2001年2月12日  

 地元の教会を借りて
 初めて自主企画のコンサートをしました


今朝は、ラウンドハウスでこどもたちと朝食を食べてから、隣家にひとりでやってき
た。樫の森までの坂道を登り、焼き物の作業場もある見晴らしの良い丘を抜けて、し
ばらく歩くと小川のせせらぎが聞こえてくる。きょうは暖かいいい日より。たったひ
とりで犬を連れて、散歩気分で誰もいない山を家から仕事場に出かけられるなんて、
贅沢だ。なぜか、わたしは清らかな川のせせらぎの音と光のきらめきに天国を感じる
。たった一瞬、一瞥するだけなのにその印象はしっかりと心に入り込む。
 
1月28日から、仮のわたしの本拠として隣人の留守宅をお借りしているのだが、町
に出かけることが多く、なかなか来れなかった。家族が一緒であることはとても自然
なことだから、このところわたしも、山にいられる少ない時間をラウンドハウスで家
族と過ごしていた。でも同時にその貴重な時をここでも過ごしたかった。与えられた
スペースに応じて、新しい自分が生まれてきてるのを感じてるから。今日は、パソコ
ンとhempのクラフト、そしてギターを持ってここに来ている。昼にはこどもたちが遊
びに来るだろうから、薪ストーブの上には野菜スープと玄米ご飯を用意した。彼らが
いつきてももう大丈夫だ。夕方にはラウンドハウスで和生と日本語の歌の練習をする
。夜はこちらへ星空を見ながら八星と戻ってくる予定。

昨日の日曜日は、ここ5〜6年、レギュラーシンガーとして月に1回ほど歌い続けて
きたukiah教会の日曜礼拝でいつものように自作の歌を3曲、歌った。でも、どこか
いつもと違っていた。それは、今月末、私たち家族が再び日本へ行き、今回は半年は
戻らないという旅立ちの挨拶をしたことの他、つい数日前にこの教会をお借りして自
主企画のコンサートを開いたことで改めて教会の人たちをはじめ、来てくれた人との
つながりが深まったからであったような気がする。日本とオーストラリアへの旅のオ
ーガナイズと準備で忙しかったのに地元でのコンサートをも初企画したのは、動きを
大きくすればするほど、足下をしっかり固めたくなる自然な気持ちから。英語でのス
ピーチも今までは行きあたりばったりでしどろもどろすることもあったが今回は事前
に考えた。

教会から出ようとすると”wait! waite!"とCandiceが声をかけてきた。彼女はこの教
会のミニスターで、もともとは歌や演劇、ダンスを学んでいたという51歳の美しい
女性だ。彼女のパートナーDavidは、彼女より10歳年下。教会の音楽ディレクター
をしているが本業はデザイナーで、わたしたちの歌の英訳からCDカバーのデザイン、
英語のSong bookまで無償で手がけてくれている大変有能で心優しい人だ。教会とい
ってもここでは、聖書を開くわけでもなく、Candiceが彼女自身の生活や体験のなか
からの気づきを話し、いかに日常の中で魂を目覚めさせてゆけるかを伝えていく。わ
たしはCandiceの話にいつも心を動かされる。台本もないのに実にいきいきと出会っ
た人や起きた出来事を伝え、そのできごとのエッセンスを抽出し伝える技がみごとな
のだ。そして、彼女にそれを語らせる動機は溢れるような愛であることがひしひしと
伝わってきて感動する。彼女が話し始めると独特のきめ細やかな波動がその場を満た
してゆくような気がする。

CandiceとDavidはわたしと和生にプレゼントを用意していた。こちらでは、プレゼン
トはいただいたら、その場であけてみるのが礼儀だから、すぐにあけてみた。わたし
と和生、それぞれに似合いそうなスカーフが包まれていた。”just becouse you
are oue friends!"とCandice。しっかりとわたしの目をみつめて抱きしめてくれた彼
女は、しばらくの別れを惜しんでくれているのがわかった。わたしはCandiceを尊敬
している。今までも、特別の愛情や賞賛を表してくれたことが何回かあったが、今回
はそれが本気であることをようやく素直に受けいれられた。”どのくらいわたしがあ
なたを恋しく思うかわかってる?わたしはあなたからたくさんのことを学んでるのよ
。”という言葉はわたしには過ぎた言葉であるような気がしていた。でも彼女は今回
も本気で言ってくれてるのだ。愛されているということを受け入れると、今度はそれ
を失うことが怖くなる。でも、愛と評価とは別物だ。愛は無条件のものだし、基本的
には自分自身の中に既にあり、失うものではないと頭ではわかっている。わたしは、
今この瞬間、自分が尊敬している人に受け入れられ愛されていることを、驚きととも
おずおずと受け取った。心の中に喜びが広がった。

”自分は愛される価値がない”という小さい頃からの思いこみがこの頃、少しずつ消
えてゆく。心の中にやってくる小さなささやきを聞き取って、それを思いきって実現
させてゆくと本来の自分が目覚めてくる。すると次第に古い価値観が自分にそぐわな
くなってゆく。

この日は聖バレンタインディー、candiceの話は愛について。傷つくことをおそれて
いつの間にか作ってしまっている、心の壁を少しでもあけて怖れず愛してゆこう、と
いう話。そう、わたしも怖れず愛してゆきたい。