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島日記

1998年1月

島の知恵が役立つとき

★師走に入り、風も冷たくなってきた。アヤと散歩をしていると、アロエのオレンジっぽい花やツワブキの黄色い花、それに小さくて目立たないがイズノシマダイモンジソウの大の字をかいたようなかわいい白い花を目にするようになった。林の中でことさら目立つアオノクマタケランの赤い実は生き生きと美しく、お正月の部屋に飾りたくなる。

★今年は史上最大規模となったエルニーニョの影響で暖冬になるという。寒がりの僕としては、目先のことだけ考えると嬉しいが、このところ愛飲していたパプアニューギニア産のオーガニックコーヒーが、最近何度注文しても「Out of Stock」で入荷しないのは、きっと東南アジアからオーストラリアにかけての異常高温+小雨で干ばつになっているせいなのかと思う。

★八丈島は砂浜の海岸がほとんどなく、断崖絶壁になっているところが多いので、海面が1mも上昇してもあまり影響なさそうだが、オランダや南太平洋、インド洋の島々の人たちにとっては深刻な問題だ。特に資金も技術も乏しい「発展途上国」の人にとっては未来がない絶望感に陥ってしまうだろう。

★海面上昇の影響が少ない八丈島といっても、今年の秋は雨が異常に少なかった。もともと小さな島は水不足になりがちだが、八丈島はこれまで雨が多い特有の気候のおかげで、水の心配はあまり経験がなかったようだ。しかし江戸時代以前には飢饉に何度も見まわれ、大勢の人が飢え死にした歴史がある。これからの地球規模の異常気象ではどこに住もうと平等に苦しむことになりそうだ。

★環境問題が叫ばれるようになってから、自然と共生する先住民の知恵ということがよく言われるようになった。もともと地球自体が宇宙に浮かぶ小さな島のようなものだ。限りある小さなスペースの環境をいかに大切に守り、使わせていただくか、島に住む人にはそんな知恵がありそうなものだが、今では都会的な暮らし方がすっかりしみついてしまい、島の知恵はどこかに忘れ去られてしまったかのようだ。しかしその知恵がない者はもはや生き延びていけないような時代が、すぐそこまで来ているのではないだろうか。島人や先住民の知恵は実は誰の中にも眠っているはずだ。それを掘り起こすことができるかどうかは、どれくらい真剣になれるかによるという気がする。お正月の部屋に飾ったクマタケランの赤い実を眺めながら、世紀末のまっただ中に生きる覚悟を決めてみよう。(ア)

 「大」という字に似てるから名  前がつけられたイズノシマダイ  モンジソウ。あまり日当たりの  よくない崖などに群生している。

八丈島の部屋