日記42

MAUI便り。2007,夏 バナナ腹

今年はバナナの当たり年なのか、バナナを沢山頂くことが多い。それも房で。そして2〜3日もたつと熟れてしまい、虫が、鳥が食べても余ってしまう。無いときは買ってでも毎日食べたい自然の味たっぷりのバナナ。もったいないので冷凍する事にした。冷凍していつかバナナジュースを作ろうと、房に付いたバナナをもいでかごに入れキッチンで皮をむき始めると、いつしか蟻がキッチンの上でうようよしている。庭先につるしてあるバナナの房についていた蟻が、私がもいで籠に入れたときにそのまま一緒にキッチンに持ち込まれてしまったらしい。
蟻は点と線の世界で生きている。空間を飛んで移動することは出来ない生き物なのに、私が部屋に持ち込んだバナナの表面にいたために、突然全く知らない世界に連れ込まれてしまって、混乱しているのがわかった。一匹の蟻がもう一匹の蟻とキッチンの流し台のヘリで出会ってコミュニケーションを取っている。きっとどうすればこの危機的な状況を抜け出せるのか情報交換をしているのだろう。
もし巨大な国に住んでいて、人間が蟻のように小さかったら、大きな巨人が何かを採集するときに私たち人間も小さくてその採集物と一緒にくっ付いてきたら、私はその巨人が心の優しいイノチを大切にする巨人であって欲しいと思う。巨人にとって人間は小さな生き物に過ぎなくて、目にも留まらないような存在だったとしても、もし人間に気が付いたなら、生きている事に敬意を払って自分にとって必要の無い人間の命を救って欲しいと切に思う。そして私は今、アリ達にとって巨人なのだ。
私は蟻が忙しく安全な場所を探そうと右往左往しているところに手を出した。もちろん私の手などに、乗ってくるような蟻はいない。でもまず外に出してあげなければ助かる道はなさそうに思えた私は蟻に話しかけた。
『外に出してあげるから、信頼して、私を信じて?』一匹の蟻がふと人差し指に乗ってきた。私はそのまま忙しく手の上を歩き回る蟻を尻目に網戸を開けて外の土に手をつけると、さすがです。蟻はさっと土に戻った。それから何度となく私は流し台と網戸のあいだを往復した。途中で流し台の奥に入って消えてしまったありもいるけど。自分が認識できた蟻は全て外に出す事が出来た。あとはアリ達のアンテナで自分の場所に戻れる事を祈るだけだ。しかしバナナの皮をむきながら、ちょっと痛んでいたるするとつい口に入れてしまい。結局、今日は何本食べてしまったのだろう。私のおなかは今、すっごいバナナ腹です。


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