。
 ところが今年になって、会場にケータイの犬を潜入させ、大麻などのドラッグ情況を通報させ、待機させた大量の警察官を動員するという、計略的な捜査を始めたのだ。いよいよ警察国家の時代である。
 警察発表によれば、今年の大麻の押収量はすでに例年の倍以上だという。7月17日には、大麻180キロ(末端価格7億2千万円)で、東京の会社員と中国籍の女子大生の2名が逮捕された。お茶に偽装し、中国から密輸したらしいが、大麻不法所持による1回の押収量としては過去最多だという。
 大麻の需要が増大するに従って、大麻密輸のスケールはますます大きくなり、プロの運び屋たちを暗躍させるだろう。なにしろ大麻で大金を稼げる国など、世界中で日本だけなのだから。大麻取締法は暴力団などの組織犯罪を増加させる一方である。
 これに対して大麻規制のない中国では、大麻犯罪はゼロである。只今開催中の北京オリンピックでは、選手も役員も、サポーターや観光客も、たっぷり大麻を吸って楽しんでいることだろう。インターネットの大麻情報によって、海外の客人向けに、中国産のハイブリッドが出回っているに違いない。
 すでに長野冬期オリンピックにおいて、メダル選手の大麻吸飲が問題になったが、IOC(国際オリンピック協会)は、メダルの返却を求めず、大麻はドーピングの対象から外されたのだ。要するに大麻は、スポーツ競技に何ら支障がないものと判断されたのである。
 8月18日、大相撲のロシア出身力士岩の鵬(20)が、落した財布の中に大麻成分0.368グラム入りのたばこが入っていたとして逮捕された。180キロの密輸でも、0.368グラムの所持でも、大麻となればマスコミは大はしゃぎで警察情報を垂れ流す。
 しかし大麻吸飲を非犯罪化したロシアで、大麻の良さを知って育った若者にとって、異国の国技という超特殊世界で生きる緊張を緩和するために、少量の大麻を使用することが、北の湖理事長の言うように「社会人としてあってはならないこと」なのだろうか?
 これは日本人が禁酒国に行って、密かに酒を飲んで逮捕されたようなものだ。しかしイスラム教国家でも、外国人の酒に対してはもっと寛大であり、0.3グラムで逮捕などという日本の大麻規制は異常である。「日本の常識は世界の非常識」とはこのことだ。
 日本という警察国家は、世界の非常識の上に成立しているのである。

                                     (8.20)


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