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こちらナナオ、ココペリ NOW!

                         


'99.5.4

 インド・ネパールの旅から帰ったという男は,なるほど生成りの毛織りのジャケットを端正にまとい,後ろに白髪の結んだロング・ヘアーをたらして帽子を被っている。テンガロンハット型だけどやはりアジアを感じる新しさ。ポイントに何か石が光っている所につい,目が行ってしまう。彼はオシャレ。

 ステージほぼ中央の最前列にスッと座ると,ざわめく会場の雑然とした何かが,パタッ。と済んで,マイクを握った詩人たちの宴が始まった。ライト・ショウと,再生音源にかぶせて,それぞれの“今”を叫び,うたい,多様なHert Beatは歌舞伎町ロフト・プラス・ワンを震わせた。若手新人が沢山居てがんばってる!
 男の右後方に座る私からは,ステージを見ている視界に必ず彼が居た訳だが,2時間程の公演時間中,目立った身動きがない。時に爆音の様なとどろきにも,ヌードに近いダンサーの妖しい誘いにも,ほとんど反応せずに,いわば楽々と椅子に身を委ねたまま,感覚を開きっぱなしで“居る”という姿。背中は縦の背筋真直ぐに,肩線あくまで横一直線に…。年齢層は幅広く,赤ちゃんからティーン,20〜30〜40〜50〜60代。その中で,最も彼はシャンとしている。

 翌日,神社の公民館の座敷きで,彼,ナナオ・サカキは自分の詩を読み上げている。私は開演時刻に遅れて入場。既に半時間位は進んでいる会場の沈黙をやぶって次の詩の朗読は始まる。声は良く通る艶やかな安定した調子で,独特のリズムと抑揚。今40代の私の記憶では,二十歳のころからか,様々な祭りの場で聞いてきた様に思う。あまり日本にいなかった(らしい)'80年代〜'90年代には,音楽と合わせたテープで聞いていたが,今年になってから江東区民の詩の会の人たちの開いた朗読会が,いわゆる,彼一人のソロのライブとしては,初めて。感激して,もう74歳という高齢とは思えない生きのいい姿に,これはどんどん参加していこうと思ってしまった訳だ。

 歌う様に,話しかける様に,心根に沁み入って来るようだ。何の演出もない。…人々が声の輪の中で共に揺れている様な…ここはナナオの庭。私たちは子供たち。…野性の地球の息吹に魂が呼び起こされて,共に打たれ,怒り,悩み,笑い,涙し,又歩き出す…。子供たちは花びら。風に舞い,一時の言葉をナナオと共にDANCE! きつい文明批判,タイムリーな環境破壊の現状報告。無茶を平気で推進している原子力発電。沖縄の珊瑚の海と優しい子供たち,北米大陸の真っ白な雪景色,惑星間を流星で飛んで行く。野性の動物のしなやかな一瞥。ユーモラスで,容赦なく,我を知り,草花のいのちの巡りに敏感な,高貴で冷静であったかい日本人の知性が香っている。そして叉,彼を私たちは送りだす。「ココペリ」出版記念ツアー,イッテラッシャイ。…彼は旅人。

 ナナオにとって,冬は思いきり寒くなければならず,春には柿の葉や野草の天ぷらが皿に山盛りになくてはならず,夏は…,秋は…。「じゃなきゃ,つまらないよ!」「面白いから歩くのさ」。そう,びっくりするから止まり,発見して,遊び戯れて,そして詩を残す。話す様に詩を書いて,そして沢山の質問をする。
 「どこから来たの?」「これは何というの?」。サインをしてもらおうと詩集を差し出す人々に,「それで今日はどうするの?」。無邪気で純朴。自分の番が来た。っと,彼は突然真っ赤なウェスト・ポーチを開けてスペアインクを取り出して,万年筆のインクを充填した。「いつもこのペンで詩を書いているんですか?」。「そうなの」,うなづきながらニコニコしている。私は息子の分と2冊のサインをお願いした。

 '76〜7年頃だろうか,よちよち歩きのわが子が,ほびっと村の当時「フリースクール」で,ナナオと共に写っている写真が脳裏をよぎり,「未だ小さい頃の事しか覚えてないなぁ」と言ってくれる彼にその話をすると,そうそう,そうだったねと懐かしむ。20数年前のことになる。「ナナオには沢山の子供たちが遊んでもらったものね」。写真家のくまさんが,そう言って,是非5月末の「ほびっと村」での会は,ヴィデオ記録を残しましょう…と言う提案に,「ほぅ!君はそういう事ができるんだ」「そう,それは又是非そういう風に考えていきましょう」。みんな嬉しい。
 「少し熱があるみたい」。今,たった今「みんなのお父さん!」だった人が言う。昨夜の土砂降りにあたった服を,着たまんまで乾かしたという。(!!なんということ!言ってくれれば着替え位持ってきたものを。)と,内心怒っている私は,瞬時にやんちゃ坊主の母の気分か?すぐにでも近所の服屋に走りたい感情を押さえてため息をついた。…彼,ナナオはこれ程に,元気。

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 ちなみに,前日LOFT +ONEは,「Heart The Beat」
Dr.SEVEN&ビアンカと,「ジャック・ケルアック」(河出書房新社)を出版したばかりのムロケンを中心にした,ビート詩人の会。翌日は国分寺「ほら貝」主催,人間家族出版「ココペリ」記念。本多八幡神社

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