2003年8月25日 十和田市 ひだまり保育園




お母さん対象のヘンプアクセサリーワークショップに引き続いてのコンサート会場は、さっきまで子ども達の賑やかなはしゃぎ声が聞こえていた隣の保育室。「まだですか〜。」との保母さんの呼び声に、「今、行きま〜す。」とバイオリンとギター、譜面台を抱えて、移動したら、こどもたちのきらきらの瞳が、もう聞く気満々で床に可愛く並んでこちらを見上げていた。こどもたちの側には、なんだか優しそうな保母さんたち。彼女たちは時々、ワークショップが気になってのぞきに来て、「我慢できない。買っちゃおう。」とアクセサリーを買ってくれたりしていた。こどもも大人も自由で楽しげであったかい空気の保育園なんだ。後ろには、こどもたちのお母さんも楽しそうに歌を待っている。
 今の今まで、遅れて参加したお母さんにブレスレットの編み方を教えていたから、ギターやバイオリンのチューニングもまだだし、もちろん選曲もしていない。チューニングする時も、きらきら光る瞳たちを感じてた。なにから始めようかなあ〜。外は雨。そうだ、自由にバイオリンを弾いてみよう。
 こどもたちの年零は赤ちゃんから5才くらいかな。小学生も数人。「外は雨が降ってるでしょ。バイオリンもいろんな音を出すんだよ。怒ったり、泣いたり、笑ったり。」こどもたちのすぐ側に膝をつき、こどもの間を移動しながら怒ったバイオリンのメロディー、泣いてる音、笑ってる音を弾いてみる。ポカ〜ンと口を空けてるあどけない顔。そのあとは、こどもたちと話しながら4曲歌い、かえるの歌をこどもたちが歌い、バイオリンも遊ばせて、ああ楽しかった。なんて可愛い子ども達。
 
北海道は伊達紋別のシュタイナースクールひびきの村に、こどもを通わせる親である木村さんが、昨年、ひびきの村ちかくの石倉で仲間とコンサートを企画してくれた。そして今年も、2日前、彼女たちの企画で伊達紋別の老人福祉施設を会場に素敵なコンサートがあったばかり。北海道から南下する時に、十和田でもコンサートできるようにと、木村さんが、友人である酒田さんに資料を送ってくれたおかげで、まだ一度もお会いしたことのなかった酒田さんがひだまり保育園に、声をかけコンサートとワークショップが実現した。

ひだまり保育園は、その前身であった無認可保育園が認可されると共に予算の都合などで首を切られた保母さんたちの手によって 始まったばかりの無認可保育園。こどもをおもいっきり遊ばせたいという思いで始まった前身の保育園も、次第に経営的発想にとりこまれ、けれど認可とともに首を切られたことが幸して、純粋な原点に立ちかえった保母さんの手でゼロから始まった保育園だからこそ 管理的空気が一切なく気持ちいいんだ。
 
こどもたちに合わせて30分くらいで切り上げたコンサートの後はお母さんたちと1時間くらいのお茶タイム。出産の話など質問に答え、さしいれのシュークリームをみんなで食べて、わたしは再び歌った。
 
夜は、酒田さんのお家で夕食後、家族に2曲歌い、高校の社会の先生である酒田さんのパートナーと学校をめぐるお話をしました。カリキュラムがそのままで週休2日になって以来、教える側もさらに余裕がなくなりキツイという話や公教育の始まりから考える日本の教育の性格についての話など。わたし自身も社会科の教師になるべく大学に通っていた時代があり、今は小学校へ通う2人の男の子の母であり歌手だけど、酒田さんの仕事や立場、気持ちが共感できるし、親として学校にコミュニケーションする上で大変参考になる話でありがたい出会いでした。

ツアーでは、その日の出会いやハプニング、コンサートや交流会、宿泊などの流れの詳細は、その時にならないとわからない。いつも、その日、その場に到着してはじめてその場の空気や事情がわかる。心を白紙にして、出会いを重ねると、ひとつの出会いがまた次の出会いを運んでくる。

ライブコンサートを巡る流れ全てが、いつもライブ。そこが、ツアーの面白いところかなあ。