熊野には外から移住してきたたくさんの新住民が住んでいて、それぞれ百姓やお店をしながら絵や音楽をつくるなど創造的な活動を繰り広げている。そしてそれらをつなぐネットワークがはりめぐらされていて、奥が深く広大な土地なのだが、お互いつながる力は強いようだ。1月に訪れた時には久々だったこともあり、わざわざ夜遅く会いに来てくれた旧友もいてしみじみうれしかった。
今回熊野に行った目的の一つは、去年から本誌をお店に置いて販売してもらっている新宮のシルバーアクセサリーのお店「シャシャマニ」を取材することだった。お店をやっているのは絵描きさんでもある水沙さん(今月号の表紙絵に登場)とミュージシャンでもあるタケチャントの夫婦だ。
店に置いているのは自分たちで手づくりしたシルバーアクセサリーの他にタイ、インド、メキシコで仕入れてきたシルバー製品とそれを使った加工品に各地の民芸品。また帽子、ヘンプのブレスにネックレスなどの手作り物の委託。他にはアロマキャンドルや自分たちがかかわったものや友人のCD、そして名前のない新聞も置いてある。
中心のシルバー製品ではこれからオリジナル商品に力を入れていきたいそうで、天然石のターコイス、ムーンストーン、オニキス、タイガーアイ等をアレンジしたものなど特注オーダーメイドをしているという。
お店のほかに水沙さんは版画を描いていて年に1度ほど個展を開いたりHPでも見られるようにしている。また水沙さんも参加し、タケチャントが中心のISATOというジャンベグループの音楽活動にもエネルギーを注いでいる。ISATOは熊野地方を中心にお祭りなどに呼ばれることが多く、夏は毎週のように演奏する機会があるという。タケチャントは熊野高専でパーカッションの講師をやったり、なぎの木園という作業所にジャンベを教えに行ったりもしている。
その他にも、「六ヶ所村ラプソディ」や「ホピの予言」等の上映会を開いたり、13の月の暦の勉強会や吉本有里さんのライブの主催をしてきた。
お店までの通勤に車で1時間かかるという自宅は三重県熊野市の山奥にある。国道から渓谷沿いに1kmほど上流に入ったところにあり、今ではその谷には1軒しか住んでいないという。イノシシや鹿のが野菜を食べてしまうので、長くて高い網を畑中に張り巡らせたりしている。
また家の周りには梅の木が数十本に、お茶の木が数百本あり、それぞれの収穫の季節はかなり忙しくなるということだ。
水沙さんの話では:
「私たちが借りて住んでいるところは、高尾谷遊園といって釣や自然の中の散策ができて、釣った魚も料理して食べられるというようなところだったらしいんです。(「一日仙人」なんていうパンフレットを見つけた)そこが閉まって10年くらいたっているところを借りて住みはじめた。売店、事務所、宿だったところなど空いている建物がいくつか残っていたので友人が何人か一緒に住みはじめ、それぞれが版画、音楽、陶芸、大工、流木アートなんかをやっていたので、何か名前をつけようと言うことになってついたのがレインボウアートビレッジ。それぞれがそれぞれの光を放ってささえあっているっていうイメージかな。
出入りがいろいろあって一時は居候も入れたら8人くらいいたこともあったけれど、今はそれぞれ別の場所に自分で家を立てたり、旅に出たりして自立してやっている。でもレインボーだからいつまでもつながっているよ。今は私たちの家族だけになっているけれど、人の出入りは相変わらず多い。
最近はWWOOF*のHOST登録もしたので又違う感じでのつながりが広がっているし、田んぼはもう8年以上していて、今年は麦も植えてみた。
なまぐさ草ボーボー農法だけど。。。自分で作った物はおいしい!」
熊野には仕事や趣味というだけでなく暮らしをトータルに楽しんでいる人たちが多いが、お店取材を通してその姿をかいま見せてもらったような気がする。
*WWOOFとは:会員登録制でお金のやりとりなしで、「食事・宿泊場所」と「労働力」を交換するしくみ。HOSTは宿泊場所を提供する人・家のこと。http://www.wwoofjapan.com/main/
*写真1〜3枚目はお店。4枚目はISATOのライブ風景。