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第23回
最終回

コレのように、勇気をもって。

(ほった さとこ)


 胸を突かれる映画をみた。「母たちの村」(原題:Moolaade)、2004年に製作されたフランスとセネガルの合作。西アフリカの小さな村が舞台だ。
 主人公・コレは中年女性。夫や自分以外の2人の妻や子供たちと暮らす彼女の家に、小さな4人の少女が逃げてきて、保護(=Moolaade)を求めてひれ伏す。割礼から逃げてきたのだ。
 女子と男子が受ける割礼は歴史や問題が違う。映画の中で、長老や割礼師たちは割礼を「浄めること」だと繰り返し言うが、実際には少女の性器を切り取る暴力。クリトリスをくりぬいたり、小陰を切り取ったり大陰を縫い合わせたりする。1990年からは女性性器切除(以下はFGM=Female Genital Mutilation)と呼ぶようになった。言葉は本当に大事。物事をすり替えられてしまう。
 コレはFGMの影響から2人を死産、一人娘はお腹を切って産んだ。夫とのセックスは激痛。この身体を一生抱えていく。だからコレは自分の娘にはFGMを受けさせなかった。
 コレの態度に怒った絶対的な権力を持つ長老や男たちが妻のラジオを没収する。おんなは無知が望まれ、意見をいう権利はない。因習の根深さや男性上位の世界が伝わる。コレは自分の命をかけて少女たちを守る。周囲のおんなたちの気持ちが動く。みんな同じ痛みを持っているのだ。アフリカの空、土や植物で出来た家、原色の服、歌、踊り、女同士のおもいやり、美しいものがあふれる映画。監督は、アフリカ映画の父と尊敬をもって呼ばれるウスマン・センベーヌさん、おとこです。
 でもFGMは過去の痛みではなくて、いまも主にアフリカの中西部で毎日行われている暴力。WHO(世界保健機関)の調査では、毎日6000人以上の少女がFGMをされていて、アフリカの54カ国のうちで30カ国以上が行っている。2000年以上前から続いているそうだ。アフリカから始まったFGMの廃絶運動は1970年代から始まって、NGOや国際協力機関、国連などの協力から、少しずつ無くなってきているとのこと。日本にも支援をする女たちの会がある。

とあるワークショップでわたしがもらったメッセージ。これを何度見つめたことか。
そしていまではすっかりだいじょうぶになりました。みなさんも「だいじょうぶ」です。byさとこ

 ヨーニ!は今回で23回目となりました。おんなおんなおんなとおんなばっかり書いてきました。そうしないといられない私がいたから。
 富士山の麓に暮らして丸7年。富士山はたいていの日本人が好きだといい、一生に一度は登りたいと夏だけで毎年15万人以上が訪れます。一方で、富士山の裾野には自衛隊の演習場があって米軍の訓練も行われ、お金になる植物の乱獲が続き、環境に配慮のないエコツアーは増加中。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の認定する世界遺産にしようという動きは、開かれた議論のないまま進んでいます。なんだかイタタマレマセン。
 わたしは自分に富士山の御師という役割があることを、最近、納得しました。御師は「おし」と読みます。富士山に来る道者や巡礼者の世話や祈祷などをするのが本来の御師。わたしの夫は御師の家に生まれた長男なので、当たり前のように、家を継ぎ、御師になる人間として育てられました。強要されることにものすごく抵抗はあっただろうけれど。
 家族の事情から御師の会合に出てくる女性はいます。でも富士山御師と名乗る女性にわたしは会ったことがありません。富士講が盛んだった江戸時代、女性は富士山を登ることが許されていなかったくらいですから。
 わたしは事実婚で彼の戸籍には入っていません。結婚したら男の籍に女は入るっていうのが、わたしの場合は嫌なのです。おんなはあげるもの、もらうものではありません。こういうわたしなので、彼の家で暮らしているからと、わたしも彼の家業を受け継ごうとは素直に思えないし、サポート人生も嫌でした。だけど、毎日富士山に見つめられ、縁を感じ、富士山の痛みを知るほど気になって、わたしはわたし、ありのままのわたしで御師になればいいと、いまは思います。
 ヨーニ!とは、サンスクリット語で女陰、子宮という意味。全ての源、根源的なエネルギーを内包しているものという意味につながります。ヨーニ!と声に出すとなぜか元気をもらいます。そしてわたしはこの場を大事にしてきたのですが、このペースでの連載は今回で終わり。あれもこれもという器用さをわたしは持ち合わせません。「母たちの村」のコレのように、勇気を持って、富士山に真摯に本気で向かいたい。
 どうしても伝えたいことがあるときは、ヨーニ!が復活することでしょう。いままでどうもありがとうございました。チャオ!        (ほったさとこ)

FGM廃絶を支援する女たちの会
(Women’s Action Against FGM, Japan)
東京都新宿区市谷加賀町2-5-26
電話 03-3235-8266、waaf@jca.apc.org
http://www.jca.apc.org/~waaf



No.147=2008年3・4月号

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