銀河中心からの衝撃

 米・ルイジアナ州立大学のジョン・ウィーフル教授を中心とするNASAの研究グループによって、高エネルギーの宇宙線が地球に多数飛来している事実が明らかになった。その観測結果から、それは南極上空高度35kmに多く存在し、300〜800GeV(ギガ電子ボルト)の宇宙線であることが判明。これは銀河系起源の宇宙線で、その発生源は太陽系にかなり近いと推測された。だがそこには、高エネルギー宇宙線の発生源となるような天体は発見されておらず、件の宇宙線の源は謎に包まれたままである。
 銀河系の中心はブラックホールがあるとも言われているが、そこからはとんでもない莫大なエネルギーが放出されていることはほとんどの学者が同意している。ハッブル宇宙望遠鏡で撮った銀河中心の写真を見ても一目瞭然だ。つまり、そこからは銀河宇宙線(スーパーウェーブ)が放出されているということである。前回述べたアレクセイ・ドミトリーエフが語る「銀河中心からの衝撃」とは、このことを指している。そして2012年頃、太陽系がこの銀河宇宙線をモロに浴びるであろうことが分かってきたのだ。

 銀河系の中心領域は、「射手座A」と呼ばれる巨大なエリアが中心にある。中心部の円の直径は2000光年ある。巨大な台風の目と考えれば分かりやすい。この銀河の中心部には、太陽の1000万倍の大きさで、1億倍明るい超新星(スーパーノヴァ)が、不規則な時間間隔で誕生する。そこから東寄りには若い超新星が、西寄りは電離水素の領域となっている。単純な観測によっても、中心部が非常に明るいことが分かる。
 私たちの銀河は、中心核が凝集して強い輝線を発する「セイファート銀河」の一種である。セイファート銀河は、計算上ではたいてい静かな状態にあると見られているが、しかしそれらの中心は、まるでクリスマスツリーの照明が点滅するように、強力なエネルギーの断続的な爆発があると見られている。

 アメリカの宇宙物理学者、ポール・ラヴィオレッテ博士。彼は国連やギリシャ政府の太陽エネルギーコンサルタントやユネスコの科学アドバイザーも務めた優秀な学者である。
 彼は地球規模の大災害が起きた人類の歴史から、同じような現象が近い未来かあるいは次世代に再発する可能性や、そのタイミングについて研究することに、強い関心を抱いた。ラヴィオレッテは、銀河の遠い彼方から放射された強い宇宙線粒子(スーパーウェーブ)が、地球に直接届いていることを初めて予測したことでも知られている。ラヴィオレッテが古代の神話や黄道帯の星座の位置から導き出した計算により、数千年前にも銀河の中心において大規模な爆発があったことが判明した。さらには、超新星爆発のエネルギーより500〜1000万倍も強い周期的な爆発が、我々の銀河系の中心で起きており、その結果、宇宙線粒子が激しく放出されたと結論づけた。
 ラヴィオレッテは、このような銀河中心の巨大な爆発を「銀河のスーパーウェーブ」と名づけた。さらに銀河のスーパーウェーブは1万年おきぐらいに繰り返されていて、その影響は数百年から数千年続くという結論を出している。爆発によって放出された宇宙線は光の速度に非常に近いもので、銀河の中心から外側に向かって、コズミックダストを運びながら地球へ向かうという。そういった長年の研究と調査を基に博士は、現在の太陽系はコズミックダストが大量に存在している領域を通過しており、そこを通過する際に「スーパーウェーブ」が起きると、それは地球の気候に深刻な被害を与えると結論づけている。

 「銀河のスーパーウェーブ」は、超高エネルギーの宇宙線が光速に近い速度で移動する現象である。地球からはおそらく、まばゆいくらいの青い光のスポットとして見ることができるだろう。それが到達するにつれて、地球の電磁場は影響を受け、我々の身体、神経系統ももちろん影響を受けることになると考えられる。


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