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石*鉱物と結晶(2)

荻島 敏明(母岩)


 こんにちは、久しぶりです。間があいてしまいすみませんでした。やっと3回目となりました。前回は番外編でしたが、今回は結晶についての続きをお話したいと思います。第一回目で鉱物は積み木や蜂の巣のように、規則正しく配列して結晶している事をお話しましたが、どのようにして結晶が生成されるのかを少し書いてみたいと思います。


 身近なものでみなさんが体験している一つの例をあげてお話すると、日本人の大好きな温泉があります。それぞれの温泉に入ると、入り口に『成分表』があり、そこに例えば、硫黄...何%、石膏...何%、カルシウム...何%などと、温泉に含まれているミネラル(鉱物)の成分が記されています。これは鉱物のもととなる元素が温泉に溶け込んでいるもので、それの種類によって温泉の効能が決まって来ます。そしてさらに地下深くの割れ目を流れる、もっと濃度の高い『熱水』というものがあり、その中にはさまざまな元素が溶け込んでいます。この場合、温度も高く圧力もかかっています。(結晶作用には圧力条件が非常に重要です)そうすると、それぞれの元素は熱水の中に溶けている事ができなくなり、分離して相性の良い元素同士が結合して長い年月をかけて結晶していくのです。温泉はその熱水が地下水でうすめられ、地表に沸き出しているものです。温泉のある場所には鉱物が多く産出するのもこういう理由からです。このような条件でできた鉱床を『熱水鉱脈鉱床』と呼び代表的な鉱物鉱床のひとつです。この他にもマグマが直接地下深くで冷えるときに生成されるものや、前回でもお話した、『スカルン鉱床』などがありますが、いずれにしても、火山活動の影響によってできるものがほとんどです。それと、みなさんがよく「どの位の時間をかけて鉱物は結晶するのか?」という疑問をもたれているのを耳にしますが、天然界の鉱物結晶の成長スピードは今だに測定不能でよくわかっていません。ただ、水晶のなかで煙水晶と呼ばれている黒く変色した水晶がありますが、これは天然の放射能が長い年月をかけて変色させたもので、その変色にかかる時間は最低でも百万年以上といわれています。それを考えると、膨大な年月が費やされて成長した事は想像する事ができます。しかし、鉱物の種類や温度、圧力など条件によってそれらのスピードは異なります。......どうですか?少しは鉱物の結晶メカニズムがイメージできたでしょうか。鉱物の結晶メカニズムの一例を簡単にお話しましたが、他にもまだふれなくてはいけない事がたくさんあります。しかし紙面のスペースもありますので、これから少しずつふれていきたいと思います。
 話しは変わりますが、鉱物の結晶についてもうひとつふれておきたい興味深い事があります。それは『双晶』という双子の結晶で、二つの結晶が一緒に成長してひとつの集合になっているものです。鉱物界にはよく見られる現象で、その結合のしかたでいろいろな双晶のタイプに分けられます。当然鉱物は種類によって結晶の形がちがうので、双晶の形もさまざまですが、ただ偶然にふたつの結晶がくっついているものは双晶とはいいません。ある規則をもとに同時に成長したものが双晶で、例えば水晶を例にとってみると、二つの結晶が『84度33分』の角度で交わり、ちょっと開いたV字型やハート型のようになっている双晶があります。これを『日本式双晶』といい、日本で多くみられた双晶タイプで、かつて山梨県の乙女鉱山で立派なものが産出し世界的に知られ、この名前がつきました。一見、日本式双晶のように見えても角度を計ると84度33分ではないものは双晶ではありません。このように双晶はある規則によって結合しています。他の例では、一見一本の水晶に見えても、その中心軸を共有してもうひとつの水晶が入っている場合があり、これも、『ブラジル式双晶』『ドフィーネ式双晶』と呼ばれ、ひとつの双晶タイプとして知られています。どうしてこのような双晶ができるのかはまだ分かっていませんが、これらの結晶を眺めていると宇宙の法則や、神様の考えが隠されているようで時間を忘れてしまいます。.......さて、これらは結晶についてのお話としてはほんの一部ですが、いかがでしたでしょうか。
 デンマークの医師で鉱物研究家のステノ(1638〜1686)は、一見さまざまな形をしている水晶のカルテをつくり、それぞれの違いを記録しようと試みましたが、隣り合った柱面の角度を計るとどれも同じで、他の異なった水晶を計ってもやはり同じでした。どんなに異なった形に見えても、ゆがんでいても、水晶は六角柱(六方晶形)で、その角度は6角形の角度である60度です。そんなわけで水晶のカルテ作りは失敗に終わりましたが、この事から『面角一定の法則』が発見されました。あたりまえのような法則ですが、それまでこの事に気付いた者は無く、それが結晶の科学の始まりとなりました。        ●



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