34. なぜ奴らは大麻を憎むのか?

非合法ドラッグのうち、ヘロインやコカインなどの麻薬や、シャブなどの覚せい剤などのハードドラッグについては、よほど組織的な犯罪でもない限り、めったに新聞記事にもならないが、ソフトドラッグの大麻については、新聞各紙が全国版、地方版を通して、ほとんど定期的に警察情報たれ流しの記事を掲載している。
 関東地方の「朝日新聞」によれば、埼玉県警は10月19日、行田市に住む観光バス運転手(38)を、大麻所持0.5グラムで現行犯逮捕した。また警視庁は10月23日新宿区に住む鉄道運転手兼車掌(34)を、大麻樹脂所持0.38グラムで現行犯逮捕した。新聞には実名、年齢、住所、職業、勤務先の会社名までが公表された。共に1グラム未満、ほんの一服程度で、会社はクビ、社会的制裁は量り知れないだろう。
 9月に新宿歌舞伎町の路上で現行犯逮捕された作家嶽本野ばら氏の場合、ポケットに入っていた大麻は0.22グラム、茶匙一杯分である。それなのに朝日新聞は社会面に4段抜きの顔写真入りで報道したのである。いかに有名人の見せしめとはいえ、大麻0.22グラムで大事件とは、世界の常識を唖然とさせるような未開野蛮そのものではないか。やがてプルトニウム並みの耳かき何杯分とか。
 「大麻はあらゆるドラッグの最初の踏み石であり、そこからハードドラッグに手を出し、麻薬犯罪が増加する。従って水際作戦として大麻を厳しく取締るのだ」と官憲はのたまう。しかしこの「踏み石理論」は科学的にも否定されており、社会的には大麻の取締りが逆に麻薬犯罪を増加させているのである。なぜなら大麻の入手が困難なため、ユーザーたちはブラック・マーケットに接触し、グラム8000円もする大麻と共に、売人からシャブやコカインなどを買わされ、やがて依存症になり、ジャンキーにされるのだ。
 もし大麻が解禁されたら、ブラック・マーケットへ接近する必要も、ハードドラッグにはまることもなく、麻薬犯罪が減少するのは、ヨーロッパ先進国の先例が示している通りである。
 そのような実態を百も承知のはずなのに、「麻取り」をはじめとする官憲と御用マスコミが、なぜ大麻に対してかくも仰々しく騒ぎ立てるのか。それはウソだからである。大麻が有害だというウソがバレないように、常にウソの上塗りをし、「ウソも百回つけばホントになる」という論理で、官民一体になってペテンを続けているのだ。
 だから官憲が最も警戒し、脅威する存在とは、大麻の大ウソを見破っている大麻吸いなのだ。なぜなら大麻のウソは国家権力の大ウソに通じているからだ。
 映画「イージーライダー」のシナリオを書いたビート作家サリー・サザーンは、半世紀も前に短編小説『レット・ダート・マリファナ』の中で言っている。
 「マリファナでハイになれば、ペテンやサギ、クソみたいな大ウソの全てが透けて見えて、その内側にある真実が見えるんだ」
                                  (10.28)


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