映 画 案 内

 この映画は韓国・済州島に建設されようとしている海軍基地に反対する村人たちの闘いを何年にもわたって追ったチョ・ソンボン監督の映画である。題名の「クロンビ」とは建設現場のカンジョン村海岸にある、長さ1.2kmにもおよぶ巨大な一枚岩の名前。そこには20カ所もの泉が湧き出し、様々な絶滅危惧種などが生息する貴重な生態系があるとして、韓国の天然記念物保護区域やユネスコの生物圏保全地域に指定されていた。またここは住民たちの聖地として大切にされてきたところであり、さらには先史時代からはじまり、済州島が独立国だった耽羅国の時代、そして朝鮮時代へと7000年にわたる遺跡が確認された非常に貴重な文化遺産の場所でもある。
 ところが海軍基地計画が出るや、これらの指定はかんたんに解除され、現在は「クロンビ」岩が建設区域に含まれるため誰も立ち入ることができなくなった。また世界に類を見ないクロンビ岩は爆破されたり、コンクリートで固められるなど、跡形もなくなりつつある。そして村人たちをはじめ多くの環境保護団体、宗教団体など韓国中からの反対・抗議を無視して基地は現在すでに6~7割が完成していると言われている。
   この映画では建設が始まる前のクロンビ岩とそこに生きる生き物たち、そしてカンジョン川や珊瑚の生息する周辺の海など美しい自然の貴重な映像が映し出されると同時に、村人たちの長年にわたる抵抗運動が記録されており、沖縄の辺野古の闘いを彷彿とさせる。
 これまでこの映画は、2013年の釜山国際映画祭のドキュメンタリー競争部門で上映され、「特別言及賞」を受賞。チョ監督は1997年の「レッドハント」に続き、釜山国際映画祭で2度目の受賞を獲得した。今年の8月には韓国で正式に封切り上映される予定となっている。今回日本の各地で平和問題に取り組んでいる市民たちから日本での「自主上映」をという熱い声が上がり、「日本『自主上映』実行委員会」が結成されることになった。今年(2015年)3月10日から3月末にかけて自主上映会を開く準備をしているところである。また同時期の3〜4月にアメリカ全土でも上映されることになった。

 

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