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第12回

おんなとして痛い。

〜天皇について勉強してみたけれど〜

 (文・写真:ほった さとこ)


  いまや天皇家はほんとうに日本の象徴みたい。過去や歴史、伝統と呼ばれるものが尊重されて、人間はそれを維持するための存在。マサコさんのおそらく抱えているんだろうストレス、キコさんの今回の妊娠。どちらもおなじ時代を生きてるおんなだなってひしひしと感じる。天皇家にも少子化の波はやってきているし、いまは側室も養子もだめ。でもそのなかで、自分の道を切り開いてきたはずの人はストレスから病気になり、さいきんはマスコミは書き放題。そして天皇家に嫁ぐおんなの役割は、やっぱり男子を産むことだった。マサコさんのがんばりようが痛い。もうじゅうぶんに努力したし、能力のある人なのに。こんなはずじゃなかったのに。そしてキコさん。こどもを授かるって、とてもすてきなことなのに、わたしはうれしくない。利用されていない?ほんとにいま産みたかったの?
 なんでそこまでして天皇。わたしは天皇制は必要ないと思う。人間に上も下もないし、象徴という特別もない。海外からのお客さんの接待のために、社会福祉のために、日本の国民の心の支えのために、そして血を絶やさないために、国のお金で天皇や皇族を作っているんだと思うけれど、そして、すごい権力があるのかもしれないけれど、わたしは天皇や皇族のひとたちって、かわいそうだなって思う。ほんとうに天皇や皇族のことを大事に思う人がどれくらいいるのかな。自分の人生を棒に振ってないのかな。それとも、こんなことを思うわたしも、せっせと税金を納めて、天皇制を維持するためにうっかり利用されているのかな。
 ということで、日本国憲法と、小泉首相が有識者会議を作って法案提出を目指している皇室典範について、改めて勉強してみた。

日本国憲法
第1章 天皇
第1条【天皇の地位・国民主権】
天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって,この地位は,主権の存する日本国民の総意に基づく。
第2条【皇位の継承】
皇位は,世襲のものであつて,国会の議決した皇室典範の定めるところにより,これを継承する。
(以下8条まで続き、第2章9条が戦争の放棄、軍事及び交戦権の否認であり、やっと第3章で国民の権利及び義務が登場し、基本的人権の享有や自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止や法の下の平等につながっていく)
一九四六年(昭和21年)11月3日公布

 皇室典範の改正案も読んでみた。首相官邸のサイトに皇室典範に関する有識者会議コーナーがあって、構成員や会議の内容などがある程度わかる。わたしはすごく現実感が薄くて、戦争とか大きな事件などをリアルに感じることがなかなか出来ないんだけど、こうやって自分で情報を探して憲法を読み直してみたり改正案に目を通してみたら、かなり日本という国について、または天皇制についてリアルに感じることができた。

皇室典範
第1章皇位継承
第1条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
(以下、皇位継承の順序、皇族の範囲とか、天皇が未成年の場合の摂政や皇室会議についての法律が第5章37条まで続く。)
一九四七年(昭和22年)1月15日公布/上記は、一九四九年法律第一三四号による改正後の条文

 改正案は、男系優先ではなく直系優先の順位に、つまり、現状からいうと、女子・女系天皇の皇位継承の順位にしましょうという内容だった。女系天皇というのは、たまたま皇位継承者に男がいないから女が一時的になりましょうではなくって、女性天皇のこどもが天皇になるということ。天皇の兄弟に男がいても、血の濃さで継承するので、女性天皇のこどもが男でも女でも天皇になる。
 そこで、なんで女系天皇に政治家などから反発があったかというと、これまでの長い天皇制の歴史は、ずっと男系男子が天皇になってきた。女性天皇はいたんだけど一時的なものだったし、独身だった。なので男系で続いてきた輝かしい日本の「歴史」や「伝統」が変わってしまうとか、女系になると血筋がはっきりしなくなるとか言うのだ。女に天皇を継ぐ能力はないとか、女性蔑視な発言をわたしは聞かなかったけど、そう思っている人だっているだろう。それに女性天皇が誰かと結婚すると、いわゆる婿みたいな感じで相手が皇族になる。いまの日本の戸籍制度は婚姻届けを出す際に女・男どちらかの氏を選択する。法律上はどちらのでもいいんだけど多くは男の氏にする。なんとなくとか、それが普通だからという理由でおとこの氏を名乗るんだろうけど、それは男の家を継いでいこうって真剣に考える人もいるだろう。そういう美しき日本の「伝統」が変わっていってしまうと恐れている人もいるのかもしれない。
 この改正案は、そういう過去やいまの認識を踏まえつつも、男女平等の精神や社会の変化を鑑みていて、わたしは天皇制自体どうなのよと思いつつも、今の皇室典範よりはいいなと感じた。そして小泉首相に今回の国会に提出してほしかった。でもね、いま皇族に男の子はいない。女は結婚すると皇族ではなくなるので、天皇の候補者はおろか、だれもいなくなる。よくできた笑い話みたいだ。だからといって、女を都合よく扱わないでほしい。ひさしぶりにイプセンの『人形の家』を思い出した。わたしたちは人形じゃないのにな〜。            ●  



No.135=2006年3・4月号

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