26. 大麻自由化を占う
 今年は憲法施行60周年の記念すべき年だが、憲法改定をめざす国民投票法が、世論の強い反対を押しきって自民、公明与党の数の横暴によって成立し、3年後には国民投票が施行されることになった。「戦後レジームからの脱却」を謳う安倍首相の改憲理由は、第一にそれが占領米軍からの押しつけであること、第二にそれが時代にそぐわないこと、だという。
 しかし押しつけであろうとなかろうと、アメリカ人がつくろうと日本人がつくろうと、良いものは良く、悪いものは悪いのだ。第2次大戦では2000万人を殺し、300万人を殺された日本が、戦後の平和と繁栄を築いたのは、憲法9条の存在なくしてはありえなかった。もちろん、その平和は米軍の核傘下の擬似平和であり、その繁栄は朝鮮戦争やベトナム戦争など、アメリカの戦争特需によるものであるが。
 しかし時代にそぐうもそぐわないも、武力によらない世界平和こそは人類の理想であり、問題は現実をいかに理想に近づけてゆくかであって、現実のために理想を捨てることではない。そこで安倍首相の言う「時代」即ち、世界の現実を見てみよう。
 市場原理主義のもとにエリートがすべてをぶん取り、非エリートはあたかもロボットか道具のように扱われ、弱者は切り捨てられるというネオリベラリズム(新自由主義)は、80年代のレーガン、サッチャー政権時代にはじまった。90年代は社会主義の崩壊によって市場経済がグローバルに広がり、ネオリベラリズムは先進国、途上国を問わず、世界大に格差を拡大し、貧困を増大させた。
 日本ではバブル崩壊と「失われた10年」の後、小泉政権が20年遅れてネオリベラリズムを導入し、郵政民営化など企業の都合を最優先した構造改革を行った。
 世界制覇をめざすアメリカ帝国の21世紀は、9.11同時多発テロによって激烈な幕が明けた。共和党ブッシュ大統領とネオコン(新保守主義)一派は、国連の反対を押しきり、国際世論を無視してアフガニスタンとイラクに一連の対テロ戦争を強行した。しかし戦争の大義はくずれ、イラク国内は収拾のつかない混乱状況に陥った。
 かくてイラク戦争は大失敗を招き、戦争で息子を失ったシンディ・シーハンさんらの粘り強い座りこみ反戦運動や、格差の拡大と貧困の増大に抗議する若者たちの反グローバリゼーションの大規模なデモなどによって、昨年の中間選挙では12年ぶりに民主党が圧勝した。その結果、ブッシュ政権はもはやレームダック(死に体)となり、ラムズフェルド国防長官が解任されるなど、ネオコン一派の敗北は決定的になった。そして米国とともに唯一イラクに攻め入った英国のブレア首相も退陣を余儀なくされた。
 ブッシュ・ネオコンが敗北する一方、「米国の裏庭」と呼ばれ、政治的にも経済的にも米国に従属してきたラテンアメリカの国々が、貧困の根絶と格差の解消をめざして、次々と反米・社会主義政権を樹立し、もはや従来のように米国仕掛けのクーデターでは覆すことができなくなった。かつてボリビアのジャングルで戦死したゲリラ戦士チェ・ゲバラの「国境を越える革命」の種子が、40年の歳月を経て爆発的に花を咲かせ実を結んだのである。世界は今大きな転換期を迎えているのだ。
 かくて日本のネオコン安倍首相が、時代にそぐわないからといって9条を改憲し、戦争のできる国にしようというのは、すでに破綻しかかっている米国の一極支配という戦略に寄りかかっているからである。戦争中毒で落ち目の米国に追従し、朝鮮や中国をはじめ躍進するアジア諸国には排外主義でのぞむ日本のナショナリズムの歪みは、時代の趨勢に逆行し、ますます世界から孤立してしまうだろう。
 かてて加えて、地球温暖化は北極、南極、グリーンランドなどの氷を溶かし、海面を上昇させ、熱波や集中豪雨などの異常気象、台風や竜巻の大型化、洪水、山火事、旱魃、砂漠化、水不足、食料危機、動植物の絶滅などを招き、人類滅亡はカウントダウンに入ったとまで言われているのに、このたびドイツで開かれたG8サミットに出席した安倍首相は、CO2半減をめざす「美しい星へのいざない」などというエコロジイバカ丸出しの提言をして世界中を呆れさせた。
 寝とぼけるな! 占領米軍から押しつけられ、時代にそぐわなくなったのは憲法ではなく、憲法施行の翌年に制定された大麻取締法なのだ。すでに多くの科学的研究が大麻の有害性を否定し、ヨーロッパでは多くの国がマリファナを解禁し、ヘンプ産業を復興させ、大麻をバイオエタノールの原料として注目しているのに、日本では大麻取締法について国会で審議されたことは一度もなく、大麻について発言した議員は一人もいないのだ。縄文伝来の聖なる草を麻薬扱いして、何が愛国心、何が美しい国だ!!
        ボン シャンカール!!              山田塊也

[予告]
 このメッセージは只今制作中の『アナナイ通信2号』の巻頭に掲載するものです。発行が予定よりだいぶ遅れ、ハーベストの10月頃になりそうなので、7月29日の参議選投票日を前に、予告をかねて発信するしだいです。安倍内閣は年金問題や強行採決、大臣たちのT失言Uなどにより支持率は凋落の一途をたどっているが「溺れる犬は棒で叩け!」とか、今回の選挙で自民党を一挙に沈めてしまいたいものです。投票日には「ボン シャンカール!」を唱え、あなたの貴重な一票を自民党以外の候補者に投じて下さい。
                     07.7.16  ポン


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