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第8回

おっぱいを大事にすること・その2
〜もう1回生まれるわたし。

 (取材・文:ほった さとこ)

   いま、わたしは新しいわたしになる途中です。
 2004年はしこりに揺さぶられた。両肩をがしっとつかまれて、目を覚ませ〜って言われ続けた感じだ。
 去年の秋、おっぱいにしこりを見つけ、大騒ぎした。ヨーニ!3回目で自己検診のすすめとか、いろいろ書いた。それなのにそれなのに、その後のしこりの成長に気づかなかった。今年の夏の定期検査で、しこりは倍の大きさになり、線維腺腫が葉状腫瘍らしきものに進んでいた。乳がんではないが、原因もわからず、手術して切除する以外に治る方法がないというよくわからないしこりだった。
 なにがショックだったって、自分の身体の変化に気づけなかったことだ。その後さらに検査をしたり、どういう治療をしていくか考えた。泣いて終わった日もあった。で、考えて考えて思ったことは「なんて自分に無理をさせていた毎日だったんだろうか」ということだ。わたしがわたしに無理をさせる。今日はこれをしなければならない。今年中にあそこまではやりたい。だったら、スケジュールはこう組んで、ちょっと無理をしても、あとは気力でなんとかなる。出来なくても、なんとかさせなくっちゃ。っていう毎日を何年もずっと送っていた。最近は「疲れてるね〜」とよく言われた。毎日忙しいなあって思っていたけど、わたしには変な勢いがあった。
 そういう、いま思えば、あほみたいなわたしを止めてくれたのがしこりだった。病院ですぐに切りましょうと言われたけれど、今回のわたしのしこりは、切っておしまいっていう終わらせ方じゃいけないと、なんとなくだけど、強く思った。ので、手術はやめて、操体法や手当を毎日始めた。すごく信頼している快医学の治療院に行って、相談して決めたことだ。
 ばたばたと根を詰めて暮らしていたので、地味なしょうがの湿布や操体は、最初ほんとうに辛かった。仕事をせず、ゆったりするための時間に罪悪感を持ってしまう。時間がもったいなく思える。自分の身体を最優先に暮らすことをテーマにしたのに。気が付いたら、手当は後回しで洗濯をしたり、頼まれ事を片付けていて、朝しようと決めたことが後になり、午後になり、そういう自分に悲しくなり。身体の声を聴くなんて、程遠かった。
 身体だけじゃなくて、自分の心もよく覗き込むことにした。どうしてわたしはこうなのか。いろいろ考える。考えることは好きなので嫌じゃない。だけど治療を始めた頃は精神的にかなりまいっていたし(まいっていたことにも気づいていなかったけど)、身体は内臓や骨も疲れていたので、自分や家族を責めたり、批判することばかり思い付く。だから、深く考えないで、ただただ治療をこなしていた。
 そうこうして何ヶ月か過ぎたら、操体が前より上手になったり、手当の気持ち良さに気づいた。身体がほかほかすることがわかった。シンプルな食事のおいしさがわかった。でも、まだ私はどっかが変で、夜になるとばかばか食べたくなる。前は寝る前にラーメンが食べたくなったりして実際食べていた。最近それはなくなったけど、ちょっと何かを食べたりする。でも前よりも減ったので、自分を責めないようにしている。なにごとも、ゆっくりゆっくりでいいのだ。と、やっと思えるようになった、というか、わかった。自分を許せた。
 自分の心の声を大事にしていたら、わたしが抱えてきたいろんなこと、うまくいかなかったこと、親との関係、傷つけてしまった人、ほんとはずっとしたかったことなどが、なんとかして〜って叫んでいるような気がした。みんな、そういうものを持って生きているんだろうけれど。私の場合、いまがそういったことと向き合ういい機会なので、それぞれのことをまたまたよく考えた。だって、いまは毎日が自分のための時間だから。ああ贅沢な時間。家族に心からの感謝。で、そういうことをなんとかしたいなあと思っていたら、チャンスはやってきた。いっぱいやってきた。これって宇宙の不思議なのか。思っているとほんとに実現する。それらはうれしいチャンスばかりではなかったけれど、勇気を出して、小さな一歩を踏み出す毎日。毎日が創造だ。でもゆっくり、ゆったり。完璧に出来なくてもいいし、失敗してもいいし、嫌だったらやらなくていい。
 こんな風に思えるようになったら、前よりも笑うようになった。おっぱいもよく触る。前はおっぱいを見ると、ああ今日は何センチだろう、測らなくっちゃって思っていたけど、いまは毎日、しょっちゅう触って、話しかける。「なくるない、なんくるない」って、言っている。そうすると、硬いしこりがやわらかくなる。世界中の平和を願うけど、その前に、自分の平和を作りたい。だから、いまはわたしは地球の胎児で、そのうちにもう1回生まれる予定です。

↑富士風穴ではじけたわたし。(2004.12)photo by KIKORI .(クリックで拡大)



No.128=2005年1・2月号

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