17. ヴェポライザー 電動式無煙吸入器

 約20年前から水煙管を使用してきた私だが、9年前に呼吸不全から酸素吸入器を使用する身となり、煙を吸うこと自体を疑問視せざるをえなくなった。とはいえ食う方法は使用量も多く、効き方も異なるため満足できず、無煙吸入器なるものも効果が悪くて使う気にならなかった。
 ところが最近インターネットで購入したヴェポライザーという電動式無煙吸入器は、積年の悩みを一気に解決してくれた。このデジタルマイクロチップを利用したハイテク装置は、ハーブの成分、味、香りだけを煙ではなく熱風によって気化させ、その蒸気を吸入するのである。簡単に言えば、ヘアドライヤーの中へブツを仕込んで、そのエッセンスだけを抽出するようなものだ。
 プラントを燃やし煙にして、その成分を吸い込む方法では、650℃の高温により、かなりの有効成分が破壊されてしまうのに対して、ヴェポライザーを使用すると200℃程度の温度でプラントを熱し、純粋な成分だけを抽出できるのである。火を使わないので煙やタールは発生せず、吸入弁(ビニール管)を通して蒸気を吸い込むこともできるが、バルーン(ビニール袋)に貯めておくこともできる。まるでシンナー遊びのようにビニール袋を抱いて「ボン シャンカール!」を唱えるのだ。
 初めのうちは刺激が少なく物足りない気もするが、馴れるに従って味も香りも満喫できるし、効きはより純粋で深いようだ。それに他のどんな方法よりも無駄がなく、使用量も少なくて済む。
 カンナビスカップでもこの数年連続してプロダクト賞を受賞しているという「Vapir One ヴェーピル ワン」と銘打ったこのマシーン、製造はU.S.A.だが、製品にはMade in Chinaの表示がある。大きさは掌大、値段は3万円弱。
 アロマテラピー用に開発されたこういうマシーンが企業によって大量生産され、インターネットを通して世界市場で大量消費されるほど、文明社会に大麻文化が浸透し、大麻吸いの肺を守るために利用されているという事実を知るに及んで、改めてわが国の後進性を思い知らされる。なにしろ私の知る沢山の大麻吸いたちのうち、このマシーンを使っている者は未だ誰もおらず、ほとんどはその存在すら知らないのだから。
 私の祖父は70歳で喘息で死んだ。喘息は隔世遺伝するとか。この正月二日、私は満70歳になった。だがこのハイテク装置のおかげでまだまだ長生きできそうだ。もちろん栽培しない私には、右や左の旦那様からのバクシーシーだけが頼りだが。  (07.正月)

追記 メイドインチャイナのヴェーピル・ワンは御多聞に洩れず、すぐ故障し、修理ができません。



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