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心のよろこびに基づいた地域通貨システム


 LETSから

  ハートマネーへ

エコサポート代表

杉 浦 則 之


 現代人間社会の関係を象徴する一つ・お金。それを無視して新しい社会や人間関係をイメージすることは無意味でしょう。
 21世紀にどんな社会のイメージを描きたいのかと考える時、このお金のあり方から考えていくのは案外早道かもしれません。
 今回は地域通貨システムLETSを紹介します。


1.はじめに

 最近日本でも地域通貨への関心が高くなり、導入を検討しているグループや地域が増えてきていますが、地域通貨に関する資料や本を読んでも、具体的なしくみやメリッ トなどが理解できず、積極的に取組めない面があると思います。
 そういった問題を解決するために、昨年オーストラリアで導入されている地域通貨の一つLETS(レッツ:Local Exchange Trading Systemの略で、地域経済振興シス テムなどと呼ばれています。)の事務所を訪問した祭に、LETSを一般の方に理解して いただくための、LETS導入ゲームマニュアルを入手しました。
 LETSゲームと呼ばれるこのゲームは、地域通貨のしくみやメリットをゲームの中で、楽しく体験しながら理解できるゲームで、今年の3月にLETSゲームを日本で始めてだと思いますが名古屋で開催したところ、今まで理解しにくかった地域通貨が非常によく理解できました。
 また、海外のLETSに日本の和の思想を組み込むことで、日本独自の素晴らしい地域通貨システムができることがわかりましたので、今回はLETSゲームを通して感じたことと、日本独自の地域通貨システム開発への取組みについてご紹介します。
尚、オーストラリアのLETS事務所訪問に関する記事とLETSゲームを紹介する記事が、中部リサイクル運動市民の会発行の環境情報誌“E's(イーズ)”4号と5号に掲載されていますので参考にして下さい。

2. LETSゲームで感じた事、発見したこと

 LETSゲームでは、始めに現状の通貨制度の問題点を知るために、おもちゃの紙幣を使って現在の経済システム下での取引きをシュミレーションします。この場面では、なぜ富が偏ってしまうのか、そして富が偏在する事が経済格差や失業問題、さらには環境問題や南北問題など国際問題へと発展する原因である事を理解します。そして現状の通貨制度の問題点を理解した上で、LETSでの取引きを体験します。
LETSでは、まず参加者が持っている、知識、技術、能力など地域に役に立つと思われるプラスの情報と、地域の人に助けてほしい、援助してほしいマイナスの情報を公開してゲームが始まります。参加者はその情報を見て、お互い助け合える相手を探し出し、サービス内容と価格の交渉をして取引きをしますが、自分では地域に役立つ 能力が無いと思っている人でも、助けてほしい情報の中から自分にできることを見つ けることができます。
 例えば、話し相手とか犬の散歩、買い物代行、草刈りなどちょっとした仕事ですが、地域に役立つ仕事が見つることで、自分では気づかなかった能力を発見することができます。
そのため、LETSでの取引きが始まると、参加者同志のコミュニケーションが活
発になり、その場のエネルギーが高まってきます。さらにゲームの中で行った取引が 、実際のビジネスや具体的なプロジェクトに発展してゆくなど、コミュニケーション が活性化することで、多くの仕事が発生してきます。
 このようにLETSは地域のコミュニケーションを活性化し、お互いが助け合い、生かし合うためのシステムで、地域で困っている人がいるお陰で自分も役に立つ事ができるという関係が理解でき、高齢者や障害者、育児中の女性など、地域で困っている人が地域を活性化させるエネルギー資源であることがわかります。

3. 日本独自のLETSシステムの開発について

 現在、オーストラリアのLETSゲームをもとに、日本の独自の地域通貨ゲームを開発しています。新しいゲームは、広島で日本の和の文化における実践の知恵を研究されている、大和信春先生が、著書「和の実学」の中で現在の通貨に替わる通貨として、10年前に発表された心価に基づいたハートマネーの概念を取入れます。心価とは「心に感じる喜びの量」をあらわす言葉で、よろこびの度合いは「欣度(きんど)」として表わします。欣度はプラス10からマイナス10までで表すことができ、欣度ゼロの平安の状態を1秒間欣度プラス4の中欣(あきらかにうれしい状態)まで押し上げる喜びの量を1H(ハート)と定義し、H(ハート)を単位によろこびの量を表わします。
 これは、今の地域通貨が現状の通貨を基準にして、例えば1エコ=100円といった換算をしていますが、基本となる現状の通貨が、物価や人々の価値観の変化、さらには投資家など第三者の影響を受けて変化してしまうため、できるだけ時代や外部からの影響を受け難いか、受けても利用者に明確で修正しやすいものを地域通貨の基準にしたほうが通貨として安定させることができます。
 そのため労働時間や地域の特産品なども地域通貨の基準には適していますが、ハートマネーでは、心の喜びや感謝の気持ちを基準にしているため、ありがとうの気持ちを素直に表すことができ、ハートマネーがたくさんある人は他人に多くの喜びを与えている人であり、また、ハートマネーをたくさん使っている人は地域に感謝している人となり、お金の持つ意味や価値観が現在とはまったく異なります。
 また取引き価格を決める時には互恵価格も利用します。互恵価格とは売手と買手が希望取引き価格の上限と下限を提示し、売手と買手の双方が満足できる価格を、大和先生がつくられた計算式に従って算出します。
 この互恵価格を計算するソフトは、電子手帳(ザウルス)用に開発されており、先日東京で行ったLETSゲームの場で互恵価格を使用したところ、売手と買手が「こんな値段でいいの」と双方が満足できる金額で取引きできました。
 このように、和の文化から生まれてきた知恵を地域通貨に盛り込む事で、お金を使う事が単なる消費でしかなかった貨幣システムから、お金がお互いを助け合い生かし合うための支援ツールとなり、使えば使うほど地域の「和」が高まり、そこに暮らす人々が幸せになるシステムが生れてきます。

4. 最後に

 現在の貨幣システムは、いつの間にか利用者の手を離れ、お金が社会をコントロールする資本主義へと移り変わってしまいましたが、地域通貨は自分達が目指す理想の社会を実現するために、自分達にあった独自のルールやシステムを構築することができます。逆にいえば目指すべき理想があってこそ、地域通貨が有効になるのであって、地域通貨を導入したから問題が解決するものではありません。
 自分はどんな暮らしがしたいのか、家族や地域、自然との関わりはどうするのか、これからのライフスタイルを真剣に考え実現しようと仲間が集まった時に、地域通貨は 一人一人のエネルギーを大きなエネルギーに増幅させる素晴らしい道具になります。 このような素晴らしい可能性を秘めた地域通貨ですが、その可能性を理解していただくには、資料を読むよりゲームで体験していただくのが一番だと思います。まだまだ開発途中のゲームですが、多くの方にこのゲームを楽しんでいただき、みなさんからのご意見をお聞かせ願えたらと思います。


【参考図書】

「和の実学」大和信春著 株式会社博進堂
「心価に着目したマネジメント」対談 大和信春、清水義春 博進堂文庫シリーズ3


★お問い合わせ先

〒444-1325 愛知県高浜市青木町 6―6―6 エコ・サポート 代表 杉浦則之
TEL&FAX 0566―52―1533
Email:ns1222@mb.infoweb.ne.jp

No.97=1999年10・11月号

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