神戸の街の中心部、元町駅から近いトアロードの周辺にはお洒落な店が並ぶトアウエスト・トアイーストと呼ばれる一画があり、いつも若者達でにぎわっている。そのトアウエストにあってナチュラル志向のカフェとして有名なのがモダナークファームカフェだ。
お店の入り口には植物がたくさん置いてあり、店はガラス張りの温室のようで通りが見渡せる開放的なテラス部分と、しっとりと落ち着いて内装がどこかバリの雰囲気を思わせる部分とに分かれている。
メニューを見ると、アイガモ農法の胚芽米を使ったベジタリアンランチや手作りケーキ、ラッシー、たんぽぽコーヒー、オーガニックジュースにハーブティー、それにメキシカンやカレーにスィート、アルコールものも充実している。お店の人も気取らずのびのびしてる印象だ。
店の内装や飾りに見とれて店内を歩いてるうちに、入り口の横にある廊下にアンティークな椅子や灯りが置いてあったので見ながら進んでいくと奥に雑貨屋さんがあった。中ではおしゃれなTシャツやジョン・レノンのベビーブックなどが置いてあったりもする。さらに2階は古着屋さんになっていて、経営者が同じということもあり、このビル全体が一つの柔らかく居心地のいいバイブレーションに包まれている。
ここをきりもりしている切東さんは、震災の前に神戸の新開地にあった菩薩茶屋というお店が好きでよく通っていたという。そこではライブや映画会や様々なイベントがあり、ミニコミやチラシが置いてあり、ある意味で文化の発信地だった。そこで映画「ホピの予言」を見て衝撃を受けたり、そことの出会いがきっかけでヨガをはじめたりベジタリアンになったという。
「前からロンドンのニールズヤードみたいに古いビルを自分たちで改装してフラワーチルドレン的なお店をやったり自然回帰的な人たちが一つの街をつくってたようなノリがいいなーという気持があった」という切東さん。もともとハンドメイドものやネイティブなものアンティークものが好きで雑貨屋をやっていた。阪神大震災の後、バブル崩壊で空いていた同じビルのスペースをやってみないかという話から、連れ合いが仲間たちと廃材など使って内装を作ったそうだ。カフェがオープンして5年ほどになる。
カフェではナチュラルなメニューを出すだけでなく、様々なチラシやポスターが置いてあり、ヨガやアロマの講習会やライブ、映画会などが時々開かれている。またピースオブケーキ(本誌110号で紹介。アフガニスタンの人たちにカンパするキャンペーン)に参加したり、12月のエイズデーには募金を呼びかけているという。
神戸でマイナーな文化を育てていきたいという夢をもつ切東さんだが、ふつうにしてる中でこういうものが紹介できたらと思ってはじめたという。「物を売って終わりというんじゃなく、そういうのを紹介しながらお金を循環させたい。でもこうじゃなきゃというのでなく、のんびりやってるんです。」
考えてみれば、誰だって難しそうで敷居が高そうだとか何か我慢しないといけないようだと寄ってこないが、楽しそうだったりオシャレでかっこいいものに惹かれるのは当然のことだ。オーガニックなものはオシャレだよー、戦争やエイズで苦しんでる人に手をさしのべるのはかっこいいことかも‥‥というメッセージがじわじわと発信され、若い人たちが集まってくるというのは、きっとそういう役割があるんだろうなと切東さんの話を聞きながら思った。(取材・文:あ)