amanakuni Home Page | なまえのない新聞ハーブ&アロマテラピー | 八丈島の部屋

なまえのない新聞91より

市民がつくった環境プラン

 エコシティ志木(埼玉県志木市)      の毛利将範さんに聞く

おっとりした口調の毛利さんは、自称・売れない絵本作家。環境プランの本の表紙絵も毛利さんの描いたものだ。
長文注意! ダウンロードしてお読み下さい。


 3本の川にはさまれた埼玉県の志木市は、昔から農業が盛んで、また水運の要所としても栄えてきた町。現在では新住民の人口が2/3を占めるベッドタウンでもある。

 その志木市の市民グループ「エコシティ志木」が2年がかりで環境プランを作り上げた。もともとブラジルでの地球サミットにおいて、各国・各自治体が環境問題を解決するために行動計画(ローカル・アジェンダ)をつくろうと呼びかけられたものだが、実際には自治体でも環境計画を作ったところはまだまだ少ない。そんな環境プランを市民の手で作ったことの意味は大きいと思い、さっそくエコシティ志木の代表の毛利さんを訪ねて、お話をうかがった。

毛利● エコシティ志木というグループができたきっかけは市が主催した環境講座だったんです。それも、ただ先生がしゃべるのを聞くだけの講座ではなく、参加型のワークショップ形式のもので、参加者も楽しみながらやれるものでした。それを3年間やったので、環境に興味がある人のネットワークができたんです。

 その環境講座の中で、森さんという講師の方が呼びかけて、環境基本計画を市民がつくるにはどうしたらいいかというワークショップをやったんです。ぼくも含めて参加者は、環境基本計画がどういうものか、地元の環境を守るためにどんな効果があるのか、自分たちだけでつくれるものなのかということも知らなかったわけです。とにかくネットワークが作れるということで、集まってやってみようということになったんです。森さんは環境教育のプロフェッショナルで、あちこちに仕掛けをして歩いてる人です。

 エコシティ志木を立ちあげた時には、環境基本計画を作ろうという目標もあったんですが、むしろ市内のことをもっとよく知ろうというので、観察会をやったり地元の人を講師に呼んで勉強会をやってきたんです。

 2年間の活動の末、今年の3月に予定通り志木市民の手による環境プランができあがった。そしてちょうどこれから市による環境基本計画づくりがはじまり、その策定委員が公募されて過半数がエコシティ志木のメンバーだというから、ほぼ同じ内容のものが市の計画として策定されるのはまちがいなさそうだ。

 この環境プランの中では、たとえばゴミダイエット作戦というのがありますね。

毛利● ゴミについては10年間で75パーセント減らそうという目標をたててるんです。

 それはすごいですね。10年なんてあっという間ですから。それに放っておくとゴミは増えていくから現状維持だけでも努力が必要だと思いますが、75%としたのはどうしてですか?

毛利● まず市民にゴミの量をはかってもらったんですよ。志木の一人当たりのゴミの量は一日の平均が601gなんですが、その時はかってもらったのは250gぐらいだったんです。平均の半分くらいです。まあゴミの量をはかってみようというくらいだから意識があると思うんです。つまり意識があれば半分に減らせるかなと。その中で生ゴミを自分で処理している家が何軒かあって、それを見ると150g以下だったんです。だから、プランの一つの落ち葉公社が実現して生ゴミを堆肥化するようになり、また市民の意識が高まってゴミになるようなものをなるべく買わないようにすれば、それくらいに減らせるんじゃないかという見積もりです。

 たとえばゴミを有料化して、ゴミを多く出す人はお金をたくさんはらわないといけないようにするということで、ゴミになるものを買わないように、入ってくる方を抑えようと。

 ゴミの有料化によって実際にゴミの量を減らせると思いますが、反対の声はなかったんですか?

毛利● これはだいたい反対はないですね。というか、ワークショップで最初はいろんな意見が出ていて、他の人の意見も見ているわけです。で、まとめる段階ではもう特に反対とか出ないですね。そういうプロセスなしに急にゴミの有料化を出すと、反対する人はいるかもしれませんね。

 それも役場の方から押しつけるような形で出すとね。

 それにしても、こういう調査とか汗をかいてやるようなことがないと、頭で考えただけだったり言ってるだけでは説得力がないでしょうね。

毛利● そうですね。たとえばゴミを半分に減らそうと言っても根拠がないので、じゃあやってみようかということになり、実際に参加した人は、ゴミの中身がわかって面白かったとか色んな意見が出ました。ですから、これは提案書でもあるけれど、資料集としても読めるようなつもりで出したんです。

 市民参加のしくみづくりのポイントはどんなところにありますか?

 自然を守るとかゴミを減らすとかやってるとどうしてもコミュニティのつながりが大切ということに行き着くので、「エココミュニティひろばプラン」というのを出したんです。

 これは新しい建物をつくるっていうことではなくて、たとえば公民館だとか、生徒がだんだん減って空き教室が出てきているものを利用するんです。そこに市民が自由に集まって、環境に関する情報がいつもそこにあったり、さいきん自治体で市民活動サポート広場とか作ってるところがありますけど、そういった機能をもたせた場をつくる。

 ボランティア活動をしたいけれど何をやっていいかわからない人たちとか、自分で何かをやろうとしているけれども場所がないとか、そういう人たちが集まってきて自主的に共同体みたいなものを作れないかなと提案しているんです。行政との関連では、行政から委嘱をうけて運営していこうと。運営する母体としては環境市民会議というのを提案していて、市民から公募して1から2年の任期で市長から委嘱をうけて環境について勉強会をやったり、市長に提案したりとかをやって、人材の発掘をやるワケです。で、OBになったら、たとえば出たゴミを集めて工作教室を開きたいとか、自分が何をやりたいかを考えてもらって、そういう企画をもってここの運営に参加する。

 行政との関係では、エコシティ志木の場合、事務局も市民側でやることにした。

 それによって、いろんな作業を互いに分担してやる自立的な動きが出てきたという。会員の中で、自分が責任者になっていろいろやってくれる人が出てくる。

 身銭を切ってでもやる自主的な市民活動と、決められた時間に顔を出して意見を言うだけの行政主催の委員会・審議会などでは、参加する人間の意識が違ってくるのは当然かもしれない。

毛利● 志木の場合、あんまり高望みをしないで等身大でやってきたのが良かったかもしれません。こちらが出したプランが、行政からだめだよと切られても、自分たちの行動計画として、自分たちが何がやりたいかということでもあるので、行政が取り上げようがとりあげまいが関係ないというスタンスもあるんです。

 結局は市民一人一人がどういう生き方をするかということが一番大事な問題で、行政がいくらプランを決めても市民の自覚がないと実行されないですからね。

 他の町にとっても参考になりそう な力作だ。

★連絡先:〒353-0005 埼玉県志木市幸町1-8-40-406

TEL.&FAX. 048-471-4275

郵便振替:00510-4-13225「エコシティ志木」

『市民がつくる志木市の環境プラン』はA4版117pで¥1000

91=1998年9・10月号

なまえのない新聞のHome Page