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北から南まで
ヘンプオイルを燃料に走る

ヘンプカープロジェクト



麻の有効利用を研究する縄文エネルギー研究所の所長で
ヘンプカープロジェクト実行委員長の
    
中山康直さんに聞く


 植物オイルの一種であるヘンプオイルで走る車が全国を北から南に縦断し、各地のイベントでヘンプをテーマにした衣食住の見本市を出展するという企画「ヘンプカープロジェクト」がスタートした。4月末に北海道を出発したヘンプカーは8月下旬に熊本のゴールまで約五千Hを走る。

 燃料のヘンプオイルは一年草の大麻の種から採ったもので、食用油をはじめシャンプーや石けんなど様々なコスメ用品が作られるが、同時に加工してディーゼル車の燃料にもなる。この燃料は軽油と比べて酸性雨の原因物質である硫黄酸化物SOxを出さないばかりでなく、呼吸器障害の原因となる黒煙が1/3以下になるという環境にやさしい燃料だ。しかも車の改造は必要なく、軽油と変わらぬ燃費と価格が見込まれる。この燃料は、これまでにも廃食油からディーゼル燃料を作ってきた実績のある染谷商店が協力して作られた。またディーゼル車は麻の地ビール「麻物語」を開発、販売している新潟県の新潟麦酒株式会社さんの好意により、4トン車のキャンピングカーが提供されることになった。

 このプロジェクトの趣旨をホームページから引用してみよう。

 「20世紀の化石燃料文明は、便利で快適な生活を実現させた一方で、地球温暖化や大気汚染、酸性雨、環境ホルモンなどの問題を深刻化させています。このまま化石燃料文明を続けるならば、すべての動植物が絶滅してしまうことが明らかになっています。21世紀には、人類は、環境に負荷をかけない新しい文明を築かなければなりません。その実効力のあるツールとして世界的に「ヘンプ」に注目が集まっています。
 ヘンプは、成長が早く、連作が可能で、どんな環境でも育つ植物です。この植物の利用価値はとても高く、衣類、建材、食品、化粧品、紙、燃料、薬品、プラスチック等の生活に必要な製品のほとんどをつくることができます。このヘンプを利用することによって、農・工業一体となった地域循環型社会を築けば、環境問題だけでなく経済問題も解決することができるでしょう。また日本ではヘンプのことを「麻」といい、縄文の昔より栽培され、天照大御神の化身=神として崇め奉られてきた文化的な植物です。ヘンプの環境価値、経済価値、文化価値を全国各地の方に知ってもらうために、ヘンプカー・プロジェクトを企画します。」

 実行委員長で、実際にヘンプカーに乗り込む中山康直さんにお話をきいた。
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中山● 去年、アメリカでヘンプカープロジェクトが実行されました。7月4日のアメリカの独立記念日にワシントンDCを出発して1万6千キロ、だいたいアメリカ一周なんですが、10月半ばにワシントンDCに戻ってくるというもので、そのメンバーはエンジニアや環境活動家などが中心で、1985年製のベンツにヘンプの種から抽出した油を入れて走りました。このプロジェクトは大成功したんですが、テロ事件と戦争のために後半はこの情報が非常に見えにくいというかかき消されたような状態になりました。
 そこでこの尽力を無駄にしないでつなげていこうと思い、日本でヘンプに関わる者達が計画し、今年実行するということになりました。4月29日に北海道の滝川市を出発して、8月23日に阿蘇の幣立(ヘイタテ)神宮と翌日の熊本市でのイベントで締める4ヶ月間のプロジェクトなんですが、ありがたいことにその間の土日はほとんど受け入れ先が決まっていて、各地の環境イベントなどとタイアップしてヘンプの可能性と有用性をアピールすることになっています。
 また同時にヘンプカーは平和の灯を守りながら運んでいきます。イベントのない平日は各地の神社仏閣や麻の伝統地域におじゃまして、平和の灯を分燈したり、平和のメッセージを伝えたりしたいと思っています。物心両面ですね、ヘンプ製品を紹介して産業的な面でアプローチすると同時に、日本民族は麻と関わっている民族なので今一度この時代にヘンプの精神的な意味をつなげていきたいと思っています。

───化石燃料が今の文明のあり方を決めているとしたら、ヘンプオイルを燃料にした車でまわるというのは象徴的な意味があって面白いですね。

中山● 実際に燃料にするには茎からのエタノール、メタノールの方が最適なんですが、今回はヘンプの種から抽出したオイルで車が走るんだよという既成事実を作りながら、ではヘンプとは何なのかと。衣食住‥‥様々な製品ができるんだね、それがほとんど環境にやさしい。原材料のヘンプは一年草で土壌も地域も選ばない。そしてそれが麻薬という固定観念ができているのは何故か、深いところまで掘り下げていきたい。その中で麻薬と言われるヘンプが実は天皇家の祭祀で使われるようなものでもあり、神社仏閣で使われる精神的なものでもあるという矛盾した問題を浮上させていきたい。その結果、自然に法律が解体されていくようなイメージをしているんです。
 確かに大麻(ヘンプ)には薬理成分が含まれていますが、でもこれは麻薬ではなく、古代医学で数千年前から使われていた天然の薬草なんです。そして今アメリカでは医療大麻ということで全米15州くらいで法律が解禁になって主に現代病に劇的な効果をあげています。石油という資源を使って経済を発展させ、便利で快適な文化の中で、様々な現代病が浮上していますが、このような現代病に効果をあげているというのは、石油や原子力のような理にかなっていない資源の対極にある天然資源であると思います。
 行政の人達も様々な抜本的な改革が求められている今の世の中で、新しい方法論が全くなくて先行き不透明になっていますけれど、実は灯台もと暗しで古来からある麻という植物の中にそれらを打開するヒントがありますから、そこに目を向けることによって法律の不合理性が自然に解体していけばいいなと思っています。
 合法化ということで進めてしまうとどうしても対立的になりがちだという今までの経験があるんです。そうではなくて元々ヘンプからは調和のメッセージをいただいているんで、対立ではなくてお互いの立場、たとえば取り締まってる側とか産業に定着させたい側もあるんですが、根幹的な意識は世の中をより良くさせたいというところでは同じだと思うんです。ですからその深い根っこは同じだというところに立ち返って、このヘンプをもう一度見直そうと。現行法でヘンプの種と茎は規制の対象外になっていて、産業的に使えることになっています。また大麻取締法は許可なく大麻を所持または栽培することを禁止している法律でありますが、産業的や伝統的な目的に基づき免許を与えるという項目があります。つまり必然的な理由があれば合法的に大麻を栽培して産業につなげることができるのです。

───ヘンプのもつ特殊性について伺いたいんですが、電磁波のこととか本にも書かれていますね。以前取材したヘンプラボの谷口さんのお話では、パソコンや携帯電話から出る電磁波を麻ひも等の麻製品が防ぐようなことはないが、麻には人間の免疫力を高める力があるので、人が麻のシャツなどを着ていることによって電磁波で受けたダメージをすばやく回復させるということだったんですが。

中山● ヘンプには様々な作用があると思いますが、僕は10年くらい前にMRAという機械で携帯電話を測定したことがあるんです。50人以上の携帯で普通の状態と麻ひもをつけた状態で調べたんですが、そしたら必ず麻ひもをつけた方が免疫力が増し電磁波を中和するような測定結果が出てたんです。でもMRAがまだ現代科学で認められていないということがあって、なかなか公的には言えなかったんです。その後、現代科学でも認められている電磁波シールド測定法で測定したら、電磁波が麻布を通ったあとだとかなり中和されているという結果が得られたんですが、この問題はこれからの重要なテーマだと思います。谷口さんの言っているような人間の免疫力を回復させるということもあると思いますし、麻という素材自体が電磁波を受けにくいというか受けてもあるていど中和するという作用もあるんじゃないかと思っています。
古来、麻ひもを使って結界をはったりしてるんですが、結界をはった所は精妙な空間になって、そこはヒモロギという神霊が降臨してくる場所を作るんです。つまり電磁波とか様々な邪気を払ってしまうんですが、そういう空間づくりに麻の繊維が使われてたんです。古代人たちはデータではなく体感のレベルでそれを知ってたんじゃないかと思います。

───中山さん自身のヘンプ体験はどうですか?

中山● たとえばヘンプのシャツを着て山登りをした時に、綿のシャツを着た時よりも疲れなかったり免疫力が向上してるように感じるんです。コンピューターの前で仕事をしているときも麻の衣をきていると楽に感じます。昔から「麻に交われば直くなる」といわれてきたように麻にふれることで、免疫力がアップし、自然とつながり、素直になります。Oリングテストでも言えることなんですが、その人の体に合っているものがあるとリラックスして筋肉は柔らかくなり、瞬発力が出るんです。合わないものだと緊張しますから筋肉が堅くなって力がでなくなります。

───Oリングでは人によって合うものが様々あるわけですが、ヘンプというのは広く合うということですか?

中山● それはヘンプの多様性ということが言えると思うんです。植物学的にも北極・南極・グリーンランド以外はどこでも栽培でき、一年草ということは、そもそも人間の生活に密着している植物だと思うんです。ですからヘンプは様々な人間に合うと思うんです。
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 すでに北海道をスタートしたヘンプカーはこれから4ヶ月かけて日本列島を縦断しながら各地に出没するので見にいってみよう。
(立ち寄り先やイベント内容についてはこちらを参照)

 ヘンプカーが走らせるためにヘンプ基金が呼びかけられている(下記参照)ほか、ヘンプTシャツ(¥4800‥これでヘンプカーが2km走れる)を販売している。またヘンプの紙で作った地域通貨ヘンプマネー(レインボークーポン)が発行されて全国の協賛店で使えるほか、ヘンプファッションショー、ヘンプクッキングコンテスト、ヘンプペーパーアート作品展等々の楽しいアイデアが実行される予定だ。
 すでに東京でのアースデイに現れたヘンプカーの様子はマスコミ各社で報じられているおり、また全体のツアーの記録を本にまとめようという計画もあるそうで、このプロジェクトは21世紀の幕開けを飾り、ヘンプを通して草の根のネットワーキングの役割も果たしてくれそうで楽しみだ。

ヘンプカープロジェクト事務局
 Tel.03-3681-6861 Fax.3638-0534(赤星)
 ホームページ http://www.partie.net/hpsa/hempcar/index.html
 
ヘンプカー基金へのカンパを募集している  
 個人1口1万円/法人1口3万円
 郵便振替 00950-6-59640「日本麻協会」
 通信欄に「ヘンプカー基金」と必ず記入し
 て下さい。


ヘンプ製品あれこれ

 ヘンプオイルは元々アロマテラピーでも使われる植物オイルでγ-リノレン酸が含まれるため神経皮膚炎など皮膚のトラブルへの効果が確認されているほか、内用すると免疫系を強化しホルモンのバランスをとり、美しく抵抗力のある皮膚をつくる効果があるそうだ。
 また数年前から流行しているのは麻の茎からとった繊維で作った衣類で、綿と半々くらいに使われたTシャツなどは蒸し暑い日本の夏にはぴったりの製品だ。さらに麻の実を使ったソバやうどん、パン、それにヘンプビールも最近では国産のものも出てきている。また最近ではCDケースのような麻のプラスチック製品や建材、断熱材としても利用されるようになり、衣食住すべての面で麻(ヘンプ)が利用でき、その上環境にやさしいこともはっきりしてきている。
 ただヘンプ製品をふだん目にしたり触れたりする機会はまだまだ少ない→価格が高い→買う人が少ないという悪循環があるので、このヘンプカーのイベントに参加して実際に目にしたり触れてみてヘンプ製品をもっとよく知ってみよう。


中山康直さんのプロフィール

 小さなころから神秘的な体験をしてきた。家系をさかのぼると忌部氏につながる。忌部氏というのは今の徳島地方に渡来して麻を栽培していた一族で、古来から朝廷に麻織物を貢ぎ、今も大嘗祭の時に麻を献上している。
 中学生の時に臨死体験をしたことで、運命の糸に麻の方にひっぱられる。アジアを旅して改めてヘンプに出会ったあと麻の有効利用の研究に入り、故郷の浜岡でKAYAというお店をはじめる。今で言うとヘンプショップで、そのおかげでヘンプに関係する様々な人に出会っていく。97年に大麻取扱者免許を取得、さらに研究を続ける。そしてヘンプ産業を興したいという思いが強くなり、98年に伊豆大島に移住する。大島は麻と関係する土地であり、島というのは産業を創出していく上でひな形に なるし、島では独自の循環型社会を形成しやすいと思ったから。そして大島で縄文エネルギー研究所を設立して、麻という植物を通してよりよい社会づくりに貢献したいと活動してきている。いろんな雑誌にヘンプの記事を書いたり、各地で講演会、勉強会をやったり、自分たちで開発したり輸入したヘンプ製品を販売するなど、仕事も麻一本でやっている。著書に『麻ことのはなし』(評言社=Tel.03-3256-6701 ¥1800+税)がある。



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