「フォトンベルト」の嘘と真

 先ずは基本的宇宙地図と“光”についての物理的特性から確認していこう。まず太陽系はプレアデス星団を中心に公転していない。フォトンベルト神話では、太陽系が2万6000年かけてプレアデス星団を一周しているというが、全くもってそんな観測事実はない。

↑フォトンベルトが発見されたとされるプレアデス星団

 一方、太陽系が銀河系内を一周する時間は2億2600万年である。
 電磁波が粒子の形をとったものが光子であり、英語でフォトンである。フォトンは電磁波であるがゆえに質量は存在しない。質量が存在しないゆえ光速度で移動する。逆に言うと停止できないのである。一定の空間に留まるフォトンはありえない。少なくとも宇宙空間において、巨大な帯状にフォトンが分布することはない。
 フォトンベルトの証拠として掲げられるハッブル宇宙望遠鏡が撮ったというプレアデス星団の写真も、手前に別の星雲が重なって見えるだけで、直交しているわけではない。光っているという意味ではフォトンは発生しているが、あくまでも宇宙のチリやガスが光を発しているのである。
 「光」は広い意味での全ての波長の電磁波を指す。真空中は波動として伝わるが、何らかの物質と相互作用する時はエネルギーを持った粒子として働く。誤解しがちなところなのだが、光子といっても、まるで電子のような“光のつぶ”の粒子が飛んでいるわけではないのだ。どうもフォトンベルト・ストーリーでは、フォトンを高エネルギーの電磁波と位置づけているようだが、これは逆に危ない。紫外線、X線、ガンマ線などの高エネルギーの光をまともに浴びれば被曝である。DNAも細胞も破壊され、生命の危機となる。

 フォトンベルトは虚構である。かといって確信犯的な情報操作の一貫で出てきたものでもないようだ。この言葉が世に出たのは十数年も前のことだが、オーストラリアのオカルト雑誌に出た、ある大学生が書いたプレアデス星団に関する記事が全く偶然に、あたかも事実のように都市伝説としてその手の読者やニューエイジ層に広まった。それは嘘だった。しかし、嘘から出た真という諺があるように、その続きがあったのだ。
 実は宇宙には、もう一つのフォトンベルトが存在することが分かってきた。質量のないフォトンが構成する高エネルギーの超電磁波帯は存在しないが、質量のある物質がフォトンを発生させる高エネルギー領域が宇宙には存在する。しかもそれはドーナツ状ではなく、いわば編み目状、フィラメント状のプラズマとなって広範囲に宇宙を流れている。いうなればフォトンベルトならぬプラズマベルトが存在する。そしてこれが現在、太陽系の活動を異常せしめている原因らしいのである。
 宇宙空間にはプラズマが流れている。太陽系内はもちろん、その外側にはよりエネルギーの高いプラズマが存在し、かつ巨大なプラズマ・フィラメントが縦横無尽に走っている。
 光を発するものから発しないものまで、宇宙の送電網はあらゆる方向に広がっている。
 実はこれが真のフォトンベルトなのだ。フォトンのベルトは存在しないが、プラズマのベルト、すなわちプラズマフィラメントは存在する。ドーナツ状の構造はないが、縦横に走る編み目のような構造は存在する。太陽系は現在、巨大なプラズマフィラメント―星間雷雲というべきものに遭遇したらしいのだ。


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