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『男の子を性被害から守る本』

訳者からのことば  三輪 妙子

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  カナダの「性の健康」教育、第一人者であるメグ・ヒックリングさんの最初の著書を、カナダで偶然手にしたのがきっかけで、1999年にそれを『メグさんの性教育読本』(木犀社)として出版することができました。メグさんはこの出版を機に、「女性と子どものエンパワメント関西」の招きで毎年来日し、各地で講演会やワークショップを開いています。わたしはそのたびに通訳をし、メグさんの教えを、参加者の方たちとともに学ぶことができました。
 中でも性的虐待については、たくさんの神話を打ち砕かれ、事実を知らされました。まず、性被害にあう子どもの男女の割合は半々であること、加害者もまた男女半々であるということです。「性虐待の加害者は男性、被害者は女の子」という図式をそのまま信じてしまっていたので、わたしとしても驚きでした。
次に、性虐待の加害者はほとんど全員が、子どものころに性被害にあっているという事実です。ということは、男性の加害者はみな、子どものころに被害を受けているわけですから、男の子の被害者がいても不思議はないはずです。また、被害を受けた女の子のうち、将来おとなになったとき加害者にもなることもあるわけですから、女性の加害者がいても当然なわけです。
 メグさん自身、1985年にロランド・サミット博士という、性的虐待問題の先駆的教育者のワークショップに出て、この事実を初めて知ったそうです。そのとき、ワークショップの参加者のほとんどがショックを受けたといいます。
 「加害者は夜、突然現れて襲ってくる」というイメージも神話にすぎないことを、メグさんは教えてくれました。実際には、性的虐待の加害者の8割は子どもがよく知っている人たち、両親、祖父母、親戚のおじさんやおばさん、いとこ、近所の人たち、学校の先生などなのです。
 次のような話も印象的でした。カナダのあるおかあさんが、就学前の息子に、性的虐待を受けている子が示すさまざまな兆候が現れているのに気づいた。息子がどこでだれと会っているか、全部把握しているはずなのに。結局、息子が通っていた歯科医が加害者だったことがわかり、何百人もの子どもが被害にあっていたことが明らかになった。
 親は自分の子どもを24時間見守ることは不可能です。だからこそ、子どもに「性の健康」を小さいころから教え、親子が自由に話ができる環境を作ることが大切なのです。そのためには『メグさんの女の子、男の子からだBOOK』(築地書館、2003年刊)をぜひ参考にしてください。
 また、男の子というのは、からだのことについて女の子より話を聞く機会が少ないと思いますので、『男の子のからだとこころQ&A』(築地書館、2004年刊)もお勧めです。これは、メグさんが過去30年ちかくの間に、カナダと日本の男の子たちから受けたたくさんの質問をまとめ、それに答えてくれたものです。
 性について、小さいころから親と気持ちよく話ができる子どもは、自分のからだを肯定的に受け入れ、性被害からも身を守りやすくなります。性に関しても、「知識は力なり」ですから。
(みわ たえこ)

著:J.サツーロ+R.ラッセル+P.ブラッドウェイ

訳:三輪妙子/解説:田上時子/メグ・ヒックリング推薦

築地書館刊 A5判 p60 ¥1050(税込)

この本を読んだ親子の感想

●母親の感想
 私は、12歳の息子を持つ身ながら男の子への性的虐待について、真剣に考えたことがなかったので、この本を読めたことが良いきっかけとなりました。
 被害者が経験を語っているページでは、とてもひどい事をされそれが今もなおトラウマとなり彼らを苦しめている様子が強く伝わってきて、読んでいるこちらまで息が詰まった感じになります。愛のある性行為がすばらしいものだと経験する前に、歪んだ性を強要され体験してしまう。きっと、性にたいして強い偏見を持ってしまうでしょう。その経験が尾を引き、将来愛する人と出会えた時にうまく自分を表現できないとしたら悲しいことです。
 男の子の場合、自分の意思とは関係なく刺激によって身体が生理的に反応してしまうことがあるのがとても辛いだろうなと想像します。そんな素直で健康な身体にどうか嫌悪感を持たないでね、決して自分自身を傷つけたりしないでねと願います。大切に丁寧に育てられてきた子供に対して、一生忘れられない悲しい行為を自分の欲望の為だけに行う人たち。親はそんな人たちから子供を守りたいけれど、24時間ずっと付き添って守るということは出来ません。それに、性的虐待は大人達のいる目の前で起こることはないだろうし、どうしたら子供を守れるのだろうという思いが湧いてきます。
 そこで、この本は子供達に「自分で守ろう!」と提案しています。小さな子供にも理解できる表現で、ふりがなもふってあるので小学生ぐらいから十分読めると思います。装丁もポップな感じで子供たちもすぐ興味を持つようなデザインです。
 幼い頃、虐待を受けた人は大人になってから加害者の立場になってしまう確率が高いということを聞きます。助けを必要としていた時に誰からもなんの助けも受けられなかったからだそうです。
 今の虐待を減らすことは将来の虐待を減らすことにつながると思うので、ぜひこの本を子供だけじゃなくいろんな世代の人々に読んで欲しいなと思います。

●子どもの感想(TKくん=小6)
・性的虐待というものがあることを知らなかった。
・もし自分が性的虐待にあったら怖いなと思った。
・信頼してる身近な人に虐待されてショックだっただろうな。
・子供の身体と心をもてあそぶなんてひどいと思う。
・この本を読んだから、自分を守れると思えた。それにもし、友達が性的虐待にあっていると知ったら助けてあげられると思う。



No.129=2005年3・4月号

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