秘密結社ヴリルとナチスUFOの謎

(その三)


 

ハウニヴー型円盤

 1990年代に入って、ドイツではナチスUFOに関する情報が流れた。それまではオメガ・ディスクからシュリーバー型円盤やベルーゾ・ミーテ型円盤、それにシャウベルガー型円盤がせいぜいだったのが、ベル型円盤にまで踏み込んだデータが、新発見という形でリークされるようになった。
 中でも、人々の度肝を抜いたのは、RFZ型円盤をはじめとするハウニヴー型円盤や、ヴリル型円盤、それに葉巻型宇宙船アンドロメダといった、まさしく今日のUFOを髣髴とさせる機体だった。これらは設計図のみならず、テストフライトの光景を撮影した写真も公開され、UFOファン、好事家たちの耳目を集めた。
 日本では、矢追純一氏が現地取材を敢行し、ナチスUFOと関わった人々を取材。テレビの特番で放映する一方で、その証言を『ナチスがUFOを造っていた』(河出書房新社)にまとめた。
 それによると矢追氏に情報をもたらしたのは、秘密結社「聖堂騎士団」のメンバー、ノベルト・ラトホッファーなる人物であるという。

 ラトホッファーによれば、第2次大戦中のナチス・ドイツのUFOは、2つの組織で開発が進められていた。一つは、ナチスの親衛隊SSの中のE4と呼ばれるセクション。
 もう一つは、ヴリル協会と呼ばれる秘密結社でも、独自に研究し、製造していた。
 ヴリル協会の開発責任者は、シューマン博士という科学者で、ここで造られるUFOには“RFZ”というコードネームが付いていた。
 1934年、ヴリル協会は、すでにこのRFZ―1というタイプを完成し、さらに続けてRFZ―2のテストフライトに成功していた。このタイプのUFOは、その電磁場によってUFOの周囲の空気がイオン化するため、外形が変化して見え、色が変わるように見えるのが特徴だった。
 そして1938年までに、さらにそれが発展したRFZ―5までが造られた。このRFZ―5から、なぜかコードネームが“ハウニヴー”に変えられた。そして、1938年の8月、ハウニヴー1の初飛行が行われた、といわれている。
 これは、直径25メートルで、8人の乗組員を乗せ、時速4800キロを出したが、後に改良され、時速1万7000キロまでスピードアップした、という。

トゥーレ・タキヨネーター

 一方、親衛隊SS部隊、E4の方は、1938年にハンス・コーラーという科学者が開発した画期的なエンジンを使って、円盤を製造し始めた。イギリスの情報部が調査した『新エネルギー源に関するハンス・コーラーの発明』と題する報告書がある。それによると、コーラーの発明したこの新型エンジンとは、次のようなものだったらしい。

―まず、主体は強力な棒磁石と、それにある特殊な巻き方で巻いた銅線とで成り立っている。こうしたマグネットコイルを6個用意し、これを六角形に配置する。それに、コンデンサーと2つの筒型コイル及びスイッチで構成された電気回路を接続する、という簡単なものだった。
 これを作動させるには、まずスイッチを切っておき、六角形に配置されたマグネットを互いに少しずつ離す。そして、コイルの位置をゆっくりとアジャストしていきながら、電流の流れを監視する。すると不思議なことに、電流計の針が振れ始める。やがて、テンションが上がってきたと思われた時に、スイッチをオンにする。その途端、なぜかこの電気回路に、強力な電圧が発生するらしいのだ。

 報告書によると、ハンス・コーラー自身、これがどのような理論に基づいて起こるのかを説明できなかった、とある。だが、英国情報部自身が検証したところ、確かにこの“コーラー・エンジン”は電力を発生し、作動した、と書かれている。
 SS部隊のE4セクションは、このコーラー理論に基づく“コーラー・コンバーター”をさらに強力なものに発展させ、“トゥーレ・タキヨネーター”と呼ばれる反重力推進エンジンを完成させたといわれる。

 そして、1942年の冬、ヴリル協会は“ヴリル”というコードネームの円盤を開発し、そのテスト飛行が行われた。これは直径が11メートルで、“ヴリル1”から“ヴリル7”まで、全部で27機製造され、85回のテスト飛行が繰り返された。この“ヴリル7”から、この機種は「オゥディーン」と名で呼ばれ、内部が2階構造になった。
 時を同じくして、SS部隊のE4はハウニヴー円盤の改良型“ハウニヴー2”の開発に取りかかった。これは、直径が約26メートル、高さが約11メートルという大型で、“トゥーレ・タキヨネーター”を推進力に、時速およそ6000キロのスピードが出るものだった。乗組員は20名までで、55時間飛行することが可能だったという。
 フーファイターと呼ばれたナチスの空飛ぶ円盤のいくつかは、実はこのRFZ型円盤ハウニヴー2だったという。
 機体の性能が一定のレベルに達したことで、ハウニヴー2は本格的な量産体制に入る。
 SS・E4が開発したデータを基に、民間の軍事産業に製造を任せるべく、ナチスは入札を実施。ドルニア社とユンカース社が手を上げた。結果、1945年の3月末、ドルニア社が落札。当時の最新の技術を投入して、ハウニヴー2を改良し、量産にこぎつける。
 いわば空のビートルとなるべく製造された機体は、ドルニアの成層圏航空機という意味で「ドゥ・ストラ」と呼ばれた。
 が、せっかく量産したハウニヴー2ドゥ・ストラだったが、開発して間もなく終戦を迎えてしまう。以後、この機体の開発はアメリカと同盟国であるイキリスで継承されることとなる。

葉巻型母船アンドロメダ

 ナチスが開発した巨大UFOの極めつけが、「葉巻型母船アンドロメダ」である。全長139メートル、幅30メートル。トゥーレ・タキヨネーター・エンジンを4基、シューマン・レビテーターを4基搭載し、その速度は時速3万kmにもなるという。
 内部には、ハウニヴー型円盤1機とヴリル型円盤2機を搭載可能で、乗組員は130人を収容できた。
 想像しただけでも壮大だが、この巨大母船アンドロメダ、宇宙空間も航行できたという。実は、アンドロメダに限らず、ハウニヴー1を除くハウニヴー型円盤やヴリル型円盤は、みな宇宙空間を飛行する能力があったという。
 これが実現していたら、まさしく宇宙船なのだが、実際はさにあらずだった。
 ノベルト・ラトホッファーが語るナチスUFOのデータはかなり誇張されている。
 飛行速度や性能に関しては、ほとんど信用できない。はっきり言って偽情報である。
 彼は意図的にフェイクが混入した情報を語った可能性がある。とすれば、背後にいるのはアメリカ軍―NSA(国家安全保障局)である。公開された写真にも、フェイクが含まれている可能性は十分にある。
 たとえば、巨大母船アンドロメダに関していえば、ナチスは製造には至っていない。
 あくまでも設計段階で終戦を迎えており、実際に製造したのはアメリカ軍だった。しかも、試作機は1機のみで、テスト・フライトの際、不具合を起こしてモハーベ砂漠に墜落。 以後、アンドロメダの開発は凍結されたという。

 特筆すべきことは、これらのUFOに組み込まれた“トゥーレ・タキヨネーター”なるエンジンが、従来の常識的な動力機関とはかけ離れたエネルギーを発生させているという点だ。トゥーレ・タキヨネーターは、ハンス・コーラーが発明した特殊なモーターを主動力源にしている。トゥーレ・タキヨネーターは、このモーターから発せられる電磁場をさらに増幅し、推進エネルギーに変換することを可能にした。
 おそらくは現在でいう「超電導モーター」と似た原理を活用していたことが推測される。空間(真空)のゼロポイント・エネルギーによって駆動する一種のフリー(無限)エネルギー機関であるらしい。だが、詳細は分かっていない。ただ分かっていることは、トゥーレ・タキヨネーターは何らかの形で反重力的なエネルギーを発生させていたということだ。

 大戦末期のナチスには複数のUFO開発ラインが存在していたことが分かっている。
 空軍、親衛隊の兵器開発セクション、そしてヴリル協会である。が、ヴリル協会こそが開発の本流だった。また彼らは徹底した秘密主義を貫いていた。ほかのラインにおけるUFO開発は、詳細な実験記録や技術者の証言などが数多く残され、現在ではその実態がかなり解明されつつある。それに対して、ヴリル協会のUFO開発は未だ多くの謎に包まれたままだ。
 ハウニヴー型円盤に搭載されたトゥーレ・タキヨネーターは、現代物理学の常識を超えた反重力エネルギーを発生させる。
 そのエネルギーは、現代科学の延長線上にあるものではない。アメリカ軍は、先端科学の粋を結集して、それを再現しようとしたが、実用化にまでは至らなかったようだ。
 アメリカ軍が、ハンス・カムラーから得たデータを基に、試作した改良型円盤ハウニヴー2=アダムスキー型UFOは、1950年代まで開発、テストフライトが行われたが、その後は、アメリカ軍の“地球製UFO”は、機体がデルタ型の全く別物に切り替わった。

アダムスキーとハウニヴー型円盤

 ヴリル協会と親衛隊E4が開発を進めていたというナチス円盤だが、これらの中に見覚えのある機体が存在する。「RFZ―V型円盤ハウニヴー2」だ。公表されている側面図を見ると、それはまさにアダムスキー型UFOである。これが、単に設計図のみならば、データの偽造ということも考えられるが、写真も存在する。何の説明もなく、ハウニヴー2の写真を見たならば、ちょっとUFOを知っている人は、10人中10人がアダムスキー型UFOだと指摘するだろう。
 これはいったいどういうことか。ジョージ・アダムスキーが遭遇したという空飛ぶ円盤は、アメリカ軍が試作したハウニヴー2である。けっして金星から飛来した宇宙船、もしくは観測機ではない。アダムスキーと円盤ハウニヴー2。そしてアダムスキーが主張する、デザートセンターの砂漠における金星人とのコンタクト事件。そこで起きたことの真実は何だったのか―。

 アダムスキーとハンス・カムラーは同じポーランド生まれで、アダムスキーは10歳年上だった。共にアメリカ西海岸にいた2人は、アメリカ国内で鉄の団結として知られるポーランド移民の組織「ポーランドの家」で顔を合わせていた。
 当時、アメリカ軍は1947年に起きたロズウェルUFO墜落事件で神経過敏になっており、対エイリアン対策に利用できるかもしれないハウニヴー2改良型のテスト・フライトの絶好のカモフラージュを捜していた。そこで目を付けたのが、売れないSF作家で、宗教哲学に興味があるアダムスキーだった。この男に接近し、ハウニヴー2改良型を見せたり撮影させることで全てがうまく運んだ。
 カムラーはアダムスキーに、実は自分はアメリカ軍の秘密を知る立場にあるとして、小型の観測機円盤と葉巻型母船が写っている写真を見せた(アダムスキーが撮ったとされる有名な写真)。アメリカ軍は、このように宇宙からの訪問者の存在を知っているのだと。
 この瞬間、アダムスキーは空飛ぶ円盤と宇宙人が実在することを確信した。
 つまり、カムラーの手に落ちた。
 しかし、写真に写っているUFOは宇宙人のUFOではない。アメリカ軍が開発を続ける地球製UFO―ハウニヴー2と、墜落する以前にテスト・フライトを行った葉巻型母船アンドロメダである。

 アダムスキーに近づき、宇宙人の存在を信じ込ませることに成功したカムラーは、次の作戦を実行する。アダムスキーに金星人と会見させるのだ。もちろん演出である。その正体はアメリカ軍の兵士である。改良型円盤ハウニヴー2に乗った兵士が金星人を演じるという設定だ。カムラーはアダムスキーに、前もってコンタクトの日時と場所を指定した。
 それに従って、アダムスキーは目撃証言者となる6人の仲間を引き連れて、当日、モハーベ砂漠のデザートセンターへと出かける(1952年11月20日)。
 その時、「金星人」と会見したのは、アダムスキー1人であり、仲間6人は双眼鏡で遠くから見ていたに過ぎない。
 しかし、アダムスキーの証言で、一つだけ真実がある。デザートセンターの峡谷には、確かに空飛ぶ円盤が着陸していたのだ。仲間6人からは見えなかったが、アダムスキー型UFOが、そこにあったのだ。もちろん、それは金星人の円盤ではない。アメリカ軍の秘密兵器、改良型円盤ハウニヴー2だ。カムラーは指定の場所にハウニヴー2を着陸させておいたのだ。アダムスキーは約束通り、その場所に行き、金星人の空飛ぶ円盤を目にしたというわけだ。

 この時点で、アダムスキーはハウニヴー2を別の惑星からの空飛ぶ円盤だと信じている。ゆえに、そこから現れた人間を見て、当然ながら宇宙人―金星人だと思い込んだ。
 この時、実際に金星人と会見したと思い込んだアダムスキーは自信に満ちていた。
 帰る途中、仲間の提案で、新聞社に報告することとなった。こうして4日後の11月24日、驚くべき金星人とのコンタクト事件は、カリフォルニア州オーシャンサイドの新聞「フェニックス・ガゼット」に掲載され、全米に一大センセーションを巻き起こすこととなる。以後、彼の空飛ぶ円盤とスペース・ブラザーズ(宇宙人)幻想は暴走し、誰も止めることはできなくなっていく。空飛ぶ円盤と金星人とのコンタクトによって、アダムスキーは全世界から注目を浴びることになり、と同時にUFOと宇宙人に関するアダムスキーの言動はどんどん派手になり、ついには『空飛ぶ円盤同乗記』を発表し、自分は宇宙人の円盤で宇宙へ行ったと公言するようになる。

 ここまで来ると、もう後戻りはできない。カムラーの狙い通りである。UFO情報を混乱させるためには、アダムスキーのような存在が非常に役に立つ。
 自称コンタクティは進んで偽情報を流してくれる。彼らの体験には少なからず真実が含まれているものの、大半は虚構である。そのため、いつかはばれる。ばれた時、真実のひとかけらもまた、一緒に妄想として片づけられ、UFO情報全てが否定され、まともな人間ならば、誰も真剣に取り合わなくなる。
 アダムスキーの場合、それをNSA(国家安全保障局)がバックアップした。金星人とのコンタクトを演出し、彼をおだて、情報を与え、政府関係者や要人たちと引き合わせ、マスコミへの露出をプロデュースした。さらに、アダムスキーの証言が真実であるかのように、アメリカ以外の国でも、改良型円盤ハウニヴー2を飛ばし、多くの人に目撃させた。 ハウニヴー2は、やがてアダムスキー型UFOと呼ばれるようになり、今日ではUFOのステレオタイプとして全世界の人々に認識されるまでになったのだ。

 アダムスキー自身が撮影した空飛ぶ円盤の写真は、トリックが含まれている。そのための模型をカムラーは用意し、アダムスキーに渡していたのだ。この時点で、アダムスキーは自分が利用されていること、ロバート・スミス(ハンス・カムラー)という男が政府の回し者で、UFO情報を攪乱させようとして自分を使っていることも分かっていたに違いない。分かっていても、かくも大風呂敷を広げてしまっただけに、真実を暴露することは絶対にできない。政府の陰謀の片棒を担ぐしかなくなっていたのだ。
 大衆の心理操作を大々的に行ったのはナチス・ドイツが初めてである。その大衆操作のテクニックを駆使して、アダムスキーのUFOコンタクト・ストーリーは喧伝されたのだ。

最後に残る真実

 アダムスキーが巨大母船に乗って、宇宙人のマスター(大師)と会見したり、月や金星に行ったり、土星での宇宙連合の会議に出席した等という話は、検証のしようもなく、その多くは現実の物理的体験ではなく、彼の宇宙哲学が生み出した幻想であると考えざるをえない。
 アダムスキーのコンタクト・ストーリーを否定し、批判することはたやすい。だが、全てを否定することで、何か重要なものを失う気がしてならない。アダムスキーはただ騙されて、偽物の空飛ぶ円盤と宇宙人の宣伝屋をやっていただけなのか。地球人ではない本物のエイリアンとUFOとの接触は、本当になかったのかという疑問が未だ残る。
 アダムスキーは言う。宇宙人は邪悪な存在ではなく、絶対平和主義者で、友好的である。その姿は地球人と全く同じである。太陽系の惑星には、全て宇宙人が住んでいる。
 月にも水が存在し、宇宙人の基地がある。太陽も、その表面は灼熱地獄ではなく、生物が生息できる環境が存在する。

 一般常識は別にして、飛鳥昭雄氏が暴露する情報と少なからず一致するのも事実である。たとえば、エイリアンはグレイではなく、地球人と全く同じ姿をした知的生命体で、エイリアンの基地は太陽系の全ての惑星に及んでいる。月には氷の地殻が存在し、空洞である内部にエイリアンの基地が多数、存在する。太陽は核融合ではなく、プラズマによって光っており、その光球―対流圏の下には、巨大大陸と海洋に覆われた超巨大地殻天体がある、等々。これは単なる偶然ではない。深い部分では繋がっているに違いない。
 少なくともアダムスキーは、政府筋ではないところから情報を得ていたふしがある。
 アダムスキーと飛鳥情報に共通するもの。いったいそれは何か―?

*画像は『ナチスUFOの謎』飛鳥昭雄/学研、『ナチスがUFOを造っていた』矢追純一/河合で書房新社、
『空飛ぶ円盤同乗記』ジョージ・アダムスキー/ボーダーランド文庫より転載



 

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