神戸や阪神間には昔からおいしいパン屋さんがたくさんある。最近では天然酵母のパンを売る店も増えてきたが、今回紹介する西宮のアミーンズ オーブンは天然酵母専門のパン屋さんだ。そこに併設されているカフェ(アミーンズカフェ)で先日ボブとナーガのライブが行われたので初めて訪ねてみた。
オーナーの三島(アミーン)さんは若い頃、奄美の無我利道場(いま連載中のポンが昔つくったコミューン)に行ったことがあり、その流れで西表島に住んでいたボブのところも訪ねてしばらく滞在したそうなので、ボブとのつきあいは長い。その後、地元の西宮で有機野菜の引き売りをしていた時に初めて天然酵母パンのことを知ったという。またサンニャーシンになってインドにたびたび行くようになり、アシュラムの中でパンづくりの手伝いをしていた時に天然酵母のおもしろさを知ったそうだ。
その頃、日本でバイトをして稼いではインドに行く生活を繰り返していたので、どうせならパン屋で働いてみようと思い、神戸・三宮のビゴというパン屋さんで働くようになったのがパン職人としてのスタート。ところが阪神大震災でその店がつぶれたため、紹介されて長野・乗鞍にある石釜のあるパン屋さんにうつり、天然酵母パンの勉強をした。
現在のアミーンズ オーブンをスタートしたのは5年ほど前のことで、さいしょは通販専門で3年ほどやってきたが、昨年の秋に今の場所に移って店売りもするようになり、同時にカフェも開くことにした。カフェスペースは9席の大きな丸いテーブルがひとつと、店の裏が広いウッドデッキになっており、何本かの木がしげっていて天井がわりになり、椅子やテーブルが置かれて真夏でも涼しそうな気持ちのいいスペースになっている。(写真参照)
カフェのメニューはベジ仕様の肉類や卵は使わないもので、それぞれ素材にこだわったスーププレート¥800,野菜プレート¥800,網焼きトースト¥500などなどがある。
カフェではたまにライブなどのイベントを催したり名前のない新聞のようなミニコミ誌、チラシなどが置かれていて読めるようになっている。カフェがあることによってパンだけではない広がりももてるので楽しいとのことだ。
カフェの奥はパン工場になっていて、大きなオーブンやミキサー、冷蔵庫などが所狭しと置かれ、何人かのスタッフが働いていた。ここで作っているパンは約30種類あり、季節によって3,4種類変わる。今は新茶のベーグルなどがメニューに加わっているそうだ。基本的にはハードな、しっかりと噛みしめて食べる食事パンにこだわっているそうだが、オーガニックのドライフルーツが入った甘いパンやラスク、ブラウニーなどもある。またマフィンやクロワッサンもあって、バラエティに富んでいる。
三島さんによると、「昔は天然酵母パンは堅くてすっぱいというので終わりで、クロワッサンなんかできないだろうと言われていたんだけど、さいきんではけっこうパリっとしたクロワッサンができたり、意外とふんわりと焼けたりとか、ずいぶん進化しました」という。
なぜ天然酵母のパンにこだわるかというというと、「自分でやれるっていうのは魅力的かなー。その工程がぜんぶ自分でわかるわけです。イーストだと、何かよくわからないイーストがないとつくれない。なんでふくらむかわからないけど、とりあえず入れればふくらむ。でも自分のところで酵母をおこしてたら、それが最初から見えてる。」
三島さんに、水につけたレーズンがあぶくを出している瓶を見せてもらった。
「あぶくが出ていて生きてるかんじがするじゃないですか。これに粉を足して、ふくらませていくという、単純に言えばそれだけのことです。天然酵母だとふくらみが悪い時もあるし、やっぱりばらつきがあります。雑多な菌が入ってきますから、均一じゃないんです。」
パン屋の仕事は朝4時とか5時から起き出して始める必要があるし、生き物相手なので気を抜けないと思うが、均一ではなく1つ1つちがうところ、わけがわからないものに頼らず自分の手でつくりあげるところが三島さんの性に合っているようで、楽しそうな口ぶりが印象的だった。